日本法人・佐藤社長単独インタビュー(前編)
中国の新興ロボットメーカー、Geek+(ギークプラス)日本法人の佐藤智裕社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。
佐藤社長は中核商品のAI(人工知能)を活用した自動搬送ロボット「EVE」に関し、日本でも販売実績が受注分を含めて約1000台に上ると強調。「特定の業種にとどまらず、通販や3PL、アパレル、医薬品、工業用品など多岐にわたる分野の方々に導入いただいているのが特徴」と語り、コストパフォーマンスと技術力の高さが支持されていることに自信をのぞかせた。
今後の展開として、新たに無人の自動フォークリフトや、コンテナに収めた商品を自動的に入出荷するロボットシャトルシステムを日本市場に投入する準備を進めていると説明。商品のラインアップの厚みを増すことで、さまざまな業種向けに物流業務効率化・省力化のソリューションを強化していく考えを明らかにした。インタビューの内容を2回に分けて詳報する。
インタビューに応じる佐藤社長(写真はいずれもクリックで拡大)
グローバルで7000台の実績
―まず事業の概要を教えてください。
「ギークプラスは2015年に中国・北京で創業しました。物流施設向けのロボット開発・販売を手掛け、17年には中国市場でシェアナンバーワンとなりました。そのタイミングで海外展開にも本格的に乗り出し、中国以外では初めて日本に同年8月、法人を設立して日本市場に進出してからちょうど2年となります」
「主力の自動搬送ロボット『EVE』はグローバルで受注段階のものを含めて7000台の販売実績があります。稼働している倉庫エリアの総面積は40万平方メートルを超えました。われわれが扱うロボットは特定の業種にとどまらず、通販や3PL、アパレル、医薬品、工業用品など多岐にわたる分野の方々に導入いただいているのが特徴です」
―日本事業の現状はいかがですか。
「今日本で扱っているのは、ピッキングシステムとムービングシステムの2種類です。前者はロボットが在庫を収めた棚の下に入り込んで持ち上げ、ピッキング担当スタッフの元まで運んでくれます。後者はA地点からB地点までロボットがパレットやオリコンなどを乗せて商品を運搬します。いずれもお客さまのニーズに性能が合致した『EVE』の各機種を利用してサービスを提供しています。『EVE』に関しては、日本でも受注を含めると1000台程度の販売実績を積み重ねています」
―ロボットは初期負担が大きい半面、業務効率化の具体的な成果に関するデータがまだ多くないことなどから、荷主企業や物流事業者の間でも導入を躊躇する動きがいまだにあります。そうした中で御社が日本法人設立から2年でそこまでの実績を上げられたのはなぜでしょうか。
「1つにはROI(投下資本利益率、費用対効果)が非常に優れていることが挙げられます。製造業の工場や宅配便のセンターは機械化に積極的な一方で、今でもそれほど機械化が進んでいないのがいわゆる3PLの分野だと思います。在庫や出荷の量がどの程度見込まれるかは物流業務の受託先の荷主企業しか分からず、荷主の状況次第で荷物の状況も大きく変わるため、現場の労働力は業務量に応じてフレキシブルに対応できる労働集約的なやり方が3PL事業者にとっても都合が良かった。しかし、当然ながらこの手法は人が集まらないと厳しいですし、人を増やせば採用や管理などの間接的コストも増えます」
「そんな中で自動倉庫のような機械設備に投資する動きが出てきますが、3PL事業者の方々にとっては巨額の投資をするのは非常に怖い。ロボットなどの価格が高いので5~10年かけて償却することを強いられる中で、特定の顧客のためにそれだけの規模の投資ができるかといえば、投資額に見合うだけの長期委託契約を結んでもらえればいいのですが、なかなか難しいのが実情です」
「物流拠点に関しても、かつてのような自前で倉庫を建設して構える形だけでなく、デベロッパーから先進的な物流施設を賃借することが一般的になってきた今、庫内に“根を張る”ような形での設備投資は厳しくなってきました」
ギークプラスの中核製品「EVE」。棚を持ち上げてピッキング担当スタッフの元まで運ぶ(千葉県印西市の「プロロジスパーク千葉ニュータウン」)
投資回収2~3年で可能に
「そうした状況を踏まえ、当社の『EVA』は投資回収の期間を2~3年程度とすることを念頭に置き、価格を安くすることに努めてきました。一例を挙げると、ある案件ではもともと20人で作業をしていたのが当社のEVE導入後は4人になっています。人件費で見れば年間5000万円以上の削減効果があり、2年8カ月程度でロボット導入に投じた費用を回収できる計算です」
「ロボットであれば、在庫や出荷量が増えれば後から台数を増やすことが可能です。また、従来は庫内で荷主Aの商品はこのロケーション、荷主Bはこっちのロケーションというふうに分けて保管していましたが、ロボットが棚を自ら庫内スタッフの元まで持ってきてくれるようになれば、棚に入っている商品をすぐに認識できるよう見やすくしておけば、荷主Aと荷主Bの商品を混在して納めておいても円滑にピッキングできます。在庫量や波動が異なる荷主の商品を一緒に扱うことで庫内の作業量を平準化し、ロボットをより少ない台数に抑えることにもつながります」
―ロボットは当然ながら価格に加えて性能も重視されます。その点では御社のロボットはいかがでしょうか。
「技術力の高さもわれわれのロボットの特徴だといえます。例えば、当社のロボットは走行していても左右にぶれず、まっすぐ進みますので通路を狭くしてフロアに配置する棚の数を増やすことができます。安全の面でも、日本独自の取り組みとしてEVEのプログラムを庫内の火災報知器と連動させており、火災報知器が作動した場合はEVEをすぐに停止させられます。そのため、防火区画をまたいで設置することが可能です」
「他にも、センサーなどを組み合わせて走行中のEVEが人間や障害物を感知するとすぐにストップする衝突防止機能を備えています。旧来のAGV(無人搬送機)では障害物を察知していったんストップすると、再び稼働させるにはシステムの再起動が必要でしたが、EVEは1台が停止しても他のEVEは働き続けますし、障害物がなくなったことを確認できればすぐ元通りに動きます。こうした点も物流業務を止めないという意味で非常に重要です」
―今後取り扱う機器のラインアップは増やしていきますか。
「具体的な時期はまだ調整中のために申し上げられないのですが、ロボットに加えて、既に中国で扱っている無人の自動フォークリフトを日本でも発売する方向で準備を進めています。また、米国ではEVEなどを活用し、自動で入出庫を行うロボットシャトルシステムを展開し始めました。こういうものも日本で順次販売していくことを準備しています」
「われわれは単にロボットを販売しているのではなく、お客さまの物流改善を実現するソリューションを提案するに当たってロボットを使っているとの位置付けです。そのため、ソリューションを拡充していく上で必要な製品は今後も増やしていこうと考えています」
ロボットシャトルシステム「C200」を紹介する動画
(藤原秀行)