日野と三菱ふそうの統合「世界で戦うために規模確保が必要」

日野と三菱ふそうの統合「世界で戦うために規模確保が必要」

4社首脳が会見で強調、両ブランド維持も

トヨタ自動車と傘下の日野自動車、ドイツのダイムラートラックと傘下の三菱ふそうトラック・バスの4社首脳は6月10日、日野と三菱ふそうの経営統合で最終合意に達したのを受け、東京都内で記者会見した。

4社首脳は、新興国メーカーとの競争激化や商用車の脱炭素のニーズ拡大などの課題に対応するためには、日野と三菱ふそうの両社が統合し規模を拡大することが必要との認識を相次ぎ表明。トヨタとダイムラーが今後の商用車に求められるCASE(つながる車、自動運転、カーシェアリング、電動化)技術開発の面で強力に支援していく意向を示した。

 
 

また、統合は対等な立場で実施すると強調。日野と三菱ふそうの両ブランドを維持しながら商用車のラインアップを拡充していきたいとの思いを語った。


会見に臨む4社首脳(オンライン中継画面をキャプチャー)


会見後の撮影に応じる(左から)トヨタ自動車の佐藤恒治社長CEO(最高経営責任者)、日野自動車の小木曽聡社長CEO、三菱ふそうトラック・バスのカール・デッペン社長CEO、ダイムラートラックのカリン・ラドストロムCEO(4社提供)

会見の冒頭、三菱ふそうのカール・デッペン社長CEOは「(統合交渉は)非常に大きな挑戦だったが、ともに前進するための道を見い出すことができた。将来は調達や生産の面での連携も視野に入れている」と説明。

「商用車の業界では規模が重要。だからこそ日本市場でこれほど多くの商用車メーカーが個々に存在し続けることは現実的ではない」と統合の必要性をアピールした。

日野の小木曽聡社長CEOは「商業車の業界を取り巻く環境はカーボンニュートラルや物流の効率化など、さまざまな課題への対応を迫られており、大きな転換点を迎えている。対応していくにはこれまで以上のスピードと柔軟性、そのための投資が必要になる」と分析。

 
 

「4社の協業はまさに千載一遇の機会だと考えている。異なる文化、風土が出会い融合することによるシナジー効果は計り知れない」と統合の効果をアピールした。


会見の冒頭に握手する日野・小木曽氏と三菱ふそう・デッペン氏(オンライン中継画面をキャプチャー)

ダイムラートラックのカリン・ラドストロムCEOは「この業界の歴史的な変革期にトラックメーカーは水素など同時並行的に複数の技術を開発しなければいけない。この作業を経済的に行う方法はただ1つ、規模しかない」と指摘。統合による企業規模拡大が競争力強化に不可欠との見解を示した。

トヨタの佐藤恒治社長CEOは「ダイムラーとトヨタはCASE技術を軸に、統合会社の競争力向上をサポートする」と明言。併せて、「世界で戦うために必要な規模を確保することが、技術開発のスピードアップと生産効率の向上につながる」と統合の狙いを語った。

日野と三菱ふそうの販売会社統合の可能性について問われたのに対し、日野の小木曽社長CEOは「ますますそれぞれのブランドを大切にして、販売会社とともにお客様を大切にしていく姿勢に変わりはないと考えている」と語り、両社のブランドを維持するとともに販売会社もそれぞれ運営していくとの見通しに言及した。

三菱ふそうのデッペン社長CEOも「日野と同じ考え方に立っている。信頼できる(販売店の)ネットワークを構築していて価値を見出している。2つのブランドを尊重することが大事だと思っており、そのまま維持したいと考えている。それぞれのブランドでラインアップとして拡充することは考えなければいけないと思う」と強調した。

 
 

トヨタの佐藤社長CEOは統合に際し、日野がトヨタの子会社から外れることについて「われわれは乗用車メーカーであり、商用の領域を親会社としてリードできるような関係性になかったのは事実だと思う。要素技術でしっかりサポートしていく形でこれからもトヨタは日野に関わる」と展望した。

(藤原秀行)

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