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【独自取材】物流施設など対象の私募コアファンド、安定運用に強い自信

【独自取材】物流施設など対象の私募コアファンド、安定運用に強い自信

ラサール不動産投資顧問・森岡執行役員インタビュー

ラサール不動産投資顧問でファンドマネジメント業務を担う森岡亮太執行役員はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

森岡氏は、2019年に日本で運用を開始した私募コアファンド「ラサール・ジャパン・プロパティ・ファンド」に言及し、先進的な機能を有する物流施設は国内外の機関投資家から非常に注目されていると指摘。ラサールが培ってきた施設の付加価値向上などのノウハウを生かし、安定した収益を望む機関投資家の期待に十分応えられると強い自信を見せた。

また、ラサールはリーマンショックで不動産投資が厳しい環境にあっても金融機関からのノンリコースローンを着実に返済し続けたことが金融機関にも評価され、エクイティ投資を呼び込むことができていると説明。「物流施設への投資に関しても真摯な姿勢を継続していく」との意向を示し、物流施設の稼働率向上などで投資家や物流業界に貢献していくスタンスをアピールした。

以下、発言内容の詳細を紹介する。


インタビューに応じる森岡氏

物流への投資意欲は依然強い

――米本社のラサール インベストメント マネージメントが物流施設など日本の不動産を対象とするオープン・エンド型(投資家が運用期間終了前に換金できるタイプ)の私募コアファンド「ラサール・ジャパン・プロパティ・ファンド」を組成し、御社が2019年11月に運用を開始しました。この時期に私募コアファンドを立ち上げた狙いは?
「ラサールは以前からアジア太平洋地域でも得意としている安定的に分配を行うコアなプロダクトを手掛けていきたいとの思いがありました。東京で約20年事業を展開してきて、不動産をはじめ関連業界の中でネットワークを構築し、日本の投資家向けの案件を組成する機会も増え、物流施設に特化したJリートを東京証券取引所に上場させることもできました。このように、ある程度マーケットでの認知度が高まった中で、私募のオープン・エンド型コアファンドを組成する良いタイミングなのではないかと判断し、2年ほど前から企画しながら準備を進めてきて、今ようやく本格的に運用をスタートすることができました」

――なぜ私募のコアファンドを選択されたのでしょうか。
「日本でオープン・エンド型コアファンドといえば私募リートが一般的な形態になりますが、われわれは私募リートも含めてどういうストラクチャーであれば理想的な運用ができるのかを一から考えた結果、私募ファンドという新しいストラクチャーでオープン・エンド型ファンドをやろうということになりました」

――私募ファンド形式でのオープン・エンド型のコアファンドを求める声は投資家からもあったのでしょうか。
「ありました。日本の大手のプロ機関投資家からも私募リート以外の選択肢もあってもいいのではないかとのご要望を伺っていました。また、もともと日本の私募リートの関連法制が出来上がってきた過程では、あまり海外投資家の出資を入れることを想定していなかったと思いますが、私募ファンド形式では海外投資家がより投資しやすいスキームであり、運用方法に柔軟性があると考えています。弊社はデベロッパーではなく運用会社なので、純粋に投資家利益だけを追求することができる点も国内機関投資家に評価されている点だと思います」
「日本は不動産マーケットの規模が大きく、機関投資家の投資対象となるアセットも非常に多い。法的にも安定しているので、海外投資家の日本マーケットへの投資意欲は非常に強いが、これまでは海外投資家にとっては投資できるオープン・エンド型のコアファンドがなかったということです」

――物流施設への投資意欲は依然強いですか。
「物流は、中国でも欧米でも世界中あらゆるところでeコマースの利用が進んでいることから、新しい施設のニーズは強い。日本も引き続きまだまだ強いと予想しています」

――今回の私募コアファンドにおける物流施設への投資の位置付けは?
「オフィスビルなど他のアセットクラスと併せて、先進的な機能を持つ物流施設を組み入れていきます。シード(組成当初)のアセットにも入っています。今後も資産規模における割合としては4分の1ずつくらいを念頭に置いています。ざっくり言えば、オフィスビルが3~4割、物流施設と賃貸住宅がそれぞれ2~3割、商業施設が1~2割という感じですね」

――主要4アセットにそれぞれ投資するという手堅い配分ですね。
「そこもやはり、競合となるファンドと差別化しているところです。当社はきちんとしたリサーチチームがあり、それぞれのアセットクラスにどの程度配分することがリスクとリターンの観点から投資家の皆さんにプラスとなるのかを分析をしながら戦略を組み立てていますから、そういう中で物流施設は非常に安定した、重要なパーツです」
「既存の私募リートの平均的なアセットの構成はオフィスビルが多い。われわれからすると、オフィスビルは非常に一般的なアセットクラスで売買もしやすいですが、その一方でアセットのバリューや賃料のボラティリティーが高い。その点、レジデンス(賃貸住宅)や物流施設は安定しているので、平均的な構成よりオフィスビルへの配分を減らし、レジデンスと物流施設を増やしました。商業施設はeコマース市場の拡大といったマイナス要因がありますので、厳選すべきだと思っています」

――4大都市圏が投資対象のメーンでしょうか。
「そうですね。特に物流施設は東京圏と大阪圏がメーンになるでしょう。やはり、中長期的にキャッシュフローが安定することが求められますから、アセットの選定では物流施設に限らずロケーションにこだわりたいと考えています」

