「環境変化続く中で必要とされる存在になり得るのかが課題」ヤマトHD新社長会見詳報(後編)

「環境変化続く中で必要とされる存在になり得るのかが課題」ヤマトHD新社長会見詳報(後編)

運輸・阿波社長とも連携

ヤマトホールディングス(HD)の長尾裕社長と、同社の次期社長に決まったヤマト運輸の櫻井敏之常務執行役員は1月22日、東京都内で記者会見し、開始から50周年を迎えた宅急便などの事業基盤を強化していくことに強い決意を示した。会見内容の詳細を前後編に分けて紹介する。

「M&Aは積極的に進めたい」

――指名報酬委員会を経て社長人事を決めたとの説明があった。外部人材を登用しているが、これまで外部から人材を積極的に招聘してきた印象だ。今回、プロパーをトップに据えることにはどんな思いがあるのか。
長尾氏
やはり、当社グループの中核になる事業会社のヤマト運輸、ここでは現業部門が、櫻井さんからも何度か言及あったが、さまざまな現場を持っている。その現場で働く社員の皆さんに対して、どう響く経営であったかということを考えていくと、当然ながら当社のプロパーの社員だけでは足りない知見だったり、さまざまなものがまだまだ足りていない部分があるが、ここ数年、一生懸命外部からそういうタレントを招聘しながら、足りないところを埋めながら、中で知識をどう広げていくかという部分に取り組んできた。そういった意味では、やはり、指名報酬委員会としても、この企業グループを率いていくための素養で何が必要か、ということをさまざま検討した中で、候補の中では結果的にプロパーである櫻井さんがふさわしいということを最終的に判断した。今期待しているし、櫻井さんならしっかりとそこの舵取り、経営ができるという判断をしている。



――50年経過した宅急便の評価を聞きたい。理想としてきたところに達した点、課題となっている点はあるか。M&Aについてどう考えるか。
長尾氏
まさにちょうど宅急便50年ということで、当社グループは大和運輸として創業して、宅急便が始まるまでは関東ネットワークの会社だったが、宅急便サービスを始めてから日本全国にネットワークを張りめぐらせてきた。まさに会社が大きく変わってきた50年だったなと思っている。そういう意味でやはり世の中は当初と比べても変化しているし、私が入社した時代、ちょうと宅急便が始まって12年くらいの段階で入社したが、そのころと比べてもやはり社会構造が大きく変化しているし、われわれが運ばせていただいている荷物の中身も相当変化している。ただその中で、やはりわれわれとして、社訓にあるような、常に社内でよくお話するが、1つは『ヤマトは我なり』という言葉もあるが、他に『思想を堅実に礼節を重んずべし』という言葉がある。私はやはりヤマトマンとして、当社グループ社員が堅実な思想を持ちながら、どう礼節を重んじた人間関係を作っていけるかということは、すごく大事なお話だと思っている。

昨年も日経さんのブランド調査でも宅急便のヤマトは1位に3年連続で選んでいただいたのは、第一線の社員の小さな努力を積み重ねていることが認められたのは非常にうれしく思うし、ただまだまだこれから大きく環境は変化していくと思うので、その中でも必要とされる存在になり得るのかということはあらためて、櫻井新社長を中心に向き合っていかないといけない課題だろうと認識している。

櫻井氏
当然ヤマトグループとして、これから持続的な企業成長、企業価値の向上を遂げていくためには、必要な機能やシナジーを得られるような相手は積極的に私たちもリサーチしながら、M&Aは進めてまいりたい。

――グローバル事業などに経営資源をシフトするとの話があった。若いころの海外経験とグローバル事業のかじ取りをどう考えているか。
櫻井氏
私は実は、98年新卒で入社し、最初の配属が海運の現場。そこで通関とか、お客様とのやとり、最後は国際物流の営業担当を3年間、現場で行った。海外駐在で15年ほど前、シンガポール国内の宅急便事業を展開していたので、そこの営業責任者として2年ほど駐在していた。そういった経験の中から、当然、海外で事業を展開していく上では、やはりその国の風土や企業文化などいろいろなものを学びながら、相手の国に合った形でのビジネスを展開しないといけないとうまくいかないと肌身で感じているので、ヤマトグループのプロパーだけだとそういったメンバーがなかなかいないというのも実情。そういった所に関しては、中核となるような人材の採用を積極的に行いながら、注力していきたいと考えている。

