バスと“貨客混載”、全戸宅配ボックス付きマンション
三菱地所が物流業界の抱える課題をにらんだ新たな取り組みを相次ぎ打ち出している。
全国農業協同組合中央会(全中)や農林中央金庫などと協力し、高速バスを利用した農産物の配送を開始。さらに宅配ボックスが全戸に付いたマンションを初めて開発した。トラックドライバー不足や宅配便再配達の解決に向け、参考になりそうだ。
8月2日、高速バスのトランクスペースに農産物を積み込み、地方から東京・丸の内のオフィス街へ運ぶ“貨客混載”をスタートした。
当初は東北と関東のバス事業者5社が参加。スイカやメロン、アスパラガス、とうもろこし、枝豆などを丸の内周辺の飲食店や企業の社員食堂に納め、料理に使ってもらうほか、販売もする。
トラックドライバー不足が深刻化する中、輸送手段を確保することで希少な野菜なども安定的に供給可能にし、地方活性化を図りたい考え。バス事業者にとっても車両の有効活用が期待できるのがメリットだ。三菱地所などは他のバス事業者にも参加を呼び掛けている。
一方、同社子会社で住宅分譲を手掛ける三菱地所レジデンス(東京)は8月7日、各住戸の玄関前に宅配ボックスを備えたマンション「ザ・パークハウス文京千石一丁目」(東京、総戸数53)のモデルルームを報道関係者に公開した。提携する大手宅配3社の配達スタッフは専用ICカードを使ってマンションに入り、ボックスに荷物を収めるため、配達の効率改善が見込まれる。
エントランスに宅配ロッカーを配置しているマンションが増えているが、全戸の玄関先に取り付けるのは初の試みという。ボックスは横約50センチメートル、奥行き約60センチメートル、高さ約150センチメートルと大型で、ゴルフバッグといった場所を取る荷物も収納できるのが特徴。同社は「再配達件数の削減と居住者の利便性向上が同時に実現する」と強調している。
(藤原秀行)
高速バスで届けられた野菜