【独自取材】ANA Cargoの「空陸一貫輸送」プラットフォーム、新サービス開発にも注力

【独自取材】ANA Cargoの「空陸一貫輸送」プラットフォーム、新サービス開発にも注力

最短で4時間をアピール、連携の運送6社は需要に大きな期待

ANA Cargoは3月1日、複数の運送事業者らと連携し、多様な空陸一貫輸送サービスを提供する「ANA Cargo Door to Door Express」を開始した。当初は合計で6社とパートナー関係を構築。専用のポータルサイトを通じ、利用者がそれぞれ送りたい荷物の種類やサイズなどに応じて、適切な事業者を選べるようにしている。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で旅客輸送が低迷する一方、航空貨物の需要は今後も底堅く推移するとみて、全国に短時間で物を届けられる空陸一貫輸送サービスを拡大、顧客のニーズに対応していきたい考え。タッグを組む6社も、ANA Cargoの空輸網を活用した既存サービスをより積極的にアピールしたり、新たなサービスの開発に取り組んだりと業容拡大に努めている。順調に利用が伸びれば、空陸一貫輸送の新たなプラットフォームとして機能しそうだ。

ANA Cargoが運営しているポータルサイトでは、同社が2019年9月に空陸一貫輸送サービスを共同で始めたCBcloudに加え、求貨求車サービス大手のトランコム、バイク便を手掛けるセルートやウィズ、軽貨物輸送を軸とするアネックス、国際宅配も担うロジクエストを紹介。各社が手掛けているサービスを掲載しているウェブサイトとリンクを張り、サービス内容を比較検討できるようにしている。

既にANA Cargoの航空輸送を利用しているケースも多く、ポータルサイトの開設により6社は自社のサービスをさらに広く知ってもらう契機になると期待を込めている。ポータルサイトでは、各社の陸送とANA Cargoの空輸を組み合わせることで、集荷から配送まで最短4時間で完了できると迅速性をPRしている。


ポータルサイト

食品や医療関係の小口荷物注視

CBcloudは現在、国内の33空港を対象に空陸一貫輸送サービスを提供。荷物とトラックのマッチングサービス「PickGo」と連携、国内各地に受付から最短で当日中に届けられる体制を整備している。

同社の皆川拓也執行役員は「われわれ自身、ANA Cargoさんと提携した時に初めて航空便を使う方が安いケースがあることを知った。この点はさらに多くの方々に認知していただきたい」と強調。佐川大介執行役員も「当社で登録いただいているドライバーは2万5000人を超えており、荷物の積み地と到着地の両方でドライバーをすぐに手配できるところが強みだ」と指摘する。今後はサービス対応の空港を全国でさらに広げるほか、冷凍・冷蔵の温度帯でも対応できるようにすることを視野に入れている。

トランコムは経営の長期ビジョンとして「トランコムならではの高度な『はこぶ』仕組みを創造」の方針を掲げ、新サービスの開発や既存サービスのブラッシュアップに全社を挙げて取り組んでいる。チャーター中心だった輸送サービスでは1台フルには満たない中ロットの荷物獲得に注力するとともに、軽トラックや2トントラックを使ったラストマイル配送も強化している。

ANA Cargoと連携を強めることでリードタイムを短縮、長距離の中ロット輸送などのニーズを掘り起こせると期待を寄せている。トランコム物流情報サービスグループ事業本部の福永圭マネージャーは「航空輸送を活用して小・中ロットの貨物をリーズナブルな料金でスピーディーに届けることが1つの新たな武器になるのではないかと感じた。既存のお客様に対しても、欠品したパーツを緊急輸送するといった新たなサービスをご紹介できると思う」と意気込みを見せており、トライアルを重ねていく考えだ。

セルートはバイク便や軽貨物のカーゴ便で以前から緊急の荷物を数多く取り扱ってきているほか、スタッフが公共交通機関を使い、配送先までダイレクトで届ける「ハンドキャリー便」も提供している。ANA Cargoの航空便もかねて活用してきた。

同社エージェントアイ事業部デリバリュー東日本営業本部の瀬川出東京営業所課長は「時間がタイトな性質を持っている荷物は基本的に何でも取り扱っている。遠隔地でも本日中に届けられるようにするなど、問題解決のためのコーディネートも経験を重ねており、お客様に最適な提案ができる」とPRする。小口の荷物をメーンに想定しており、今後は食品や医療に関係する荷物の取り扱いを広げていくことを目指している。


サイトで6社のサービスを一括して紹介

「全国当日」のサービス拡充

ウィズもバイク便や軽貨物便に加え、「宅配便で送るには大き過ぎ、トラックを手配するには少な過ぎ」のサイズを対象とした一般貨物便サービスも展開。多様な荷物を迅速に配達する体制を整えてきた。既に小口荷物を取り扱う航空貨物便も24時間体制で受け付けている。

同社の葛西政彦専務取締役は、航空貨物便について羽田や大阪(伊丹)から九州各地の空港向けに午前中受け付ければ当日中に配送するサービスを展開していることに触れ「小口荷物だが1日に20~30件のオーダーをいただいており、大口の荷物も送ることができないかと問い合わせがかなり来ている」と説明。ニーズは底堅いとみて、ANA Cargoの航空便を生かして対象エリアを広げていくことを目指す。

バイク便のロジクエストも、本日中に遠方へ荷物を届けたいとの要望に対応する「全国当日便」を行っている。バイク便だけでなく航空便や新幹線を介することで料金もリーズナブルにできるよう努めている。ANA Caegoとの関係強化で全国当日便のサービス内容拡充につなげられると見込む。

ロジクエスト国内輸送事業部門の川上公望都市型物流部長は「今後は検体のような、1回の配送の価値が非常に高いものを運ぶ機会が増えるのではないか。宅配のような通常の物流インフラからあふれてくる、レギュラー配送の中には納まらない価値ある配送のニーズにお応えしていきたい」と将来を見据えている。

ANA Cargoは運送事業者とのタッグの範囲をさらに広げていくことに意欲を見せている。同社の大河内穣国内顧客販売部長は「運送事業者の方々に空港までの配送などの足回りを担っていただくことで航空輸送の価値をさらに高められる。社会貢献という物流の本来持つ意義をより多くの方に知っていただけるようになる」と力説している。

(藤原秀行)

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