「私の代でやったことを遠慮せずに否定してほしい」

――2024年問題。1年間担当した宅急便事業の課題は?
長尾氏
2024年問題は、当社は主体としているのがラストマイルなので、その弊社の社員の働き方については2024年問題を迎える相当前の段階に、問題がいろいろと表面化したりして取り組みを行っていた。ただ、やはりラストマイルに至る前のプロセスは、当然幹線輸送はしなければいけないし、当社のラストマイル拠点への納品や、集荷において全国の協力会社の皆様の輸送力をどう確保していくかが大きな課題。ここについては、さまざまな取り組みを協力会社の皆様と継続しているので、今のところ輸送力確保はできてはいるが、いかんせん、大型のライセンスを持っているドライバーさんの高齢化はまだ抜本的な解決は何もできていないという認識を持っている。よって、さまざまな選択肢や取り組みの仕方はあろうと思うが、まだこれからも継続的に手を打って行かないといけない問題だとの認識を現段階では持っている。

櫻井氏
冒頭申し上げたように、長尾さんをはじめとする経営チームで進めてきた構造改革の中には、ラストマイルの領域は比較的DXの推進、DX化とか、いわゆる配送オペレーションについての効率化が図れて、ここはある程度効果は見えてきているところだ。一方で、営業については本来、SDだから営業も行うわけだが、コロナ以降に入ってきた若い方はその経験がまだまだ浅いというところで、この1年は一生懸命、商品の売り方などをレクチャーした。1月20日に宅急便50年を迎えるに当たり、SDさんが自分たちの業務のアイデンティティーをもう一度見つめ直して、この1年をかけていろんなキャンペーンを進めていきたいと思っているので、自分たちの仕事、誇り、プライドを取り戻しながら、若い方にも伝えながら、しっかり現場力を向上させていきたい。



――櫻井氏と阿波氏でよいタッグ組めると話していたが、どういう点を期待するか。
長尾氏
ヤマトの阿波さんも、櫻井さんも、両者に共通しているのは、もちろんリーダーシップはしっかり有している、それよりも非常に誠実な人柄だということ。そして、私と違って人の話をちゃんと聞くということ(笑)。そういうところが両者とも非常にいいところかなと思っているので、そういう意味で、この1年を見ていても、非常に両者がコミュニケーションをしっかり取りながら、経営を進めているという光景は非常に頼もしく思っている。そういう部分を両者間だけの関係ではなくて、これから選任が進んでいくであろう新しい経営陣の中でも、チームワークとして広げていっていただきたいということを期待している。

櫻井氏
この1年、阿波さんと仕事をしてきた。両者の経歴で言うと、阿波さんはより宅急便の現場の経験が長く、サービスの知見は私よりも経験をお持ちだ。私はより幅広いロジスティクス、コントラクトロジもそうだし、グローバルも含めて、これから注力しないといけない領域については経験があるということ。こういったコミュニケーションをうまくとりながら、ばらばらにやるのではなく、冒頭申し上げたように、宅急便はお客様の基盤を活用しながら、成長領域にも注力する、こういった形でかなりコミュニケーションを取りながら進めていけるんじゃないかと考えている。

――グローバル戦略で一番有望な市場はどこと考えているか。日本の労働人口減少の中で外国人労働者をどう活用するのか。
櫻井氏
1つの例として、先日リリースしたが、インドにグループ最大規模の拠点を構えている。スズキさんの仕事をかなりインドで行っているが、それに限らずお客様、国自体がかなり大きな成長を遂げているので、1つの例としては有望ではないかと考えている。それ以外にもポテンシャルのあるエリアはあるので、そこは随時お披露目できればなと考えている。

外国人労働者は、当然これから日本人の人口が減少していく中で言うと、外国人の方の活用は避けて通れないと思っている。ただ、どのポジションでどういった形で活用していくのかというのは、かなり社内で議論を重ねながら進めてまいりたい。

――新社長に臨むことと、アドバイスがあればお聞きしたい。新社長から18万人グループ従業員にメッセージがあればお聞きしたい。
長尾氏
櫻井さんには、私の代でいろいろやったことを遠慮なく否定していただいて、というふうに思っている。それができる人でないと次の社長ができないなと思っていたので、そこはおもんぱからずしっかりやるべきことをやっていただきたい。

櫻井氏
まだこれからになるが、今思いつくことで言うと、先ほど仕事のプライドや誇りという話をしたが、うちの会社のすごくいいところ、私がずっといいなと思っているところは、ヤマトの社員は自分たちの会社、自分たちの事業が大好きであるということ。なので、もっともっと自分たちの会社、自分たちの事業を好きになろうよということを、メッセージとしてはまず最初に伝えたいと思っている。



――社長としてやり残したことはあるか。
長尾氏
いっぱいあり過ぎて、非常にお答えするのが難しい。私がやり残したことが櫻井さんにやってくれというよりも、やるべきことをぜひ櫻井さんには実行、完徹してほしいという期待を持っている。

(了)

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