ドキュメント・乾汽船株主総会 質疑は完全に平行線、意見対立の収束見えず

ドキュメント・乾汽船株主総会 質疑は完全に平行線、意見対立の収束見えず

アルファレオ自身への疑問も相次ぐ

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乾汽船が11月4日開いた臨時株主総会で、筆頭株主のアルファレオホールディングス(HD)が提案した乾康之社長の解任など4議案は全て賛成少数で否決された。株主質問では乾汽船とアルファレオの質疑は完全に平行線をたどったままで、現状では意見対立の収束は見えないままだ。また、株主からは、アルファレオ自身が自らの投資活動の実態を十分明かしていないことへの疑問の声も相次いだ。

「株主権利の乱用では」「グリーンメーラーなのか」

午前10時、東京・勝どきの乾汽船本社が入るビルで始まった臨時株主総会。冒頭、議長を務める乾康之社長が、アルファレオの招集を受けて開催した旨を報告。さらに、事前にアルファレオへ出していた質問状への回答内容と、乾汽船としての見解についてあらためて説明した。

続いて株主の質問に入った。冒頭の株主は今回の臨時株主総会でアルファレオが求めていた買収防衛策廃止を議案に加えなかった理由に「適法性に疑義がある」ことを挙げている点の具体的内容をただした。

また、アルファレオが総会前、康之社長の解任とともに、経営統合する前の乾汽船社長を務めていた乾新悟氏が社長として再登板するよう求めたことに言及。新悟氏がアルファレオとは面識がないと主張しているのについて「知らない人物を社長に推奨するのは株主権利の乱用ではないか」とアルファレオに尋ねた。

乾社長は質問を受け、「(総会の)目的事項ではないので回答を差し控えたい。(買収防衛策廃止をめぐる総会開催は)裁判で争うことになっているので経過を待ってほしい」と詳細な言及を避けた。新悟氏の件をめぐっては、株主として登壇したアルファレオの担当者は回答を拒んだ。

2番目の質問に立った株主は、アルファレオとの関係が取りざたされている、デジタル家電開発などを手掛けるメルコホールディングスの存在について「一体何をやっている会社なのか」と疑問を呈した。乾社長は「(アルファレオとどういう関係なのか)はっきり定義付けできない」とだけ説明。アルファレオの担当者も「開示しているものが全てなので回答は控える」と述べるにとどめた。

3番目の株主も「アルファレオは(高値で株式の買い取りを迫る)グリーンメーラーなのか」などと質問。しかし、アルファレオは「今回(乾汽船の)企業価値を守るとの立て付けで臨時株主総会開催を請求しており、議題や目的と異なる部分、われわれ自身に対して頂いている質問への回答は全て控えたい」と開示しない姿勢を堅持した。

取締役報酬の具体的算出方法めぐりさや当て

その後は攻守を変えて、アルファレオが株主として質問に立った。乾汽船の指名・報酬委員会の委員長を務める川﨑清隆社外取締役(弁護士)に対し、アルファレオがかねて乾汽船の取締役報酬が高額と主張していることに関連して、報酬額算定が妥当と判断した具体的検証の内容をあらためて問いただした。

川﨑氏は「報酬額などは開示している。(検証内容など)詳細をこの場で開示するのは差し控えたい。一般的な代表取締役が取得すべきと考えられる報酬額に照らし合わせ、不当に高いものではない。康之社長が企業価値向上へ取り組んでいるのは見ており、決して高いものとは認識していない」と正当性を訴えた。

アルファレオが報酬の具体的計算方法を重ねて聞いたのには、乾社長は「実額や計算の考え方は開示しており、このことをもって回答とさせていただきたい」と強調。アルファレオが「他社では計算方法を開示しているところもある。なぜ開示しないのか腑に落ちない」などと主張したが、乾社長は「本議案の審議は取締役報酬総額の上限が目的であり、個別の報酬を決める場ではない」と拒否した。

アルファレオが「今後も開示する考えはないのか」と再びただしたのには、乾社長は「未定のものはなかなかお話しできない」と言明。アルファレオは「開示したくない部分があるのではないか」と食い下がったが、乾佐長は「ございません」といらついた様子で言い切った。

アルファレオは併せて、加島昭久監査役に対し、報酬体系を比較した同業他社には海運業以外も含まれるのか聞いたところ、加島氏は「海運事業だけではなく(不動産業や倉庫業を合わせた)3事業を同時に経営している。(比較対象は)海運事業だけではない」と指摘した。

「自社株買いを提案」「そうした事実はない」

別の株主は、乾汽船で経営統合後、幹部を含めて50人程度が退職しているとアルファレオが言及したことを踏まえ、その真偽と背景を聞いた。乾社長は「一定規模の人身が離職したのは事実。数十名はかなりのインパクトだが、経営統合した結果、双方の会社にとってやりにくさは出る。給与体系や書類の書き方などでも不平不満は出る」と語った。

その上で、「何か明確に問題があるからというわけではなく、2つの会社が合わさったことによるものなので、対応策は今の経営方針を続けてやっていくだけ。波が治まれば残った者はしっかりと働いてくれる。社内でストレスチェックなど実施しているが、定点観測の結果でも大きな問題が会社にあるとは考えていない」と説明した。

臨時株主総会の議案にもなっている自社株買いをめぐり、さらに別の株主から質問が出たのに対しては、乾社長は「アルファレオに自社株を買うという提案をした事実はない」と明言。

この回答をとらえたアルファレオ担当が株主として最後の質問に立ち、「2018年4月20日、乾社長から電話があり『(乾汽船株を)売却する意向はありますか』との内容だった。そういった話を突如されるのは、自社株買いの意図があったのではないか」と追及した。乾社長は「先ほどと同じ回答であり、自社株買いを提案した事実はない」と言い切った。最後まで会社側と筆頭株主の間で緊張が続き、見解の溝も埋まらなかった。

株主による投票後に約45分間の休憩を取った後、再開。乾社長は4議案に対する投票結果は、いずれも賛成が過半数に至らず否決された旨を淡々と報告。正午すぎに臨時株主総会は幕を閉じた。

(藤原秀行)

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