大規模マルチ型物流施設の空室率、首都圏は第4四半期に初の2%割れか

大規模マルチ型物流施設の空室率、首都圏は第4四半期に初の2%割れか

7~9月は2・4%で過去最低更新・CBRE市場調査リポート(前編)

シービーアールイー(CBRE)は10月31日、全国の賃貸物流施設市場の動向に関するリポートを公表した。このうち首都圏は前編、近畿圏と中部圏は後編でそれぞれ概要をお伝えする。

2019年第3四半期(7~9月)の大規模なマルチテナント型物流施設の平均空室率は首都圏が2・4%で、前期(4~6月)から0・3ポイント低下した。同社が調査を始めた04年第1四半期以降で過去最低水準を更新した。

CBREは19年の第4四半期に関し、旺盛な需要を踏まえ、初めて2%を下回る可能性があるとみているほか、20年についても3%前後の低水準で推移すると予想している。

第3四半期の新規供給は20万6000坪、新規需要は21万1000坪でいずれも四半期ベースの過去最高を記録。新規供給された9棟のうち4棟で100%契約を獲得して完成した。既存物件も堅調だった。

CBREは「eコマース企業の大型契約が引き続き需要をけん引しているほか、物流会社の積極的な拡張姿勢も目立つ。在庫量が増えて既存拠点のスペースが既に埋まっているため、さらなる顧客獲得のためには追加の床が必要といった声が、物流会社から多く聞かれた」と指摘。

坪当たりの実質賃料(共益費含む)は4230円で、前期から0・7%アップした。

第4四半期に完成予定の7棟は既に8割近くの面積でテナントが内定しているもようという。


首都圏の需給バランス推移(CBRE資料より引用)※クリックで拡大

圏央道は5年半ぶり低水準、「需給の緩みはいったん解消」

主要4エリアの動向は以下の通り。

【東京ベイエリア】
空室率は前期と同じく0・0%。20年第2四半期に完成予定の開発プロジェクトでも多くの引き合いがあり「ニーズの行き場がない閉塞感が出ている」(CBRE)という。実質賃料は0・9%上昇し7080円。築年数10年以上の物件でもアップしているという。

【外環道エリア】
期中に完成した2棟の一部で空きスペースが残ったため、空室率は1・7%で、0・0%だった前期から上昇した。ただ、「依然このエリアの空室は限られる。今後竣工予定の物件でもテナント内定が相次いでいることから需給が緩む兆しは見られない」(CBRE)という。実質賃料は0・6%上昇し4890円だった。

【国道16号エリア】
空室率は0・8ポイント上がって3・0%だった。期中に5棟(10万6000坪)の新規供給があり、2棟は満床だった半面、2棟は空室が大きく残るなど、引き合いの度合いに差が生じた。賃料もエリア内で上下幅が開いており、千葉県湾岸部で上昇傾向が強く、神奈川県内陸部も上昇基調にあるという。実質賃料は全体で0・7%アップし4160円。

【圏央道エリア】
今期完成の2棟は残った空きスペースがわずかで、前期までに完成した物件も空室が大きく解消されたことから、全体で8万1000坪の新規需要を吸収し、空室率は前期の7・2%から2・5%まで大きく下がった。14年第1四半期の1・7%以来、5年半ぶりの低水準で、CBREは「需給の緩みはいったん解消された」とみている。実質賃料は1・2%上昇の3360円。

関連記事:大規模マルチ型物流施設の空室率、近畿圏の7~9月は3年ぶり6%割り込む 今後さらに低下も・CBRE市場調査リポート(後編)

(藤原秀行)

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