JILSが持続可能なロジスティクス構築へ「猛烈な標準化」訴え

JILSが持続可能なロジスティクス構築へ「猛烈な標準化」訴え

2030年の理想実現目指し提言発表

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は1月10日、10年後のロジスティクスの在るべき姿を打ち出した提言「ロジスティクスコンセプト2030」を公表した。東京都内で同日開催した賀詞交歓会の中の講演で内容を説明した。

提言は、人口減少などの厳しい環境下でも日本のロジスティクスが持続可能となるため、あらゆる場面で物流資材や容器、商品データの取り扱い方といった事柄に関する標準化を「猛烈に」進めて効率化を図ることや、輸配送の共同化などを推し進める「データ共有型プラットフォーマ―」を育てることをポイントとして列挙。最先端の技術や知識を備えた高度人材の育成も打ち出した。

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現在の趨勢続けばトラックドライバー不足で全商品の3割運べず

ロジスティクスコンセプトは30年時点の日本のロジスティクスについて、各種統計などのデータを基に、現在の趨勢が続いたと仮定し厳しい環境となる「ディストピア」と、改革を進めて発展した理想的な「ユートピア」の2つの姿を提唱。

このうちディストピアは、30年の時点でトラックドライバー不足の深刻化により営業用貨物自動車が足りず、商品全体の3割を運べなくなると仮定。「他国の研究者・技術者との共同開発環境の構築や、次代の研究者・技術者育成への積極的な“投資”無くして(こうした状況からの脱却を)成し遂げるのは極めて困難」との見解を明らかにした。

一方、ユートピアを実現するためには「標準」「投資」「高度人材」の3要素が必要と指摘。荷主企業は用語や輸送容器といったものを標準化すると同時に、物流事業者もITなどへ適切な投資を進め、両者が現場への先進技術導入を円滑に行える高度人材を育てていくことで、特定の事業者だけではなく幅広い関係者が広くデータを共有、活用して業務効率化や高度化を図ることができるプラットフォームを構築していくよう提唱した。

さらに、ロジスティクスやサプライチェーンマネジメント(SCM)に関わる統計・データ解析を正しく行える人材を増やすため、理科系大学院で広くロジスティクスやSCMを科学的に教える講座を開講すべきだと強調。「高度人材が最適スケジュールを組むことで、ドライバーの数はそもそも半分以下で済む可能性がある」と分析し、現在の低い積載率を改善できるとの見方を示した。社会人を対象としたSCM教育の拡充にも言及した。

最後に総括として、商品や荷姿のサイズや重量に関する情報の登録方法、パレットや通い箱、かご車などの物流資材・容器、トラックの荷台サイズ、発注・納品のリードタイムや頻度といった事柄について、早急に産業界全体でルール化・標準化へ速やかに取り組むよう訴えた。

(藤原秀行)

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