仏オーシャンウィングスCEOが来日会見で性能強調、採用を呼び掛け
風力を活用した船舶の推進補助装置「WAPS」を手掛けるフランスのOcean Wings(オーシャンウィングス)のエマニュエル・スキャリットCEO(最高経営責任者)は4月10日、東京都内で記者会見し、今後の事業展開などについて説明した。
スキャリット氏は、海運業界で脱炭素が強く求められる中、WAPSは燃料消費の抑制で効率的かつ効果的に船舶からの温室効果ガスの排出量を減らせる手段と強調。投資回収期間は今後さらに短くなることが見込まれているなどとアピールし、日本の海運業界関係者にも採用を積極的に検討するよう呼び掛けた。
会見するスキャリットCEO
WAPSで用いる硬翼帆の模型
WAPSはコンテナ船などの甲板に硬翼帆を立て、正面や横からの風を推進力として用いる。
スキャリット氏は、EU(欧州連合)が欧州海域を航行する船舶に対し、今年1月から燃料の環境規制を強化したことなどに触れ、海運領域が脱炭素を図る必要性がさらに高まっていると指摘。環境負荷の低い燃料はまだコストがかさんでいることなどを踏まえ、海運業界として規制に対応する上で「船主が(WAPSを)使うことは財務的に理にかなっており、温室効果ガス排出量を削減できる選択肢だ」との見解を示した。
WAPSに関しては、さまざまな方向からの風のうち85%について、WAPSが性能を発揮できると解説。船員らは基本的なメンテナンスの知識以外、特段追加で研修などを受ける必要がない点をメリットとしてPRした。
さらに、昨年秋に翼帆を4本備えたWAPSを搭載した1万重量トン型貨物船「CANOPEE(カノペ)」を実航海に投入した結果、大西洋を横断する航路で1日当たり燃料消費を25~50%減らせたことに言及。より大きなパナマックスサイズの船舶でも20%程度燃費を改善できると自信を見せた。
他のメーカーも風力を生かした船舶の推進補助装置を手掛けている点について聞かれたのに対し、スキャリット氏は、同社のWAPSは用いている部品数が少ないことや翼が堅牢なこと、価格が突出して高くないことがメリットと解説した。
WAPSの投資回収期間は、製造能力を高めることなどから23年時点の5年から40~44年には1.5年まで短縮していると展望。
トランプ米大統領が関税引き上げに踏み切り、世界の貿易やサプライチェーン運営が打撃を受ける懸念が高まっていることに対しては「政権が替わっても地球温暖化が進行している現状は変わらない。現在竣工した船舶は(世界的に温室効果ガス排出実質ゼロの目標年とされている)2050年にも就航しており、船主の立場からすれば長期的な視点を持つことが求められている。道筋はもう決まっていると思う」と語り、同社のWAPSが持つ社会的意義は変わらないとの見方をにじませた。
(藤原秀行)