都道府県知事が「命令」可能、受け入れなければ過料も
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、飲食店の営業時間短縮に関する規制を強化することなどを盛り込んだ改正新型インフルエンザ等対策特別措置法と改正感染症法、改正検疫法が2月13日、施行された。
改正特措法は政府が緊急事態宣言を発令した都道府県の知事が感染拡大を防ぐため、人が多く集まる施設の使用を制限するよう事業者に要請できるようにしたほか、正当な理由なく応じない場合は「命令」することを可能にした。
また、同宣言が出る前の段階や解除された直後に感染防止対策を集中的に講じられる「まん延防止等重点措置」を新設。政府が同措置の対象とした都道府県の知事は飲食店などに営業時間の変更や休業を要請、従わない場合は命令ができるとの規定を導入した。
命令を守らなかった場合、前科にはならない行政罰として、同宣言が出ていれば30万円以下、重点措置の際は20万円以下、都道府県が要請や命令を出すかどうか判断するための立ち入り検査を受け入れない場合も20万円以下の過料をそれぞれ課す。
同時に、国や地方自治体に対し、感染防止措置で業績悪化などの影響を受けた事業者へ必要な財政上の措置を講じるようを明文化している。
「虚偽の説明」裏付けは困難、実効性に疑問符
改正感染症法は都道府県知事らがコロナ感染者に対して自宅や宿泊施設で療養するよう要請、応じなければ入院を勧告し、それでも従わなかったり、入院先から無断で外出したりした場合は50万円以下の過料を科すことを新たに定めた。保健所の感染経路に関する調査を拒否したり、調査に対して正しい説明をしなかったりした場合も30万円以下の過料。
また、厚生労働大臣や都道府県知事が医療機関に病床確保などで必要な協力を勧告、正当な理由がないのに断った場合は医療機関の名前を公表できるようにした。
改正検疫法は検疫所長が海外から入国した感染者に自宅待機などを要請し、応じないと施設に「停留」させることなどを可能にした。感染者が措置に従わなければ刑事罰として1年以下の懲役または100万円以下の罰金となる。改正感染症法と改正検疫法については緊急事態宣言の発令などとは関係なく運用する。
飲食店などへの命令を順守しない場合の過料については、各店舗が命令を守っているかどうかを完全にチェックできるだけの十分な人手を都道府県ではたして確保可能なのかなど、実効性に疑問符が付く。感染者への過料に関しても、感染対策に忙殺されている保健所に、感染者が虚偽の説明をしていると裏付けられるだけの余裕があるとは想像しにくい。罰則については、法律に明記したことによる抑制効果が主な狙いとなりそうだ。
政府は2月12日、10都府県を対象に発令している緊急事態宣言を継続する方針を決めた。10都府県は改正特措法の適用対象となる。菅義偉首相は同日の政府対策本部で「新たに設ける行政罰については、都道府県知事の要請や命令に従っていただけない場合に、必要最小限の措置として運用されることとなる」と説明、慎重に運用する姿勢を強調した。
政府の対策本部で発言する菅首相(首相官邸ホームページより引用)
(藤原秀行)