21年度からの次期総合物流施策大綱、官民検討会が年内に提言取りまとめへ

21年度からの次期総合物流施策大綱、官民検討会が年内に提言取りまとめへ

「ウィズ・ポストコロナ」踏まえ感染症や災害対応の強化など議論

国土交通、経済産業、農林水産の3省は7月16日、東京都内で「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」の初会合を開いた。

物流に関する関係省庁の施策の方向性を取りまとめた現行の同大綱は20年度が最終となっているため、これまでの成果と課題を踏まえ、21年度から5年間にわたる次期計画に盛り込むべき内容について計7回の会合を開き議論。今年の11~12月をめどに提言をまとめる予定だ。

 
 

議論は新型コロナウイルスの感染拡大や大規模災害の続発を受けて物流ネットワークを強化することや、人口減少を踏まえロボットやAI(人工知能)といった先進技術導入による省人化・生産性向上を加速することなどがメーンの議題となる見込み。政府は提言を基に新たな大綱を策定、20年度末までに閣議決定する。


検討会の初会合

根本座長「スピード感持って物流のデジタル化を」と見解

同大綱は1997年に5年計画として初めて閣議決定。その後、経済情勢の変化などを踏まえて内容を計4回改定している。

検討会は大学教授、物流企業やEC企業の幹部、業界団体幹部ら30人で構成。3省の幹部がオブザーバーとして参加している。初会合の冒頭、国交省の瓦林康人公共交通・物流政策審議官は「人口減少の本格化とともに『ウィズコロナ・ポストコロナ』の時代を見据えて新しい時代の物流の姿を、有識者の皆さまの知見を賜りながら検討を深めていきたい。前例にとらわれず、しっかりとした中身にしたい」とあいさつした。


瓦林公共交通・物流政策審議官

池田豊人道路局長は「新型コロナウイルス感染や災害が続く中で物流の公共性について世の中の認識が高まっており、これから極めて重要なことではないか。ぜひ次期大綱では官民の連携強化も含めた今後の方向性について皆さまと検討を深めていきたい」と語った。

 
 


池田局長

経産省の島田勘資官房審議官(商務・サービス担当)は「(現行大綱が始まった)17年度からはかなり状況が変わってきている。新型コロナで荷主の側もだいぶ意識が変わっている。社会システムの変化に対してどう対応していくのか、忌憚のないご意見をいただければ幸いだ」と呼び掛けた。


島田官房審議官

農水省の池山成俊輸出促進審議官は「日本の高品質な食材を海外に輸出していく観点からも十分な品質・鮮度の管理を行うためのコールドチェーン確立も推進している。今後このような取り組みについて、国としても積極的に官民一体となって推進していきたい」と述べた。


池山輸出促進審議官

検討会の座長に就任した根本敏則敬愛大教授は「(現行の大綱に関し)物流の標準化は一定の進捗があったのではないかと思う。次の大綱については、自分としてはポストコロナ時代に併せて、物流のデジタル化を、スピード感を持って進めていくことが重要と考えている。コロナは10年掛かっていた社会・経済の変化を3年程度で実現しなさいと言われているかのようだ。その意味で新しい大綱をこのタイミングで策定するのは理にかなったこと」との持論を展開した。

 
 


根本座長

検討会の事務局を務める3省からは今後検討が必要な課題の例として、
・ウィズ・ポストコロナ時代の物流に進化するため、産学官の当事者がそれぞれ担うべき役割
・AIやIoT(モノのインターネット)、デジタル化、ロボット、自動運転などの最新技術を活用した業務効率化を通じた生産性向上への対応
・物流情報のデジタル化・データ化、標準化への取り組み
・人口減少の一方で物流の小口多頻度化が進展していることを踏まえた物流リソースを最大限に有効活用する対策
・災害や新型コロナウイルス感染の緊急時でも求められる機能を発揮するため、ハードとソフトの物流ネットワークを一層強靭化する対策
――を提示した。

会合で委員からは、コロナのような感染症流行や大規模災害は何度も起こるとの前提で準備をすべきだといった意見が出た。日本の物流はトラックドライバーが荷役作業まで担うなど「ガラパゴス化」が進んでいるとの指摘や、「メーカーや小売りなどと連携が必要。そうでなければ物流事業者だけが機械化・省人化しても効果が出てこない」「トラック運送の大半を占める中小・零細企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めないと物流を持続することができない」といった懸念も聞かれた。

(藤原秀行)

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