樫本常務執行役員「荷物急増で配送現場が厳しい状態というところまでは至っていない」と説明
ヤマトホールディングスの樫本敦司常務執行役員は4月28日に開催した2021年3月期連結決算の電話会見で、20年度(21年3月期)の「宅急便」の取扱個数が前年度比16・5%増の20億9600万個と、初の20億個台に達したことに言及した。
背景として、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うECの普及加速が影響したと説明。その上で、21年度(22年3月期)は約1割増の23億個を見込んでいることを明らかにした。
21年3月期の連結営業収益(売上高に相当)は前期比4・0%増の1兆6958億円。営業利益は約2倍の921億円、純利益は約2・5倍の567億円でともに05年の持ち株会社体制に移行してから過去最高となった。新型コロナウイルスの感染拡大によるEC利用の伸びが業績を大きく押し上げた。
22年3月期は営業収益が4・7%増の1兆7750億円、営業利益が3・1%増の950億円、純利益が6・5%減の530億円を見込む。
「グループ全体で労働環境損ねず対応できた」と総括
樫本氏は20年度の実績に関し、前提として配送実績などのデータ分析に基づいて需要予測を立て、集配業務や幹線輸送の効率化を図るとともにパートナーの運送事業者と連携してECの配送網を構築し、配送能力の拡大とコスト適正化を両立させる「データドリブン経営」を進めてきたと説明。
「昨年3月以降、コロナ禍を契機に生活様式やビジネス環境の急速な変化が起こり、EC利用者のすそ野が拡大した。その結果、ECを中心とした荷物が急増したが、ヤマトグループ全体としては労働環境を損ねることなく対応できた」と総括した。
21年度については、EC需要拡大の流れが継続すると展望。荷物の取扱量増大への対応として「過去は過重労働が発生したり、実際に(業務が)パンクしたりして、需要に応えきれなかった状況が数年前にはあった。今は新たな配送ネットワークを構築し、料金の適正化も進めているので“豊作貧乏”という形ではなく、利益が出る体制へ徐々に変わってきている」と自信を見せた。
物流現場でかねて人手不足が叫ばれていることに関連し「先々を見たデジタル化、省人化、効率化は必ず経営の中にテーマとしてはあるが、直近で荷物の急増に対して人手が足りなくて、配送(の現場)が困っているとか厳しい状態に置かれているとかいったところまでは至っていない」と強調。現状では配送能力に支障が出るような状況にないとの見解を示した。
その上で「データドリブンによる経営資源の最適配置で無駄を取っていくことは5合目まで行ったか行かないかというレベル。今後もしっかり取り組みながら利益水準を挙げていきたい」と意欲を見せた。
(藤原秀行)