【独自取材,動画】オリックス、物流ロボット普及の“先駆者”目指す

【独自取材,動画】オリックス、物流ロボット普及の“先駆者”目指す

自社の施設入居企業に6カ月間無償貸与

 オリックスは今年5月、物流ロボットなどのマテハン機器を自社の物流施設に入居しているテナント企業へ6カ月間無償で貸し出すことを発表した。グループで産業用ロボットレンタルを手掛けるオリックス・レンテックと連携し、7メーカーの8機種を準備。案件獲得へ交渉を続けている。

 今年2月に完成した埼玉県蓮田市の「蓮田Ⅰロジスティクスセンター」など5カ所を対象としており、順次拡大していく予定だ。


ロボット活用のイメージ(オリックス提供)

 物流業界の人手不足が深刻化しているのに伴い、物流施設のデベロッパーも施設賃貸からより踏み込んだ対応が求められている。既に人手を集めやすい好立地に施設を開発したり、カフェやレストラン、託児所などを充実させたりといった取り組みがほぼ標準化している。

 オリックスは差別化を図るため、さらにロボット導入を直接的に支援するところまで踏み込んだ。同業他社からは驚きの声が漏れるが、同社は単にレンタルだけではなく、オペレーションの実態を基に各機器の有効な活用方法をアドバイスするなど、パッケージでテナント企業の省力化・省人化を支える構えだ。物流ロボット普及の“先駆者”を目指した過去に例のない取り組みはこれからも続く。

初期のシステム構築費も負担

 オリックスは2002年から物流施設開発を手掛け、これまでに三大都市圏で40件の実績を持つ(今年10月時点)。年間4~5件の開発用地取得を目指している。

 一方、オリックス・レンテックは計測器やIT機器のレンタルを40年以上継続し、16年には新たにロボットレンタル事業「RoboRen」もスタート。製造拠点や物流現場への納入実績を積み重ねている。

 両社が連携することで、単なる物流ロボットのレンタルにとどまらず、導入する機器の潜在能力を最大限引き出せる方法をアドバイスしたり、導入効果のシミュレーションに応じたりと、よりテナント企業の実情に合ったサポートを可能にする狙いがある。初期のシステム構築費なども負担するという。

 一見するとオリックスサイドの“大盤振る舞い”のようにも思えるが、オリックスの小山幸男物流事業部長は「現実問題としてロボットを導入するまでにはシステム構築を含めた初期投資負担の大きさなど、依然さまざまな障害がある。一般的に物流施設を借りる契約期間よりも荷主企業からの物流業務受託契約の期間の方が短い中では、問題意識を持ち資金力も備えている荷主企業であれば自前でロボットを導入できるが、物流企業では1億円も2億円も投じて導入できるかというとなかなか厳しい」と指摘。

 その上で、「中業企業も含めて利用を広めていくには3~5年後を見据え、今からデベロッパーとして先行投資していくべきだと判断した」と中長期的な戦略としての意義を強調する。

 さらに、「仮に賃料を坪当たり3800円とした場合、物流ロボット活用で人件費を3割抑えると坪当たり200円くらいの価値がある。つまり、テナント企業にとっては3800円で物流施設を借りてもランニングコストが3600円で運用できるのと同じということを意味している。省力化をサポートできると物流施設の不動産としての価値も変わってくる」との見方を示す。


「フリーレンタル」の意義を説く小山部長(今年3月撮影)

見学会に200人が来場、高い関心

 同社は今年8月、完成したばかりの物流施設「厚木Ⅱロジスティクスセンター」(神奈川県厚木市)で開催した内覧会で、フリーレンタル対象のロボットなどが実際に稼働しているところをお披露目する見学会を併せて開催。大型の搬送ロボットがセンターの床を自在に動いたり、運搬ロボットが人の後を追従して進んだりする姿を公開した。


見学会でセンター内を動く日本電産シンポ製の自動搬送ロボット「S-CART100」(今年8月撮影)

見学会で展示されたギークプラス製のAI(人工知能)搭載自動搬送ロボット「EVE」(今年8月撮影)

ロボット見学会を行った「厚木Ⅱロジスティクスセンター」(今年8月撮影)

見学会に登場した日本電産シンポ製の自動搬送ロボット「S-CART100」(今年8月
撮影)


見学会でお披露目されたオムロン製の自動搬送ロボット「LD-90」(今年8月撮影)

見学会で流されたギークプラス製のAI(人工知能)搭載自動搬送ロボット「EVE」のデモ映像(今年8月撮影)

 小山部長は「約70社から200人程度の方が来られた。そもそも物流施設の内覧会でそこまで多くの方がいらっしゃることが通常ないので、関心の高さに驚いている」と明かす。荷主企業や物流企業が人手不足に大きな危機感を抱いているものの、まだ活路を見いだせていない姿を象徴しているかのようだ。

 同社は顧客満足度を上げるだけではなく、自社にとっても将来大きなメリットになると見込む。つまり、実際の現場でロボットを稼働させたデータを収集することで、導入した場合の生産性向上効果など貴重なデータを蓄積。今後のロボット展開支援の上で強みになると考えている。

 「今から始めないと間に合わない。スピード感を持って取り組みたい」と語る小山部長。デベロッパーとして物流業界に投じた物流ロボット普及策の石が、どれだけ連携の輪を広げられるか、引き続き関係者の注目を集めそうだ。


6カ月間無料レンタルの対象機器(オリックスのプレスリリースより)※クリックで拡大

(藤原秀行)

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