【独自取材】「今後5年で船や鉄道などとも連携した『モノのMaaS』が機能」

【独自取材】「今後5年で船や鉄道などとも連携した『モノのMaaS』が機能」

CBcloud・松本CEOインタビュー(後編)

荷物とトラックのマッチングサービス「PickGo」を展開するCBcloudの松本隆一代表取締役CEO(最高経営責任者)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

松本氏はPickGoの配送プラットフォームを生かし、個人向けに展開している店舗での買い物や購入した商品の受け取りを代行するサービスも利用が伸びていると説明。こうしたサービスを通じ、「買い物難民」の高齢者支援など地域振興にも貢献していくことに強い意欲を見せた。

 
 

また、個々の配送に関してITを活用し、常に最適な条件で荷物を届けられる「モノのMaaS(Mobility as a Service)」を推進していることに関連し、今後5年程度で航空機や船舶、貨物鉄道、バイク、自転車などより幅広い輸送モードとの連携が実現したモノのMaaSが機能しているとの見通しを示した。

インタビューの後半部分を紹介する。


松本氏(2019年撮影)

フードデリバリーの需要増にも対応できるインフラ

――PickGoは法人向けに加えて、個人向けにもさまざまなサービスを展開しています。前編でも言及がありましたが、フードデリバリーは引き続き需要が見込まれますか。
「そうですね、最近もウーバーイーツさんが全国展開を準備されているとの報道がありましたが、まだまだ伸びしろがある分野だと思っています。新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、具体的にフードデリバリーの需要がどこまで伸びるのか明確には予想できない部分もありますが、少なくともフードデリバリーの需要増に対応していく上でわれわれのインフラが十分貢献できることは、2020年に実感しました」

――PickGoのプラットフォームを活用して展開している買い物代行サービスもコロナ禍でかなり需要が広がっているようですね。
「買い物代行は、もともと登録されているドライバーさんのすき間の時間をどうやって仕事で埋めていくかという議論があった中で考え付いたサービスです。そこにたまたまコロナ禍が重なり、需要を獲得できたという側面はありますね」

――買い物代行で今後の目標はありますか。
「直近では4300店舗くらいにお使いいただいています。店舗数はもちろんですが、ユーザー数も伸ばしていきたい。できれば今年の9月くらいまでには10万ユーザーを獲得したいですね」

 
 

――買い物代行は大規模チェーンに加えて、地域の店舗でもニーズが多そうですね。
「地域の商店街のお店に関しては、地方自治体とも連携して取り組みを拡大していこうと考えています。これまでに大阪府の東大阪市、富田林市の両市とそれぞれ買い物代行の導入促進に関する事業提携協定を締結させていただきました。買い物代行を活用することで、商店街などの地域活性化に加え、移動や買い物に困っておられる高齢者の方々や子育て中の方々にとって住みやすい地域になるよう貢献したいですね」

――他の自治体にも連携を広げますか。
「もちろん相手がいらっしゃる話なので、連携が可能かどうかしっかりと対話する必要はありますが、私たちのインフラが地域活性化に貢献できる可能性があればぜひ進めていきたいと思います」

――個人者向けには、今年1月から購入した商品の店舗での受け取りを代行するサービスも手掛けています。利用状況はいかがですか。
「買い物代行に続く受け取り代行に関しては、クリーニング店に預けた衣類を受け取ったり、事前に注文したお寿司を店舗で引き取ったりと多様な使われ方が考えられます。買い物代行と同時並行で広げていければいいなと思います。世の中には、商品を代わりに受け取ってほしいというニーズが着実に存在していることを実感しています」


大阪の東大阪市(上)、富田林市と提携(いずれもCBcloud提供)

軽貨物以外にもニーズに合った陸送車両を選べることを伝えていきたい

――御社は常に最適な条件で荷物を届けられる「モノのMaaS」構想を推進する一環として、航空会社との連携に取り組んでいます。既に日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)傘下のANA Cargoとそれぞれタッグを組み、空陸一貫輸送サービスを展開していますね。
「現時点ではサービスに対応できている空港とできていない空港がありますが、荷物が送り先の空港に到着した後、PickGoの登録ドライバーが車で運んでいます。日本の広範囲で航空便を使い、スピードを持って荷物を配送できる状況を整備できたのではないかと思っています」


「モノのMaaS」のイメージ(CBcloud提供)

 
 

――空陸一貫輸送サービスの需要は?
「おかげさまでコンスタントに発注をいただいています。ここもまだまだ伸びる余地があると見込んでいます。まだどのように空陸一貫輸送サービスを使えばいいのか具体的なイメージがわいていないお客様が多くおられますから、本当にお急ぎの時に飛行機は非常に利用価値が大きいことをより多くの方々に知っていただくという部分でも、まだまだ伸びしろがありそうです」
「陸送だけで遠距離を配送するよりも、航空便を組み合わせた方が実は安いケースが多いんです。荷物を届ける上で早さというニーズがある一方、料金の安さという要望もあり、両方にお応えできる。その特性の周知はこれからもずっと続けていきます」

――「モノのMaaS」で航空以外のモードとの連携はどう整備していきますか。
「直近で一番取り組んでいるが自転車、バイクとの連携ですね。それ以外に、船の領域まで行くとなれば、それこそ2~3年というスパンで本腰を入れて考えていかないといけないと思っています」

――今後5年くらいで船や鉄道などとも連携したMaaSのプラットフォームが機能しているとのイメージでしょうか。
「まさにそうですね」

――物流業界もDX(デジタルトランスフォーメーション)が急務となっています。マッチングプラットフォーム以外に、デジタル化をサポートするため新たに考えていることはありますか。
「運送事業者や宅配事業者の方々の業務効率化を支援する『SmaRyu(スマリュー)』という事業を提供していますが、導入された事業者を増やせているというところでは、DXに貢献できているのではないかと思いますね。全国各地の事業者の方々のマインドもDXに向いていますから、この先さらに利用が増えていくとみています」

――軽貨物の登録が2万5000台とのお話ですが、さらにドライバーに登録してもらう必要がありますか。
「そう思いますね。ドライバーは地域によっては、やはりまだまだ足りていないところもあります。全国の隅々まできちんと配送できるインフラを整えるために、さらに増やしていきたい。もちろん、その前提として登録いただいた方にお仕事があるという状況を作らないといけませんから、そこも同時に考えていく必要があります」

――荷物に関してこういう領域を伸ばしていきたいとの目標はありますか。
「当社のマッチングサービスはオープンプラットフォームとして運営していますから、特定の領域というよりも、幅広く使ってもらいたいという思いがあります。当社のマッチングプラットフォームはどうしても軽貨物からスタートしたこともあって、軽貨物が一番強いとのイメージが強いですが、今は一般貨物の中でも2トンから10トンまでのトラックを提供できますし、ユニック車や特殊車両も用意することが可能になりました。10トントラックでも当日に呼べるというスピード感に驚かれ、評価いただいているお客様も多いです。予想を超える数の協力会社が登録してくださったおかげで、サービスの全国対応が可能になりました。21年はニーズに合った車両を選べるプラットフォームであることをさらに知っていただくことに力点を置き、お客様にお伝えしていきます」

(藤原秀行)

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