LOGI-BIZ記事レビュー・物流を変えた匠たち②イオン&花王

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異業種タッグで国内初の「トラック中継輸送」展開

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2016年11月号「荷主主導の共同物流」特集で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名などの内容は掲載当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

数年前から物流共同化でタッグを組み、長距離輸送のモーダルシフトを推進。2016年には異業種の企業同士としては国内で初めて関東~中部間でトラック中継輸送を開始、当初見込みを大きく上回る成果を挙げている。ドライバー不足に伴う車両確保難への懸念が両社の背中を押し、異業種間の垣根を取り払わせた。

1000キロメートル超を往復輸送

イオンと花王はここ数年、モーダルシフトを連携して推進するなど、物流共同化で足並みをそろえている。流通業と製造業という異業種同士がタッグを組む背景には、荷主企業としてトラックの確保難が物流に悪影響を及ぼすことへの危機感を共有していることが挙げられる。

両社が最初に手を組んだルートが、東京~福岡間だった。2014年9月、東京から福岡への往路は花王が、福岡から東京へ戻る復路はイオンがそれぞれ同じJR貨物の鉄道コンテナを共同利用する輸送をスタートした。


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イオンは従来、自社で鉄道貨物を利用するのと併せて、10年に「鉄道輸送研究会」を設立、メーカーや輸送事業者とモーダルシフト推進の研究を進めていた。同研究会に参加する花王としても、鉄道貨物の取り組みを拡大したいと考えており、双方にとってまさに“渡りに船”といえた。

鉄道による共同配送は、まず花王の川崎工場(川崎市)から洗剤などを東京の貨物ターミナル駅へ運び、コンテナに搭載。福岡の貨物ターミナル駅から同社の物流拠点に届けた後、今度はイオングループで物流を担当するイオングローバルSCM(千葉市)が、グループのプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の飲料製造工場から出荷した商品を同じコンテナに載せ、東京に戻るとの流れだ。

鉄道営業距離が1000キロメートル以上に及ぶ遠隔地間で鉄道貨物による往復輸送を導入し、トラック運送よりもCO2削減や業務効率化を図る狙いだ。共同物流を手掛けるイオングローバルSCM事業本部の坪井康彦運営管理部長は「単に1回花火を上げるだけでは実効性はない。継続できることを前提として、往路、復路ともに相応の物量がコンスタントに見込めるルートとして東京~福岡が選ばれた」と話す。

往復輸送の実現には越えるべきハードルが数多くあった。最大の課題の一つが、製品の特性だった。花王SCM部門ロジスティクスセンターの山口裕人部長は「当社の製品には匂いがある。輸送中にイオンさんの飲料水へ匂いが移ってしまえば売り物にならなくなる。その点は問題がないかどうか慎重に研究とテストを重ねた」と振り返る。匂いがコンテナの中に残っていないか臭気計で計測するなど、念入りにチェックを繰り返し、最終的にゴーサインが出た。

往復輸送には、31フィートコンテナを採用した。10トントラックと積載量がほぼ同じで、トラックとの間で荷物をスムーズに積み替えられる点が強みだ。山口部長は「もともとイオンさんも当社も鉄道輸送に力を入れていたが、使っていたのは通常の12フィートコンテナだった。物流共同化の取り組みではより長い31フィートコンテナを採用することで輸送効率の向上を図った」と解説する。

現場での積み降ろし作業に要する時間が短くなり、トラックドライバーにとっても負担軽減につながっている。坪井部長は「前から31フィートコンテナを利用したかったが、片荷ではなかなか採算が合わない」と指摘、花王とニーズが合致したことを歓迎する。

毎週1回の運用を現在まで続けており、坪井部長は「既に2年間うまく回っているので、どちらの社にとっても日常的な業務として定着している」と話す。悪天候などで鉄道がストップした場合の運用もあらかじめ決めているが、15年8月に台風18号の影響でJR東海道線の一部区間が3週間不通となった以外、大きなトラブルは特段起きていないという。

イオンは花王との取り組みと並行して、他の荷主企業との連携拡大も模索している。14年12月には東京~大阪間で、両社に加えてネスレ日本、アサヒビール、江崎グリコの計5社で日曜に専用の貨物列車を仕立てる新たな共同配送に踏み切った。年末の繁忙期にトラックを十分確保できない事態に備えて、流通とメーカーが手を組んだ自衛策といえる。

各メーカーは26両・120基編成の鉄道貨物を使い、東西のイオン倉庫に納品する流れだ。専用列車にはその後、味の素やサッポロビール、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)といった主要な食品や日用品のメーカーも名を連ね、現在は参加企業数が10社まで拡大。繁忙期の前に年間10数回走らせている。15年12月にはCO2排出抑制が評価され、専用列車の取り組みが「グリーン物流パートナーシップ会議」から経済産業大臣表彰を受けた。


イオン・坪井氏 花王・山口氏

調達物流やエリア輸送も組み込む

貨物コンテナの共同活用で成果を挙げているのに続き、イオンと花王は次のステップに進んだ。16年6月、異業種間では国内初の輸送方式「トラック中継輸送」を関東~中部間でスタートした。


