量子コンピューター活用しロボットの高精度な姿勢制御手法を開発 

量子コンピューター活用しロボットの高精度な姿勢制御手法を開発 

芝浦工大・早大・富士通、最適な間接角度を瞬時に計算

芝浦工業大学システム理工学部の大谷 拓也准教授(人間ロボットシステム研究室)、早稲田大学理工学術院の高西 淳夫教授と富士通の3者は8月25日、量子コンピューターを活用してロボットの姿勢を効率的に制御する新手法を開発したと発表した。

具体的には、複数の関節を持つロボットの「逆運動学計算」(目標位置に到達するための関節角度の計算)を、量子技術を活用して効率的かつ高精度に解くことに成功したという。



理化学研究所と富士通が共同開発した64量子ビットの実機検証で、その有効性を確認できた。

ロボットの各部(リンク)の向きや位置を量子ビットで表現し、親関節の動きが子関節に影響する構造を「量子もつれ」(2つ以上の量子が遠く離れていても、一方の状態を観測すると、もう一方の状態も瞬時に決まる現象)で再現し、従来の古典的手法と比べて必要な計算回数を大幅に削減できた。

3者は量子コンピューターの実用化が進めば、リアルタイム制御や複雑な動作が求められる次世代ロボット開発への貢献が期待できるとみている。


(3者提供)

複数の関節を持つロボットは関節の組み合わせパターンが膨大となり、目標位置との誤差を最小化するために反復計算が必要になるため、計算負荷が高くなり、人体の関節数と同じ17個の関節を有する全身多関節のモデルの場合は、解空間が膨大なため解けず、近似した7個の関節で運動計算を行うのが一般的だったが、動きの滑らかさに限界を抱えていた。

3者はこうした課題に対して、量子コンピューターの特性を活かし、効率的に姿勢を制御できる手法の開発にこぎ着けた。



さらに、量子もつれを導入することで、親関節の動きが子関節に自然に影響を与える構造を量子回路上で再現。富士通の量子シミュレーターを用いた検証では、従来手法と比較して、少ない計算回数でも最大43%の誤差低減を達成した。

また、64量子ビットの実機を用いた実験でも、量子もつれ導入による効果を確認済み。ロボットなどの17個の関節を持つ全身多関節モデルの運動計算を、30分程度で実行できるという試算結果も得たという。

この手法は、少数の量子ビットで多関節ロボットの姿勢を表現できるため、現在の開発段階の量子コンピューター(NISQ)環境でも実装可能と指摘。将来は人間型のヒューマノイドロボットや多関節マニピュレータのリアルタイム制御、障害物回避、エネルギー最適化などへの応用が期待できると想定している。

(藤原秀行)

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