【独自取材】プロロジス・モガダムCEO独占インタビュー(後編)

【独自取材】プロロジス・モガダムCEO独占インタビュー(後編)

日本事業20年の成果を高評価、先行きは「全く心配していない」

関連記事:【独自取材】プロロジス・モガダムCEO独占インタビュー(前編)

プロロジス共同創業者のハミード・モガダム会長兼CEO(最高経営責任者)はこのほど、東京都内の日本法人本社でロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

モガダムCEOは、日本国内で物流施設事業をスタートしてから2019年で20周年を迎えたことに関し、スタッフは日本人を登用するなど日本の特色を踏まえたローカライゼーションを進めたことで需要を開拓できたと成果を高く評価。今後も年間500億~750億円程度のペースで投資を継続していくとの見通しを示した。

先行きに関しても、物流施設開発の競争は依然厳しいが「競合が増えても勝ち抜ける自信があり、全く心配はしていない」と明言。マルチテナント型に加えてBTS型にも注力するとの日本法人の事業戦略を支持する姿勢を見せた。前編に続いて、モガダムCEOの発言を紹介する。


インタビューに応えるモガダムCEO※クリックで拡大

物流施設専業は今後も不変

―最近は労働力不足などを踏まえ、庫内業務の省力化につながると期待される技術やサービスを持ったスタートアップ企業との連携にも注力していますね。これまでに成果はありましたか。
「25の新規案件に投資し、そのうち2社が日本の企業でした。まだ具体的な成果を申し上げるのは時期尚早だと思いますが、実際に倉庫の中でさまざまな実証実験を行い、お客さまの物流現場の悩みを解決できるような新技術が製品化できるかどうかテストを続けています。グローバル展開している大手企業とも連携しています」
「労働力不足の中でどうやって人材を確保できるか、自動化をどのようにお手伝いできるか、といったテクノロジーは、物流不動産会社はどちらかといえばそれほど手掛けてきてはいない領域です。われわれは賃料設定水準などといった基本的な項目に加え、さらに戦略的なお話をお客さまと一緒に進めることができます。課題解決の責務を一緒に背負い、テクノロジーを施設にうまく適用しながら積極的に取り組んでいるからこそ、スタートアップ企業だけではなく、投資家サイドからも有望な企業、テクノロジーへ一緒に出資しないかとお声掛けいただけるのだと自負しています。われわれと組むとただ出資するだけではなく、マーケティングもお手伝いするなど、付加価値があると感じていただけているのでしょう」

―日本法人の事業本格開始から2019年で20周年を迎えました。これまでの歩みを振り返ってどのように感じますか。
「近年は物流施設が注目されるようになり、競合が続々と参入してきましたが、われわれは日本における賃貸物流施設市場のパイオニアであり、日本に根差したJリートも東京証券取引所に上場させ、物流施設をメーンの投資対象とするJリートの中では最も成功した存在の1つになっています。物流施設専業という当社のビジネスモデルは20年前からそうでしたし、20年後も変わらないでしょう。専業であってもこれだけの規模まで成長することができました。日本のチームが近代的な機能を持つ賃貸物流不動産の市場を切り開き、つくり上げてくれたことは非常に誇りに思っています。これからいくら競合が増えても勝ち抜ける自信があり、全く心配はしていません」

―日本の賃貸物流施設市場は外資系企業の御社が開拓をリードしてきた稀有な分野だと思います。その点についてはどう思いますか。
「質問の中で外資系企業とのお話がありましたが、われわれの日本法人に関しては、約120人の従業員は全て日本人です。米国企業として日本で米国流の事業をしようとしているのではなく、多国籍企業であり、日本を含む各エリアでローカルの専門性を持ったスタッフを配置し、日本のお客さまとグローバルのお客様の双方にサービス提供して成功している企業だといえます」
「事業を展開する上で大事なのは、各地域の特色を尊重する『ローカライズ』ということです。当社は現在、企業姿勢を表すタグライン(キャッチフレーズ)として“Ahead of what’s next(未来、その先へ)”を掲げています。実はかつてのタグラインでは、進出先でローカライズして地域社会に貢献し、成長するということを基本的な哲学に据えていました」
「日本の大手不動産会社が1980~90年代に競って海外市場に進出し、世界中の不動産に投資しました。そこで大きな成功を収めたケースがあったでしょうか? なぜうまく行かなかったのかといえば、日本企業が海外でも日本人のスタッフのみを連れていき、施設開発に日本のゼネコンのみを使い、ファイナンスで日本の金融機関のみと仕事する、というようにローカライズしなかったからです。われわれはできます。日本法人の経営トップは日本人ですし、日本の建設会社や金融機関などと日々お付き合いをさせていただいている。時には純粋な日本企業より、われわれの方が日本のために役に立っていることがあるかもしれません(笑)」


「ローカライズ」が重要と訴えるモガダムCEO※クリックで拡大

「日本は新たなアイデアを生み出す力が強い」

―日本ではもうすぐ累計で100棟目の物流施設開発を迎えようとしています。日本の事業はこの先10年、20年をどう展望しますか。
「米国以外では、日本は1つの国としては最も大きな市場です。われわれの事業はグローバルで毎年7~8%成長していますが、その中でも日本は非常に重要な位置を占めています。日本のチームはお客さまと一体になって物流施設開発の向上に取り組んでいることももちろん素晴らしいですが、新たなアイデアを生み出す力も非常に強い。今では日本で標準的になっている多層階構造や免震装置の採用、館内のアメニティー設備など、多くのイノベーションが生まれています。当社でも日本からいろいろなことを学び、グローバルに展開しています」
「日本のビジネスはとても安定しており、年間500億~750億円くらいの規模で開発を進めています。この2~3年も計画している案件があり、その先は何が起こるか現状で言い当てるのは難しいですが、今のペースを維持するか、もしくはもう少し積極的に開発し続けると思います」
―日本法人はマルチテナント型に加え、独自性を出すためにBTS型をより積極的に開発していく姿勢を示しています。その姿勢は支持されていますか。
「そうですね。もちろんお客さまの需要がありますから最先端のマルチ型施設を提供することは重要ですが、お客さまとの信頼関係をしっかりと構築できているからこそ、日本でBTS型にも注力することができると考えています」

―20年は日本でもグローバルでも引き続き、御社にとっては良好な環境であると予想しますか。
「まさにそうだと思います、毎年そうではありますが(笑)。日本で過去20年間に事業基盤をつくり上げてきたことを誇りに思います。今後20年も成長し続けるとみていますし、私自身とても楽しみにしています。日本市場にしっかりとコミットメントし、安定的に開発し続けて成果を残していきます。われわれの取り組みをこれからも注視していただきたいですね」


今年10月、日本法人の山田御酒社長と記者会見に臨むモガダムCEO※クリックで拡大

(本文・藤原秀行 写真・中島祐〔上2枚〕、藤原秀行〔一番下〕)

物流施設/不動産カテゴリの最新記事