バイナルと日立システムズがウェブセミナーで貿易実務の在宅化推進アピール
国際物流システムの開発・販売を手掛けるバイナル(名古屋市)は9月8日、クラウドサービスで協業する日立システムズとともに「国際物流のワークスタイルを変える」と題したウェブセミナーを実施した。
バイナルは1979年創業の国際物流システム専門ベンダー。荷主向けの輸出入業務システム「TOSS-SP」(トス・エスピー)および物流事業者向けの通関業務システム「TOSS-LOGIPORT」(トス・ロジポート)を柱に、OCR(光学式文字読み取り装置)や文書管理などの周辺システムを展開している。
今回のセミナーは新型コロナウイルスの感染拡大によるリモートワーク需要の高まりを受け開催。国際物流業務において在宅勤務を困難にしている要因に触れ、いかに解決していくかをユーザーの事例も交えながら提言した。
手書きサインのためにわざわざ出社
冒頭、バイナルの山下博之取締役副社長があいさつと会社紹介に登壇した後、日々現場で顧客に接している営業部の本多功蓉氏と小澤智史次長が、多くの企業から寄せられている業務の悩みを紹介。システムを活用した具体的な解決方法について提案を行った。
またゲストとして、バイナルとクラウドサービスで協業する日立システムズの大西智記ビジネスクラウドサービス事業グループ部長が、システムのクラウド化について講演した。
講座は輸出入を行う荷主向けの第1部と通関業者・港湾物流業者が対象の第2部の構成で、合わせて約150人が参加した。
荷主向けの第1部では、バイナル営業部の本多氏がテレワークの導入に当たり、輸出業務・輸入業務それぞれでボトルネックとなりやすい問題点を顧客の事例も交えながら解説した。
輸出業務においては「主に船積み書類への手書きサインと承認業務のために出社せざるを得ない担当者が多くいる」と指摘。エクセルなどで作成したインボイスに手書きでサインを行っている企業はまだ多く存在する上に、書類の承認行為を兼ねて上長がサインを行うワークフローを採用している現場も少なくないことがテレワークを困難にしている一因との見解を示した。
一方、輸入業務では、納品予定や取引の進捗といったスケジュール管理の機能が基幹システムには十分備わっておらず、情報共有が煩雑になっている点に言及。「そのようなケースでは担当者がエクセルでスケジュール管理をしていることが多いが、基幹システムとエクセルへ二重入力しなければいけない場面が多々発生している。さらに個人が自分の見やすいフォーマットを用いて属人化した管理方法を取りがちなため、部署や会社での一元管理が難しい」などの問題を列挙した。
その上で、バイナルのシステムが手書きサインの代わりとなる「スタンプ」機能を備え、システム内だけでドキュメントを完成できる仕様となっていることに触れ、「サインが承認業務を兼ねている場合は、担当者が帳票を作成した後に、上長が権限者のみ見られる管理画面でそれを承認して初めて提出可能なフォームの書類を発行できるよう設定することもできる」と説明。「さらに、上長の承認後は書類の変更ができなくなるため、万が一の不正行為も防止できる」とシステムのテレワークでの有用性と安全性を説明した。
また、輸入業務では進捗に沿って発注から船積み、通関、最終的には入荷先の倉庫や買掛などの情報を随時入力していくことで、自動的にスケジュールも一元管理し、関係者全員がスムーズに進行を共有できる機能を紹介。「担当する業務によって見たい情報が異なる場合でも、個々の画面で必要な項目を表示するようカスタマイズもできる」と語り、多様なニーズにきめ細かく対応できる点を強調した。
バイナルの山下副社長
バイナル営業部の本多氏
NACCS接続まで自宅で実現
第2部では「通関・フォワーダー業務の在宅化」にスポットを当て、バイナルの小澤氏が講演を行った。
小澤氏は第1部で本多氏が語った内容を受け、国際物流業務を請け負う物流企業においても荷主と類似する問題を抱えていることに言及。例えば通関などを行う物流業者においても、承認業務を紙ベースで実施しているケースが多いと指摘した。システムを導入していない企業では担当者がエクセルで業務の進捗を管理しており、情報の見える化、共有化を進める上で障壁となっていることも同様に見られるという。
小澤氏はバイナルの通関業務システムに関し、内部に承認機能を持っており、在宅勤務でも電子承認が可能とメリットを解説。例えば請求下払いの管理では、上長しか見ることができない画面で案件ごとにぶら下がっている請求と支払いを確認し、社内で売掛計上をしてよいかどうかの電子承認を行えるほか、請求書の発行業務では、上長と担当者の印鑑、会社の角印といった電子印を使用できるという。
また、業務の進捗管理についても、日々の業務データを入力していけば自然と進捗管理と情報共有が可能とPR。小澤氏はさらに輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)との連携や、経営に直結する売り上げ・利益などのさまざまなデータを帳票として出力することができると述べ、勤務形態を問わず運用できる充実した性能をアピールした。
事業継続に不可欠なクラウド化
各部の最後では、日立システムズからビジネスクラウドサービス事業グループ部長の大西智記氏がゲストとして登壇した。
大西氏は「テレワークのシステムは緊急事態宣言が出た後、一気に4倍の接続数になった」と振り返った。さらに「パンデミック(感染拡大)や自然災害をはじめ、状況が一変するような変化にも対応できるよう、システムは柔軟に業務を継続できる形に最適化される必要がある」とクラウド化の重要性を重ねて強調した。
バイナルと日立システムズは2017年に貿易業務システム「TOSS」シリーズのクラウド展開で協業。クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を基盤に採用し、セキュリティーを担保しながらも初期費用を抑えて、短期間で利用を開始できるのが特徴。運用に関しては日立システムズが24時間体制でシステムの監視を行い、トラブルなどに対処する。月々のコストも月額5万円台からと、幅広い規模の企業への提供を目指している。
大西氏は協業の過程などを語った上で「最近ではコロナ対策ですぐにクラウド環境が欲しいというご相談をいただいて即応した実績もある。業務の処理量に合わせてサーバーの大きさを3つから選んでいただくだけで、TOSSシステムのクラウド利用に必要な機能を全て含めて提供できる。最短5営業日で導入が可能だ」と成果をアピールした。
最近では専門知識のない担当者や緊急を要する相談が増えているため、クラウド導入に当たっては通常細かい検討事項があるが、定番のクラウドをパックとして提供することで導入負担を減らしていると説明。「その分、お客さまには本来の重要なビジネスに集中してもらいたい」と語り、講演を締めくくった。
バイナルの小澤次長
日立システムズの大西部長
(川本真希)