トラック標準運賃、大型連休前後にも正式に告示へ

トラック標準運賃、大型連休前後にも正式に告示へ

国交省審議会の公聴会で全ト協が「全面的に賛成」表明

国土交通相の諮問機関「運輸審議会」は4月2日、東京都内で、2018年に成立した改正貨物自動車運送事業法が打ち出している「トラックの標準的運賃の告示制度」で国土交通省が策定した運賃案に関し、関係者から意見を聞く公聴会を開催した。

トラックの標準運賃告示案を運輸審議会に諮問、4月に公聴会開催へ

トラック標準運賃告示案の公聴会、全ト協副会長が賛成表明へ

賛否を述べる公述人として、全日本トラック協会の馬渡雅敏副会長(佐賀県トラック協会会長、松浦通運社長)が出席。「トラック運送事業者が荷主と運賃交渉を行う際に大きな後押しになる」などと語り、早急に告示するよう内容への全面的な賛意を表明した。

運輸審議会は今後、公述人の意見も参考に議論、4月中にも答申する予定だが、基本的に運賃内容を了承する見通し。国交省は答申を受け、早ければ4月末からの大型連休の前後にも料金を正式に告示、運送事業者や荷主企業に周知していきたい考えだ。


都内で開かれた公聴会

「コロナ騒動でも休まず運び続けるドライバーのためにも早急に告示を」

改正貨物自動車運送事業法は標準的運賃の告示制度を23年度末までの時限措置と定めている。告示された運賃自体に法的な拘束力はないが、必要なコストを賄うだけの収益を運送事業者が得られる根拠の1つとして国が明示することで説得力を持たせ、運送事業者の経営とトラックドライバーの労働環境を改善する上で役立てるのが狙いだ。

公聴会では冒頭、国交省の伊地知英己貨物課長が運賃案の内容と告示する背景について説明。就労環境が依然厳しい点を踏まえ、ドライバーの長時間労働などの解消につなげていくとの制度の目的を強調した。

続いて、公述人として馬渡副会長が意見を述べ、「トラック運送業界は過当競争であり小規模・零細企業が多いことなどから、荷主への価格交渉力が弱く、必要なコストが賄えない運賃で輸送せざるを得ないという状況もある」などと解説。

「標準的な運賃の基礎的な考え方としては適正な原価に適正な利潤を加えたものを基準とし、その算定に当たってはドライバーの賃金を全産業の標準的な水準に是正し、コンプライアンス(法令順守)を確保できることを前提にすると聞いている」と国交省の説明内容に言及、全面的に賛成すると明言した。最後に「新型コロナウイルスの騒動の中でもリスクを負って休まずに物資を運び続けているドライバーたちのためにも早急に告示されることを要望する」と締めくくった。


公述人として賛意を表明する馬渡氏

この後、各委員と伊地知課長との質疑応答を経て、最後に同課長が「告示を出して終わりではなく、実際に運賃やドライバーの賃金がどのように変わっていったのか、きちんとフォローアップで調査していきたい。ドライバーの労働状況改善が第1の目的なので、運賃が上がっても賃金が上がらないという状況がないよう、問題が発生している事業者には適切に指導していきたい」と意見を表明。他の労働条件改善や取引条件適正化を促進する施策とも連動し、今後も積極的に取り組みを続ける姿勢を訴えた。

公聴会終了後、同審議会の原田尚志会長(元東日本環境アクセス社長)はメディアの取材に応じ、「これまでにも国交省などとやり取りを重ねており、議論は非常に煮詰まってきている。この案に特段違和感は覚えていない」と述べ、早急に答申をまとめる姿勢を見せた。


取材に応じる原田会長

(藤原秀行)

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