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長距離輸送をトラック1台で行うのではなく、中間地点で積み荷を交換。ドライバーが日帰りできる環境を整備して負担を減らし、トラックを確保しやすくするとともに業務の効率化を図る試みだ。

従来は当該のルートで、イオンの「関東RDC」(千葉県市川市)から「中部RDC」(三重県四日市市)まで幹線輸送。一方、花王は「豊橋工場」(愛知県豊橋市)から「川崎LC」(川崎市)まで製品を運んでいた。ドライバーはいずれも1泊2日の勤務になっていた。

新方式の導入後は、イオンは関東RDCから、花王は豊橋工場からトラックがそれぞれ出発した後、静岡県内にある協力運送会社の営業所で積み荷を交換。そこまでイオンの荷物を運んできたドライバーは花王の荷物を川崎LCまで、花王の荷物を届けてきたドライバーはイオンの荷物を中部RDCまでそれぞれ持って発地の方向へ折り返す格好となる。

現在は土日を除く週5日、このルートを運行している。イオンと花王にとっては、帰り荷を確保できるようになり、運行本数の抑制など輸送効率向上につなげられることがメリットだ。

山口部長は「今回の対象ルートは東京〜福岡ほどは長くない中距離のため、鉄道でカバーするには短く、トラックに頼らざるを得ないが、現状のままではドライバーの方々に負担を強いている。中間地点に拠点を設けて荷物をチェンジすれば日帰りができるようになり、トラックも有効活用できると考えた」と解説する。加えて、大規模な通行止めになることがあまりない東名道を使うため、何かトラブルに見舞われても代替の車がすぐに手配できるとの判断があった。

坪井部長も「取り組みのアウトプットとして、やはりドライバーの拘束時間を最長12時間にとどめ、きちんと自宅で休んでいただける環境をつくるのが一番大きな目的だった。併せて、コストをいかに下げられるのかルートの選定などを進めた」と狙いを強調。同時に「最初の貨物輸送よりだいぶ調整に手間が掛かった」と打ち明ける。

関東~中部間を2台のトラックで接続しているだけでは、効率化の効果は限定的のため、ルート設定を工夫。イオンの中部RDCを出発したトラックは、同じ愛知県内にある花王のサプライヤーに向かい、原材料を受け取って同社の豊橋工場に運んでから車庫に戻るようにするなど、幹線輸送以外に両社の調達物流やエリア輸送も組み込み、できるだけ空車となる区間を生み出さないよう腐心した。「調達や需給グループ、販売など管轄が異なるため、社内調整にも力を入れた」(山口部長)。

同時に、各拠点で無駄な作業時間を生まないために、発着のスケジュールも綿密に調整を重ねた。関係者が汗を流した結果、全体として運賃コストは約25%低減することができた。

坪井部長は「最初は東京~大阪間を検討し、途中の中継地点をどこに置くかも議論したが、どうしてもトラックドライバーを12時間で元に戻せなかった。その後も検討を重ねて今のルートに落ち着いた」と説明。コスト抑制の結果については「率直に申し上げると、最初は5%を目指していた。その数値でも達成は決して楽ではないだけにかなりの効果だったと思う。幹線輸送以外のルートも組み込んだのが結構肝になったのではないか」との見方を示す。




トラック中継輸送の実験の様子。イオン関東RDCに向けた配送商品を積み込み、中継地点の静岡でトレーラーヘッドを交換した(イオン、花王提供)

「相互の情報開示」に注力

中継輸送スタート後、10月中旬時点で大きな混乱は起こらず、順調に進んでいるという。それだけに、トラブルを見込んだ有事対応のスキームを事前に固めておくことが求められている。現状でも「何か不測の事態があれば運送会社からすぐに連絡が来る」(山口部長)体制を取っているが、幹線輸送は夜間に行われ、トレーラーヘッドの交換も午前1時~1時半の間に実施されるため、仮にトラブルがあった場合、関係者間で迅速に情報を共有し、行動に移せる仕組みの構築が不可欠だ。

ここまで成功することができた秘訣は何か。坪井、山口両部長が口をそろえるのが「情報の開示」だ。モーダルシフトから物流共同化の取り組みを続けていく中で、この時期にはこれぐらいの物量が日ごとに出るといった細かなデータについて、必要なものは隠さず相互に提示、協力し合えるルートの選定などに活用したという。「全部オープンにしてメリットだけではなくリスクもきちんとシェアする」(坪井部長)、「互いに掛け値なしで検討課題を詰めていく」(山口部長)という信頼関係の構築が、両社の取り組み加速の原動力となっているようだ。

今後も継続的にベースカーゴが見込めるルートで、東京~福岡の鉄道コンテナ輸送のような「ラウンドユース型」と、中距離の輸送もカバーできる「トレーラーチェンジ型」の二本立てで物流共同化の検討を進めていく見通しだ。

(藤原秀行)

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