地方公共団体の職業紹介事業開始、船舶所有者への労働環境改善努力義務も
政府は3月28日の閣議で、深刻な船員不足への対応などを柱とした船員法、船員職業安定法、船舶職員・小型船舶操縦者法の改正案を決定した。
船員の有効求人倍率が4倍を超え、著しい人手不足になっていることなどを考慮。地方公共団体による無料の船員職業紹介事業を始められるようにするほか、船員を募集する事業者らに対し、求人に虚偽の待遇を記載することなどを明確に禁じ、的確な情報表示を確保するよう義務付ける。
加えて、船舶の所有者には、海上で船員の労働環境を改善するための措置を講じるよう努力義務を課し、そのための指針を政府がまとめることも盛り込む。
法改正案は並行して、IMO(国際海事機関)で船員の安全確保のための規制強化を講じる条約改正を採択したことを受け、ある規模以上の漁船に船長や航海士として乗り込む場合、乗船履歴の保有など一定の要件を満たすことを義務化。輸送中のコンテナを海に落とした際、船長が付近を航行する船舶などに通報する制度を設ける。
さらに、現状では船員関係の手続きは船員手帳を所持して窓口で行うことを前提としているが、デジタル化を進め、窓口に出頭するのを不要とする。
政府は法改正により、内航船員への新規就業者数を2023年の761人から30年には900人まで伸ばすことや、漁船の死傷災害発生率を23~27年度の間、毎年度平均6%減らすことを目標に掲げている。
(藤原秀行)