まず物流大手5社参加、ドライバー同乗の「レベル2」実施
自動運転トラックの開発を手掛けるT2は7月1日、自動運転トラックを活用した幹線輸送の商用運行を国内で初めて、同日から関東~関西間の高速道路一部区間で実施すると発表した。
当初は佐川急便、西濃運輸、日本郵便、福山通運、三井倉庫ロジスティクスの5社が参加。実際の運行はT2が担い、5社から輸送の業務を受託する。投入する自動運転トラックは5台でスタートし、トラックドライバーが同乗して有事の際はすぐに運転を代わる「レベル2」の自動運転で実施する。
T2は輸送実績を着実に重ね、自動運転トラックの台数も増やし、2027年10月をめどにドライバーが同乗しない「レベル4」(特定の条件下での完全自動運転)の幹線輸送を実現したい考え。
東京都内で同日、記者会見したT2の國年賢事業開発本部長は「通常の運送会社と比べても遜色のない自立・成熟した体制を構築していく。27年の無人化までは自動運転トラックの台数を少しずつ増やしたい」と強調。今後は中四国や九州まで自動運転ルートを伸ばしていくことに意欲を見せた。
自動運転トラックの実用化には巨額の投資が必要だが、國年氏によれば、ドライバーが乗らない「レベル4」を実現し、トラックを300台規模まで増やせれば黒字化が可能と見込んでいるという。
同席した西濃運輸の渡辺俊幸運行部運行課参事は「(自動運転の走行距離が)600kmであっても差し障りはないと考えている。自動運転の幹線輸送は物流業界の武器になるのではないか」と期待を示した。
会見する西濃・渡辺氏(左)とT2・國年氏
撮影に応じる両氏
T2の自動運転トラック(今年2月撮影)
5社の走行ルート
佐川急便:東名高速道路・綾瀬スマートIC ~ 京滋バイパス・巨椋IC
西濃運輸:東名高速道路・厚木IC ~ 京滋バイパス・久御山JCT
日本郵便:東名高速道路・厚木IC ~ 京滋バイパス・久御山JCT
福山通運:東名高速道路・綾瀬スマートIC ~ 名神高速道路・豊中IC
三井倉庫ロジスティクス:東名高速道路・綾瀬スマートIC ~ 名神高速道路・吹田IC
T2はこれまで、今回参加の5社などと自動運転の実証実験を重ねてきた。今年6月には神奈川~神戸間の高速道路約500kmを自動運転トラックで走破するのに成功するなど、着実に実績を上げてきた。当初参加している5社はT2の自動運転トラックが各社の通常運行と同じレベルの輸送品質や安全性を担保できると確認したため、T2のサービス利用に踏み切った。
T2によれば、当初参加の5社以外に、現在20を超える企業が自動運転トラックの幹線輸送利用を希望しており、現在協議を進めている。T2は順次、商用運行の規模を拡大させていくことを目指す。
レベル2走行の際はドライバーが同乗しているため、一般的な長距離運行と同様、4時間走行するごとに30分休憩するなど、法規に沿って実施する。商用運行に切り替えることで、運行頻度をこれまでの週1回から週5回程度まで高めるなど、より継続的かつ安定的な輸送を図る。
(藤原秀行)