日本は物流施設が貢献し14位に上昇
米不動産サービス大手ジョーンズ ラング ラサール(JLL)とラサール インベストメント マネジメントは7月25日、世界の主要国・地域で商業用不動産市場がどの程度情報開示に積極的で投資判断しやすいかを比較した「2018年版グローバル不動産透明度調査」の結果を発表した。
日本は調査対象となった世界100カ国・地域の中で14位に入り、前回の16年調査時から5つ順位を上げた。建築物からのCO2排出抑制など環境負荷軽減を図る「サステナビリティー」の面で評価が高かったことが主因。
同時に、より透明度を高めるため、内訳が不透明と指摘されている共益費といった旧来の慣習見直し、取引の効率を改善する先進技術「不動産テック」の活用などを進めるよう提言した。
両社は調査結果に関し、日本で先進的な物流施設が内外の投資家から関心を集めているのに伴い、取引や施設の機能などに関する情報開示が引き続き進められた点も順位アップに貢献したとの見方を示した。
一方、主要50都市別では東京が26位、大阪が30位にとどまり、欧米の主要都市に引き離されている実態が目立った。
調査は各市場の不動産取引や物件、上場企業の財務などに関する情報開示の度合い、法規制の現状といった186の要素を6項目に分けて独自に分析、数値化している。1999年の開始以降、2年ごとに内容を更新しており、第10版となる今年は新たに「サステナビリティー」の項目を追加した。
1位の英国、2位のオーストラリアは前回と変わらず、3位の米国は前回から1つ順位を上げた。アジア太平洋地域ではシンガポールが12位、香港も13位となり、それぞれ日本を上回った。
今回の調査では85%の市場で透明度が向上したが、両社は「投資家などから期待されている水準には届いていない」と解説。継続的に情報開始促進や市場の規律向上に努めるよう呼び掛けた。
日本は「サステナビリティー」が3位、不動産価格の推移などの情報提供に関する「パフォーマンス測定」が5位と上位に付けた。半面、「上場法人のガバナンス」は31位、入札プロセスや物件売却時の情報開示などの「取引プロセス」は35位、不動産セクター別の基礎的な情報提供に関わる「市場ファンダメンタルズ」は36位にとどまった。
物流施設が最も躍進したセクター
東京都内で記者会見したJLLグローバルリサーチのジェレミー・ケリー・ディレクターは「市場の透明度と直接不動産投資の規模にはかなり強い相関関係がある。グローバル規模での都市間の成長競争においても重要な要素となっている」と指摘。日本でも物流施設などの市場透明度向上につながる施策が継続・拡大されることに強い期待感を示した。
アジアパシフィックリサーチのロディー・アラン・ディレクターは、アジア太平洋地域が全エリアの中で一番透明度が向上していると説明。「国境を越えた不動産投資を考える上で透明度の重要度が一層高まっている」と述べ、海外からのインバウンド投資を呼び込むにはオフィスビルや商業施設といったセクターごとに取引情報の積極的開示を推進するとともに、ITの導入拡大なども図る必要性があるとの見解を示した。
JLL日本法人の赤城威志リサーチ部長は「ここ数年で物流施設は一番躍進したセクター。透明度に限らず不動産マーケットに与えた好影響は非常に大きい」と意義を強調した。
大東雄人リサーチ事業部ディレクターは、物流施設の市場に関する基礎的情報が上場リートの増加もあってより充実していることが、16年調査時に続いて日本の透明度上昇に寄与していると説明した。
(藤原秀行)
キャプション=透明度調査結果を説明するジェレミー氏