小売業者に「希望小売」順守を要請、出荷停止示唆も
公正取引委員会は8月6日、住友ゴム工業子会社でタイヤ販売大手のダンロップタイヤが小売業者に対し、希望小売価格で販売するよう要請していたことが、販売価格の不当な拘束を禁じる独占禁止法に違反した疑いがあるとみて調査した結果、行政処分の「確約手続き」に基づき、同社が自主的に提出した改善計画を認定したと発表した。
確約手続きは、独禁法違反の疑いがある企業が自主的に改善計画を提出し、実効性があると公取委が認定すれば排除措置命令や課徴金納付命令を免除する制度。公取委はダンロップの改善計画認定により、独禁法違反の認定は見送った。
確約手続きの対象となったのは、住友ゴム工業が製造、ダンロップが販売している全天候型タイヤ「SYNCHRO WEATHER」(シンクロウェザー)。2024年10月に発売し、CMに米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手を起用するなど大規模な宣伝活動を行い、消費者の関心を集めている。
公取委によれば、ダンロップは2024年10月ごろから今年4月ごろの間、量販店などに希望小売価格でシンクロウェザーを販売するよう求めるとともに、希望小売価格より安く販売している業者には取りやめるよう要請。ポイント付与による実質的な値引きをしたり、値下げが行われやすいECサイトに出品したりすることも行わないよう求めていた。
要請に従わない小売業者には、ダンロップがシンクロウェザーの出荷停止を示唆したケースもあったもようだ。
ダンロップは今年7月、公取委の指摘を受け、小売業者に対し、希望小売価格はあくまで参考価格で、小売業者を拘束するものではないことを通知する文書を送った。
ダンロップが提出した改善計画は、行動指針の作成や定期的な研修・監査、代表取締役による社内向けメッセージの発信などを打ち出しており、第三者が5年間、こうした措置を順守しているかどうかを監視することも表明している。
ダンロップは同日、「お客様やお取引先をはじめ関係者の皆様に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。認定を受けた確約計画を確実に実行するとともに、独占禁止法をはじめとする法令遵守の徹底を一層強化してまいります」と謝罪するコメントを発表した。
(藤原秀行)