補給パーツは全国で翌日着の即納体制を構築
金融筋の情報によると、建機最大手のコマツがこの1年間で生産・物流の効率化で大きな成果を挙げているもようだ。
基幹製造拠点の小山工場(栃木県小山市)で2017年に導入したスマートラインが奏功し、18年の消費エネルギーや生産リードタイムなどを従来比6~9割削減。機械セクターに詳しい金融関係者は「今期に始動した新中期経営計画に含まれる持続的成長に向けた施策を着実に実施している」とポジティブな見方を示す。
小山工場は油圧機器・エンジンのマザー工場で主要部品の一極生産体制を敷いている。独自開発のIoT(モノのインターネット)「KOM-MICS」を駆使したスマートラインが中型エンジンのシリンダーヘッド加工ラインに導入。1年間の生産データを収集・分析・活用したことが驚異的な効果を発揮したとみられる。
また場内には国内最大の補給パーツ拠点「新関東補給センタ」を併設しており、生産ノウハウを生かして補給パーツのオペレーション効率化も推進中。14年に完成した同施設は延べ床面積2万2000平方メートル、在庫点数は10万点に上る。
同社は建機ユーザーの稼働を止めないことを顧客満足度向上の最重点項目と位置付けており、改善実施項目として
▽需要予測・在庫計画・発注方式のグローバル統一
▽代理店・地域パーツデポ・工場における週次と月次のコミュニケーション
▽サプライチェーンのモニタリング
――を通じてグローバル在庫の最適化に取り組んできた。
その結果、国内については前日午後5時までにオーダーすれば全国各地で翌日着の即納体制を構築。国内外の緊急受注にほぼ100%対応している。ここで得られた倉庫オペレーションのノウハウを世界27カ所の補給拠点にも展開する。
前述の金融関係者は「10万点の在庫を抱えながら施設内は整然としており、作業員数も250人程度とバランスの取れた運営を行っている印象」と評価。その上で「生産・物流の効率化が具体的に進んでいる点を確認できた。物流拠点の整備による顧客のライフサイクルコスト低減は付加価値を当面保持できよう」と分析している。
(鳥羽俊一)