JUIDA・鈴木理事長独占インタビュー(後編)
ドローン(無人飛行機)の産業利用促進に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(東京大名誉教授、東京大未来ビジョン研究センター特任教授)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。
鈴木理事長は実用化の機運が高まっているドローン物流に関し、離島や山間部での荷物配送に加え、物流拠点間でコストを低減するため一度により多くの荷物を扱える大型機体を投入して空輸するところから活用されていくとの姿を予想。垂直離着陸が可能な「空飛ぶクルマ」もまず物流の分野で利用が始まると展望した。
また、医療物資や災害時の緊急物資の輸送にドローン活用の期待が大きいことにも触れ、JUIDAとして実現に協力していきたいとの意向を示した。インタビューの後編を掲載する。
鈴木理事長(2019年撮影)
実証実験手掛ける地方自治体は今後も増加
――ドローン物流は各地で実証実験が続いていますが、今後も動きは広がりそうですか。
「民間企業に加えてドローン物流の実証実験を手掛けられる地方自治体も増えています。今後も確実に増加していくとは思いますが、現状ではドローン物流を民間企業の事業として独立して展開するのは採算などの面からなかなか難しいと思いますので、最初は自治体の地域住民向けサービスとして展開される場所が多いでしょう。その先に、将来は民間の事業として成立するところまで持っていけるようにしたいですね。今はまさに過渡期であり、そのためにも、先ほどもお話ししたようなドローン物流事業者の免許や、操縦に関する国のライセンスなどの整備が不可欠です」
「ドローンに関しては、物流以外にもインフラ点検や空撮といったサービスが今後大きく伸びていくことが期待されています。そこでドローンの操縦技能などに関する業種別の特殊免許、目的を限った免許の創設について要望があります。JUIDAの認定スクールでそうした技能を教育システムに取り入れていくなど、JUIDAとしても取り組んでいくべき大きなテーマだと感じますね」
「さまざまな業務にドローンを投入することで、直接人が間に入らなくても行えるようにしていく必要はあると思います。今後航空法などが改正され、国の操縦免許を取得することに加えて、機体も認証を得て、ドローンを飛行させる際にも公的なマニュアルに沿って行う、という3点がそろっていれば、例えばドローンを夜間に飛ばしたり、都市部で飛行させたりする場合にも許可申請がより早く進められるようになるでしょう」
――ドローン物流で今後注目される動きはありますか。
「機体の大型化ですね。空撮やインフラ点検などの用途は今のところ、従来のような小型のドローンで十分対応可能です。しかし、物流に関してはラストワンマイルの部分は小さなドローンで個別配送することができますが、まだまだ日本では都市部で自宅の玄関先までドローンが荷物を届けるのは法規制などの問題から時間がかかりそうなのが正直なところです。まずは拠点間の輸送にドローンが使われるのが現実的だと感じます。そうなると、コストを下げるためには一度により多くの荷物を運ぶことが必要になってきます」
ドローンの国際展示会「Japan Drone 2020」でも初の試みとして、大型ドローン専用の展示ブースが設けられた(写真はテクノシステムと湘南工科大、サレジオ高等専門学校が出展したドローン)※クリックで拡大
ISOの標準化作業で日本が主導的役割果たしたい
――物流に関しては新型コロナウイルスの感染拡大でドローンが医療物資を運ぶことに注目が集まっています。
「医療物資のドローン輸送は以前からいろいろとご相談を受けているのですが、薬事法の縛りもあり、日本ではなかなか簡単にはいかないというのが実感です。ただ、医療関係の方々のニーズは前々から非常に高く、例えば移植用の臓器をドローンで運ぶことができないかというお話もあります。最終的には飛行機で輸送しますが、病院から飛行場までは車で届けているため、その区間をドローンで持っていってもらえれば非常に助かるということです。今はオンラインによる遠隔医療がようやく始まったばかりなので、ドローン輸送については関係される方々の理解を得ながら準備を進めなければいけないでしょう」
「アフリカでは既にドローンを使った輸血などの輸送が行われていますが、道路が整備されていないといった事情があり、日本とは環境が異なります。ルール作りのお手伝いはJUIDAでもお役に立てるでしょうし、われわれのような団体が中心になって議論を進めていけるのではないかと思っています」
――ドローンは災害時の救援物資輸送や被害状況把握などの活用にも期待されています。
「この分野は非常に大きなニーズがあります。台風や大雨などの被害をいち早く把握し、緊急物資を届けるとともに、災害がひと段落付いた後も定期的に被災状況をモニターしなければいけません。これまではヘリコプターがその役割を担っていましたが、保有するのにお金が掛かりますし、なかなか数を一気に増やすのも難しい。ドローンが代替できるところはドローンが担うことがこれから本当に必要とされていくのではないでしょうか」
――垂直離着陸が可能な「空飛ぶクルマ」はタクシーなど人を運ぶイメージが強いですが、物流でも活用が進みそうですか。
「そうした位置付けが市場でまず求められるのではないでしょうか。官民協議会が策定したロードマップでは2023年から事業化との目標を掲げており、スタートアップ企業などが実現を目指して積極的に取り組まれていますが、日本で人を乗せるのはなかなか容易ではありません」
――JUIDAとしては海外の機関との連携も引き続き積極的に模索されていきますか。
「操縦技能の教育などの面でJUIDAがお役に立てることは多々あると思いますので、国際的に連携していきたいですね。また、ドローンに関してはISO(国際標準化機構)で国際的な標準化の検討作業が進められており、日本からもJUIDAなどから専門家が参加してオペレーションやトレーニング、運航管理システム(UTM)といった領域で議論をリードしています。標準化では引き続き、日本が主導的な立場を取っていけるよう頑張っていきたいですね」
(藤原秀行)