【独自取材】米ラサールの投資・リサーチ責任者ゴードン氏、先進的物流施設を推奨

【独自取材】米ラサールの投資・リサーチ責任者ゴードン氏、先進的物流施設を推奨

景気減速でも引き続き需要見込めると予測

 米不動産投資顧問大手ラサール インベストメント マネージメント(LIM)でグローバルの投資戦略・リサーチ責任者を務めているジャック・ゴードン氏はこのほど、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。同氏は先進的な物流施設に関し、日本などグローバルで今後も物流サービス高度化に向けたニーズが見込まれており、従来と同じく投資を推奨できるアセットとの認識を示した。

 LIMの日本法人、ラサール不動産投資顧問が2月20日に東京都内で開いたリポート「グローバル不動産投資戦略2019」の記者説明会終了後、ロジビズ・オンラインに語った。


ゴードン氏(2018年撮影)

 LIMはリポートの中で、投資市場の先行きについて、米中両国の経済摩擦などを踏まえ「遅くとも2021年までには多くの不動産市場で(好調だった)サイクルの反転が起こる」と予測。19~21年の投資戦略として「ゴルディロックス(適温)経済と低金利環境が継続するという楽観的な見方が実現しなかった場合も考慮に入れる必要がある」と慎重な見方を示した。

 ゴードン氏は「ゴルディロックス経済が続く可能性は、米中の貿易戦争の影響で50%くらいまで下がっているのではないか」と語り、世界的な景気減速に留意する必要性を指摘した。その上で「今後トランプ米大統領が再選を目指す中で中国と協調していくのかそうではないのか。シンプルだがその点で先行きが決まってくるのではないか」との認識を示した。

 同時に、「eコマースの成長などに伴い、特に米国を中心に物流が進化していくにつれ、より当日配送へのニーズが拡大していくだろう。国際物流ではなく、まさに地域の物流なので逆にマクロ経済の動向で先進的物流施設の需要が大きく動くことはそれほどないのではないか」と予想。景気減速があったとしても先進的物流施設の需要は引き続き見込めるとの考えをにじませた。

 日本に関しては「米中の貿易戦争が先行きの不透明感の発端となっているが、日本はそこまで中国にタカ派ではないとの印象だ。貿易関係は強くなっているし、訪日観光客が増えるなど人的交流も一定程度ある。日中関係は(米中関係よりも)比較的安定しているので、物流も大丈夫とみている」と説明した。


ラサール不動産投資顧問が川崎市で三菱地所、NIPPOと共同開発している「ロジポート川崎ベイ」の完成イメージ(3社提供)。19年に工事完了の見込み

「LTE」は今後も投資で重視すべきポイント

 LIMが投資対象選別の際に重視すべきポイントとして掲げている
▽都市部への流入などの「人口動態」(Demographics)
▽eコマースの市場拡大やシェアリングエコノミー普及などの「技術革新」(Technology)
▽再開発などの「都市化」(Urbanisation)
――の3要素「DTU+E」については「不動産全体に当てはまる要素であり、今後も留意していくべきだ」との見解を維持。物流施設も該当するアセットと解説した。

 ラサール不動産投資顧問が近く日本で立ち上げる新たな不動産投資ファンドに対しては、リターンが大きいと見込まれる半面、リスクも高くなる「オポチュニスティック投資」よりも、安定的にインカムゲイン(資産の継続保有で得られる家賃収入や分配金など)を生み出せる物件を対象とする「コア投資」がメーンになるとあらためて強調。先進的な物流施設もその一翼を担うとの見方を明かした。

(藤原秀行)

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