「昨年にも増して気を緩めることのできない年になるのではないか」

「昨年にも増して気を緩めることのできない年になるのではないか」

物流関連主要団体・企業の2025年頭所感・あいさつ その1(抜粋)

モーダル総体で「コンビネーションの最適解」追求を

日本物流団体連合会・真貝康一会長(JR貨物会長)

「物流の2024年問題」だけでなく今後の少子高齢化が不可避な日本において、また激甚化する自然災害への対応やカーボンニュートラル実現への対応等、さまざまな課題に直面している中、今後も物流の持続的な成長を実現していくためには、物流構造の抜本的かつ革新的な根幹からの改革が社会から求められており、国や地方自治体、荷主の皆様・一般消費者の皆様等、関係者全てが連携・協力し、モーダル総体での「モーダルコンビネーションの最適解」を追求していかなければなりません。

 
 

物流連としても、人材の確保や効率化を進めるための標準化を推進するほか、物流業界が抱える様々な問題について、荷主・消費者等一般の皆様に知っていただき理解していただく取り組みを、引き続き国と連携して積極的に進めていく所存です。

異端児のような性格・個性で、新たな発想とチャレンジが必要

センコーグループホールディングス・福田泰久社長

これから国内では団塊世代の方々が長生きされ、他のどの国も経験したことのない超高齢化社会が到来します。また、労働力の確保やインバウンドの増加に伴い、外国人の数もさらに増え、文化や風習、さらには国の在り様も変わっていくでしょう。このように大きく環境が変わる中で、当社グループが生き残り成長を続けるためには、従来の考え方の延長線上では不十分で、異端児のような性格・個性で、新たな発想とチャレンジが必要です。

さらに国内のあらゆる業界・業種で人手不足が深刻化する中、当社グループにおいても人材の確保・育成は最優先すべき経営課題です。人材の採用に際しては、単なる補充ではなく、本当にその仕事が必要なのか、他にやり方はないのかなど、仕事の在り方そのものを見直すことが大切です。その上で、必要であれば、業務プロセスの見直しや新しい技術の導入など、知恵を絞りあらゆる施策にチャレンジしてほしいと思います。

少子高齢化が進む国内にあって、今後の成長エンジンは事業の多角化に加え、海外事業にあります。既に当社グループでは物流事業を中心に海外展開を行っていますが、現状に満足することなく、物流以外の各事業の海外展開を強化・加速し、さらなる成長を目指します。十分なマーケティングリサーチのもとで、現地のニーズに応じた多様な商品・サービスを提供することで、海外事業の割合を大きく増やし、真のグローバル企業へ脱皮したいと考えています。

心を研ぎ澄ませてビジネスチャンスをうかがう

日本郵船・曽我貴也社長

 
 

本年2025年は一体どんな年になるのか。世界経済の要であるアメリカの景気はトランプ大統領になっても好調が維持されるというのが大方の見方です。物の流れという点では、輸入関税の引き上げがあってもアメリカの景気が続く限り、その購買量を大きく減らす方向には行かないので、なにがしかの形で輸送需要は維持されるでしょうし、規制緩和政策によって追加的な資源に関わる輸送需要が見込めるものと考えます。また、もしもロシア・ウクライナ問題が和平の方向で収束するとすれば、これを本当に望んでいますが、そのあとに来るウクライナの復興需要はかなり大きなものになるでしょう。こういった需要をしっかりと捉えていくことが、わが社グループにとってのオポチュニティーとなります。ただし、トランプ大統領の移民政策のかじ取り次第では、人口の1%とはいえ300万人もの移民の持つ労働力や購買力がそがれることで景気への悪影響を及ぼしかねないとする見方もあり、今後注意深く見ていく必要があります。

一方、内需の低迷を輸出拡大で補おうとしている中国や、国によって経済力がまだら模様となっているEU(欧州連合)諸国、最近ややスピードが鈍化しているとはいえ中長期目線で大きな成長が見込まれるインドやアフリカなど、それぞれの国や人々が、今そしてこれからどういうValueを求めているのか、心を研ぎ澄ませてビジネスチャンスをうかがい、わが社グループの事業の維持・拡大につなげていきたいと思います。