――ラサールが開発した以外の物件も投資対象になり得る?
「そこは場所やスペック、需給などの要素できちんと分析できて、良い投資ができるものであればあり得ます。本当に立地が良く、スペックで問題がなければ築年数にはこだわりませんが、われわれが運用しているのはコアファンドですので、選べるのであれば仕様も良く、賃料も高い新しい物件の方がいいですね」

――御社は物流施設のリーシングにも定評があります。例えば、18年9月に取得した兵庫県尼崎市の大型物件「ロジポート尼崎」は稼働率をほぼ100%まで高められました。そのリーシング力の源泉は?
「尼崎は弊社の物流開発チームが行いましたが、弊社が日本で物流施設開発を手掛けるようになった当初から業界にネットワークを持ち、テナント企業を適切な賃料で誘致できる能力を備えたメンバーがそろっていたということだと思います。その後、開発の実績を重ねていく中でもお客さまとのリレーションを切らさず継続している。テナントのリレーションがどんどん積み上がっています。そこは本当にわれわれの強みです。取得・開発後に弊社のリートへ売却した後もテナント企業と引き続きお話ができるというリレーションは非常に大事でしょう」


ほぼ満床となった「ロジポート尼崎」(ラサール不動産投資顧問提供)

金融機関との関係は強固

――御社でのファンドマネジメント業務の経験は長いのでしょうか。
「私はもともと日本興業銀行に在籍していましたが、第一勧業銀行、富士銀行と計3行で経営統合してみずほ銀行になったのを契機に退職しました。途中、ベンチャー企業なども経験しましたが、13年ほど前に銀行での経験を買われてラサールに入りました。不動産投資ファンドの組成でノンリコースローンを金融機関から数多く調達してきた中でメガバンクとの関係を築いてきました」
「そうした矢先の08年にリーマンショックが発生しました。物流施設開発を含めて不動産投資全般が非常に難しい状況に陥り、特にローン満期を迎えても物件を売却できない案件が増えましたが、当社はノンリコースローンをリファイナンス(借り換え)したり、リストラクチャリング(スキームの見直し)をしたりと銀行の皆さんとそれこそひざ詰めで相談し、ほとんどの案件についてデフォルト(返済不能)に陥ることなく乗り切りました。非常に貴重な経験でした」

――そうした厳しい経験はコアファンドを含めた現在の業務に生かされていそうですね。
「市場環境が非常に悪い時期に、外資系のプレーヤーの中には投資家が出資を引き揚げてエクイティがゼロになったので、金融機関に物件を返し、ローンはデフォルトで結構というところもありました。しかし、われわれは絶対にそうしたことをせず、きちんと物件を維持、運用して何とかローンを返済し続けた。リーマンショックが落ち着き、市場が回復する時に、ラサールが投資するのであればエクイティ投資してもいいという銀行が何社か出てきてくれたのです」
「13年ごろには初めて、日本の投資家の方々からの出資のみでファンドの組成を果たせました。そこから同様のファンドを組成する実績を重ね、事業会社やリース会社、銀行といった日本の幅広い機関投資家の方々と強い関係を構築することができました。その流れで今回、オープン・エンド型ファンドを立ち上げられました。厳しい環境でもあきらめずに頑張ったことがファンド組成で生きたと言えるかもしれません」

――以前から御社はそうした苦しい時でも金融機関などとの関係性維持を重視するスタンスだったのでしょうか。
「明確に打ち出していたわけではありませんでしたが、他の外資系ファンドのように状況が厳しくなったら物件を戻してしまおうという姿勢はありませんでした。日本で不動産事業を展開する上で、銀行など金融機関が非常に重要な役割を果たしていますから、日本のスタッフはどんな時も金融機関とは良好な関係を維持すべきだということを十分理解していました。アセットをちゃんと維持し、高い稼働率や賃料を維持して物件のバリューを保ち、最後は売却して銀行にきちんとローンを返済するということを地道に続けてきた。そうした点が評価されて、メガバンクを含む日本の大手の金融機関の方々との当社の取引関係は、外資系の中でも非常に強固だと自負しています。そこはラサールの強みの一つです」
「今回のコアファンドでも、これまでにお付き合いいただいている金融機関や事業会社などの方々に加えて、中長期的な収益を重視される年金系の投資家が参加されています。当社の真面目な姿勢を評価いただいていると喜んでいます」

――年金系の資金が入ってきているというのは、投資対象としての物流施設の評価がかなり高いということをあらためて意味しているのでは?
「物流施設は、完全に中長期の資金を活用する投資対象になりつつありますね。年金系の機関投資家がトラックレコードのないファンドに資金を入れてくれることはあまりありませんが、本ファンドが物流を投資対象としていることも投資を判断していただいた一つの要素です。年金基金の中でも物流は一つの不動産セクターとして確立されていると思います」

――ただ物流施設は大量供給が続き、必ずしもコア投資に該当するような物件ばかりとは限らなくなってきていると思います。テナント企業の選別もより厳しくなるでしょう。コアファンドでも優れた案件を取得できると思いますか。
「実はシードアセットの1000億円強も1年半ほどで取得を完了することができました。今後もそれほど問題なく、優良なアセットを取得できると考えています。ラサールの強みは、アセットマネジメント(AM)の力が非常に高いということです。それはコアファンドの物件取得の時にも非常に生かせると思います。立地や機能は優れていてもまだテナント企業を押さえられていない物流施設をコアファンドに組み入れた後、稼働率を上げていくことにも自信があります。物流施設をバリューアップするというスキルは非常に蓄積されています。5000億円規模までの成長は可能だと考えています」

(藤原秀行)

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