【独自取材】アライプロバンス、千葉・浦安の物流施設は「工業団地の風景を更新する倉庫」目指す

【独自取材】アライプロバンス、千葉・浦安の物流施設は「工業団地の風景を更新する倉庫」目指す

自社開発第1号案件、著名デザイナーに依頼し外構部に庭園3種類整備へ

総合不動産事業に参入したアライプロバンスは、千葉県浦安市の浦安鉄鋼団地内で手掛けている初の自社開発物流施設「浦安市港物流センター(仮称)」で差別化の一環として、従業員が働きやすい環境の実現に注力している。

外構部に自然を模した独自の庭園を整備、リラックスできる空間に仕上げる計画だ。デザインは著名なデザイナー・建築家の菅原大輔氏に依頼済み。アライプロバンスの新井太郎専務は「ありきたりのものではなく、施設で働く方々に喜んでいただける環境を整えるのが当社の使命」と狙いを説明。「工業団地の風景を更新する物流倉庫」を目指し、優れたデザインを持つ製品や建築物などに贈られるグッドデザイン賞の獲得につなげたい考えだ。


「浦安市港物流センター(仮称)」の完成イメージ(アライプロバンス提供)

「物語る風景」のコンセプト実現なるか

アライプロバンスが開発を進めているマルチテナント型物流施設「浦安市港物流センター(仮称)」は、同社前身の新井鉄工所時代の旧工場跡地に建設。地上4階建ての鉄骨造で延べ床面積は3万4567平方メートル。施設前の道路は幅約22メートルを備えており、大型トレーラーも出入りが可能。最大4社が入居可能な設計を採用し、今年10月末の竣工を見込む。

位置している浦安鉄鋼団地は東京ディズニーリゾートにほど近く、鉄鋼業界に関連する企業が多く集結、日本最大の鉄鋼流通基地となっている。産業団地だけに自然に触れる機会を確保するのが容易ではないため、アライプロバンスは開発計画立案の段階から物流施設で働く人たちが息抜きできるスペースを設けようとこだわってきた。

現状では、庭園は「道の庭」「四季の庭」「海の庭」の3種類を造ることを想定。風景にアクセントを持たせ、何回訪れても飽きずにくつろげる空間にしたいと考えている。

菅原氏は2003年に一級建築士の資格を取得。世界3大デザイン賞の1つに位置付けられている「iF Design Award」など、国内外で30以上の受賞歴を誇る。建築物の設計は商業店舗やオフィス、東日本大震災後の仮設住宅団地など多岐にわたり、地域振興や災害復興にも積極的に携わっている。

菅原氏が運営している建築事務所のウェブサイトでは、設計に臨む考え方として「お客様と社会にワクワクして頂ける『物語る風景』をご提案し、様々な人々が集う公共性や、商業の持続的な収益性、心安らぐ住み心地を確実に実現いたします」などと説明。浦安の物流施設に関しても「工業団地の風景を更新する物流倉庫」を打ち出しており、菅原氏が取り組んできた「物語る風景」がどのような形で実現されるかが非常に注目される。

併せて、従業員の通勤の利便性に配慮し、物流施設前に停留所がある路線バスの待合所の設計・監理も菅原氏の事務所が担当している。

グッドデザイン賞は、20年度には塚腰運送(京都市)が埼玉県所沢市で構えている物流倉庫「所沢倉庫」の設計を担当したデザイン経営研究舎(東京都中央区銀座)が受賞するなど、これまでにも物流関係の建築物や製品が獲得している。賃貸型物流施設は大量供給が続き、デベロッパーが新たな付加価値を提供しようと展望フロアや公園の設置など、リラックスできる設備を導入する動きが広がっている。アライプロバンスの試みは、そうした潮流をさらに加速させる可能性がある。

(藤原秀行)

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