2025年度は現中計の3年目となります。両利きの経営ということで、中核事業の深化と新規事業の進化を計画通り力強く進めることはもちろんですが、今年特に力を入れていきたいのは支えの経営としているCX/DX(人事・組織の変革/デジタルトランスフォーメーション)です。CXでは世界中の仲間がどうすればもっと生き生きと自律的に働いてもらえるか。東京の言っていることさえやっていればよいという、いわば代理店的な思考から脱却し、それぞれの地域や国が自発的かつ自律的に日本郵船グループの企業価値をアドオンできるような環境や制度を備えていきたい。そのためには日本人が駐在として世界各国に出向くだけではなく、世界の意欲ある希望者が東京で働ける機会を増やしたり、各事業部の現法管理を各地域のマネジメントに権限委譲したりするなど、世界中の仲間がやる気になれる体制作りを深めていきたいと思っています。またCX-NEO(海技者を対象にした社内プロジェクト)で言っているように、海技者の皆さんがどれほど深く企業価値に貢献してくれている存在なのかも世界中の仲間と共有していきたいと思います。

長期ビジョンと中期経営計画の実現に向け、グローバルでさらに成長する1年に

ダイフク・下代博社長

昨年は長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」と2027年までの中期経営計画の初年度でした。既に公表している通り、皆さんの日々の頑張りのおかげで業績は好調に推移しており、良いスタートを切ることができたと思います。改めて感謝を申し上げます。

今年は、長期ビジョンと中期経営計画の実現に向けて、グローバルでさらに成長する1年にしましょう。ご承知の通り、長期ビジョンは、在りたい姿を先に描き、そこから逆算して何をすべきかを考える、バックキャスティングの手法を取り入れています。今までの積み重ねを同じように続けていくだけでは実現できない高い目標を掲げています。日々の業務をきちんとこなしつつも、目先のことだけを考えるのではなく、将来を見据えた取り組みにも力を振り向けてください。

 
 

グローバル企業として成長を続けていく上で、事業運営の効率化などを図るため、日本の事業年度を変更したことにより、今年からは海外現地法人と足並みがそろったスタートとなります。さらに、グループ全体の事業活動に関する業務を執行する責任者としてCOO(最高執行責任者)を設置し、寺井友章代表取締役副社長に担当していただきます。今後、CEO(最高執行責任者)とCOOの2名体制で事業環境の急速な変化に対応していきます。

リスクをチャンスに変えるべく、アンテナを高く掲げよう

近鉄エクスプレス・鳥居伸年社長

本年は昨年にも増して気を緩めることのできない年になるのではないかと感じています。2024年の航空貨物需要は、回復の兆しは窺えたものの、品目によってはコロナ禍における製品在庫が想定以上に積み上がっており、その出荷調整が継続し、活発な荷動きは見られませんでした。一方で、中国発欧米向けのeコマースの勢いは止まらず、日本も含むアジア発欧米向けのスペース不足、運賃の高止まりの状況が一年を通して続いた結果、収支の面では厳しい状況が続きました。

2025年の見通しは、政治的・経済的な制約や中国政府の方針転換等が無い限り、当面はeコマースの旺盛な航空輸送需要は継続し、恒常的にスペース不足、運賃の高止まりが続くことが予想されます。eコマースの台頭により、サプライチェーンは大きく変容しています。季節イベントなどの需給バランスに応じて市場価格が波動をしていたこれまでのマーケットとは異なり、市場価格動向の不確実性がますます高まり、市場競争のさらなる激化により、以前のような水準の利益確保が厳しくなることも想定されますが、これまで通り、まずは、経営計画に沿って、航空、海上の取扱物量を増やし、営業収入・営業利益を伸長させていく方針に何ら変わりはありません。目標達成に向かって、物量・販売の拡大、適正な利益の確保と、適切なコスト管理を着実に実行していただきたいと思います。

昨年11月の米国大統領選挙でトランプ氏が次期大統領に選出されました。上院、下院とも共和党が過半数を獲得し、選挙戦中に掲げた公約を実行に移すことが現実味を帯びてきました。米国の通商・関税政策、外交、金利、移民、気候変動など、さまざまな政策の変換が図られれば、世界経済やサプライチェーン全体に大きな影響を与える可能性があります。

本年は世界中で大きな変化が起こり、我々を取り巻く環境は、益々変化の速度が加速し、時として激変することも予測されます。不測の変化、リスクにも柔軟に対応し、リスクをチャンスに変えるべく、各従業員、各箇所、各法人においてアンテナを高く掲げ、グループ全体で情報を共有し、それぞれの課題に対峙し、そして進化をしていきたいと思います。

(藤原秀行)

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