政府ヒアリングで全日空・平子社長が窮状打開へ支援訴え
全日本空輸の平子裕志社長(定期航空協会会長)は3月24日、政府が首相官邸で開いた「新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリング」に出席した。
平子氏は、新型コロナウイルスの感染拡大で航空会社は国際線、国内線ともに旅客数が大幅に落ち込み、1桁の便も散見される危機的な状況に陥っていると指摘。2020年2~5月の4カ月間で業界主要各社の減収額は約4000億円、1年間では1兆円規模に達するとみて、早急な支援が必要との見解を強調した。
ヒアリングにはジャンボフェリーの加藤琢二会長(日本旅客船協会副会長)も参加。約半数のフェリー・旅客船事業者で予約件数が7割以上減っていると説明し、固定資産税減免や離島航路への支援などを要請。同時に、感染拡大終結後は「高速道路料金の引き下げは物流を担うフェリーへの甚大なマイナスの影響がある」と懸念を示し、海運と観光、物流の各業界全体にとってバランスが取れた振興策を講じるよう求めた。
SARSやリーマンショック時を上回る打撃
平子氏は03年のイラク戦争とSARS(重症急性呼吸器症候群)流行による減収額は約1700億円、08年秋のリーマンショックが約3000億円だったことと比較して「過去に例のない未曾有の危機」と打撃の大きさを説明。具体的な支援として、空港使用料や航空機燃料税などの支払い猶予、低利・無担保の政府保証付き融資実施などを要請した。
その上で「新型コロナウイルスが終息した際は観光業界とも連携して日本経済の活性化に貢献する」との考えをアピールした。
集中ヒアリングは3月19日以降、安倍晋三首相や菅義偉官房長官、岸田文雄自民党政調会長ら政府の主要閣僚と与党幹部が参加し、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける観光や旅客輸送、外食といった分野の企業や個人を招いて順次実施している。
安倍首相は3月23日のヒアリングの席上、「何としても雇用は守り抜かなければならないと決意している。その中でも経営者の皆さまが経営を継続していけるよう支援をしていく考えだ。収束に向けて努力、全力を尽くしたその先においては、また元の成長軌道に戻していく。V字回復を目指していきたい、そのためには強大な経済財政政策を講じていきたい」と語った。
ヒアリングに出席した平子氏(奥の列中央)と加藤氏(その右)(写真は全て首相官邸ホームページより引用)※クリックで拡大
(藤原秀行)