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LOGI-BIZ記事レビュー・物流を変えた匠たち⑫東洋紡&住友化学

LOGI-BIZ記事レビュー・物流を変えた匠たち⑫東洋紡&住友化学

1つの新聞記事が鉄道による共同物流へ背中を押した

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2014年6月号「物流共同化」特集で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名、数値などの内容は掲載当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

鉄道コンテナを利用した共同物流を運用している。住友化学が東洋紡に原料の樹脂を納品、その帰りに東洋紡はフィルム製品をコンテナに積み込み、埼玉の物流拠点へ輸送している。トラックで運んでいたフィルムの3割超程度を鉄道に代替し、CO2削減に効果を上げている。両社間で新ルートの共同物流の検討も始めた。

「貨物線休止」記事が契機に

フィルム製品や機能樹脂などを手掛ける東洋紡と総合化学大手の住友化学が、鉄道コンテナを活用した共同物流を展開している。スタートは2009年12月。住友化学は千葉工場(千葉県市原市)からJR貨物と第3セクターの京葉臨海鉄道を経由して、東洋紡の敦賀事業所(福井県敦賀市)に原料樹脂のポリエチレン、ポリプロピレンを輸送している。一方、東洋紡は樹脂から製造したフィルムをロール状に巻き、同じコンテナの帰り便に積み込み、埼玉県川越市の物流拠点に商品を届けている。


共同物流の概要(住友化学資料を基に当社作成)※クリックで拡大

共同物流の開始前、東洋紡は敦賀からのフィルムを全てトラックで川越まで運んでいた。現在はそのうちの3割超程度をコンテナに切り替えている。

両社が業種の垣根を越えて、鉄道輸送による共同物流に踏み切ったのは、ある新聞記事がきっかけだった。「敦賀港線3月運行停止」「120年の歴史終止符」。08年11月12日付の福井新聞の一角に、大きな見出しが踊った。JR貨物がコスト削減などを目的として、貨物専用の敦賀港線を早ければ09年3月中旬に運行停止する方針を固めたとの内容だった。当時、住友化学は千葉から同線を通り、敦賀港駅まで鉄道コンテナで原料樹脂を運んで東洋紡の敦賀事業所に納品していた。運行停止は寝耳に水だった。

この記事が掲載された当日、住友化学の千葉工場生産管理部の島田治典物流チームリーダーはたまたま東洋紡の敦賀事業所を訪れていた。「会議室にいたところ、東洋紡さんの物流担当の方が部屋に入ってこられて、驚かれた様子で『この件について何か知っていますか』と聞かれた。われわれにとっては非常にセンセーショナルな記事だった」とその日のことを鮮明に記憶している。同時に、「この記事が出ていなければ東洋紡さんとの共同物流は恐らく簡単には実現してはいなかっただろう」とも指摘する。

敦賀港線が完全に廃止となれば、敦賀事業所への原料樹脂納入に影響することが危惧された。地元紙の記事を契機として、東洋紡への安定供給ルートを維持したい住友化学が、地元自治体などと協力して敦賀港線の存続をJR貨物に要請した。

結果として運行自体は09年4月に休止となったが、敦賀港駅は貨物列車の発着こそないものの、コンテナの取扱拠点として活用されるオフレールステーション(ORS)になることが決まった。敦賀港ORSと最寄りの南福井駅の間にはJR貨物がトラック便を走らせている。

ただし、敦賀港ORSの利用が伸びなければ、再び存続の危機に立たされる可能性がある。住友化学の場合、東洋紡に原料樹脂を届けた後、帰りのコンテナは空のまま敦賀港駅から千葉に戻っていたため、同駅の収益にカウントされなかった。そうした中、納品先の東洋紡に川越へ陸送している製品があると聞きつけ、住友化学から東洋紡へ、コンテナの帰り荷活用による共同物流を提案した。

東洋紡にとっても、敦賀営業所の最寄り駅である敦賀港駅は決して軽視できない存在だった。従来は輸出品を敦賀営業所からいったん関西まで陸送した後、神戸や大阪から出荷していたが、08年以降、敦賀港から直接海外へ出荷する量を増やし、輸送コスト削減やCO2排出量抑制に努めている。

港湾整備を進めるなどして地域経済活性化を目指す地元自治体や経済界を後押しする狙いもあった。敦賀港駅が完全になくなれば、同社の輸出業務にも何らかの影響が出る恐れがあった。これとは別に、東洋紡を含む業界団体の日本化学繊維協会が温暖化対策に取り組んでいたことも、同社の背中を押した。


2009年12月に行われた共同物流の出発式(東洋紡ウェブサイトより引用)

JR貨物も環境整備で側面支援

鉄道輸送による共同物流を始める上で両社が配慮したのが、コンテナの変更だった。従来は住友化学が専用のホッパーコンテナ(20フィート、総重量13・5トン)に原料樹脂をバルクで積んでいた。しかし、このコンテナに屋根はないことなどから、帰り便のコンテナにフィルムを載せることができなかった。

そのため、より大型で密閉も可能なISO規格コンテナ(20フィート、20トン)を採用。住友化学は原料樹脂を運ぶ際、専用のフィルムに包み、コンテナの内側が汚れるのを防ぐことにした。東洋紡は鉄道の走行時や連結時の振動でフィルムが傷つかないようにするため、運送会社の意見を聞きながら、製品に養生を施すことを決めた。両社の担当者が連携し、共同物流実現へ知恵を出していった。

JR貨物も重量が増すコンテナを扱えるよう、より剛性のある貨車の採用や関係貨物駅の地盤改良、大型フォークリフトのトップリフター配備などを進め、両社の共同物流を側面支援した。

こうした関係者の努力が実り、地元紙の記事が出てから約1年で両社の鉄道輸送による共同物流を果たした。住友化学の島田氏は「東洋紡さんはもちろん、JR貨物さんからもサポートをいただけた。同社が設置している、モーダルシフト実現に向けて顧客と協力する『ソリューションチーム』に入っていることが追い風になった」と強調する。

東洋紡はこの共同物流により、年間40トン程度のCO2削減につながっていると算出している。バルクの大型化を進めることで東洋紡、住友化学ともに物流効率の改善も果たしている。


共同物流の模様(両社ウェブサイトより引用)※クリックで拡大

東洋紡の清水義夫物流部長は「コスト的にトラック輸送と同水準まで来れば共同物流をやろうとの社内のコンセンサスを得て、話を進めた。島田さんがリーダーシップを発揮してリードタイム維持などに取り組んでいただけたのが大きい」と語る。

千葉〜福井間の共同物流が定着したのを踏まえ、両社は新たに、やはりフィルムを生産している東洋紡グループの豊科工場(長野県安曇野市)で、鉄道を活用した同じスキームでの共同物流の検討に入った。

異業種間での共同物流について、島田氏は「本音を言い合って、ここまではやれるがこの一線は越えられない、といったことが双方で理解できれば信頼関係の構築につながるのではないか」と言う。住友化学の藤永剛史物流部長は「東洋紡さんとの案件に加え、他業種との共同物流はチャンスがあればぜひ拡大したい」と意欲を示している。

(藤原秀行)

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