CBRE調査、「需給バランスが大きく緩む可能性は低い」と展望
シービーアールイー(CBRE)は7月30日、今年4~6月期の大規模マルチテナント型物流施設の賃貸市場動向に関する調査結果を公表した。
首都圏は平均空室率が前期(1~3月)比0・4ポイント上昇の1・5%で、2四半期続けて前期から上がった。ただ、水準自体は依然低く、需要が旺盛なことからCBREは「需給バランスが大きく緩む可能性は低い」と展望している。実質賃料は1坪当たり4470円で、前期から0・2%(10円)上昇した。
CBREによれば、今期の新規供給は8棟、約18万坪で、四半期ベースとしては2004年の調査開始以来、4番目に多かった。大きく空室を残して竣工した物件がある一方、半分の4棟は満室で稼働。前期に空きスペースが残っていた物件も大規模テナントが決まったこともあり、今期の新規需要は約16万坪に達した。「今期もEC企業の大型契約が見られたが、需要の大勢を占めたのは物流企業による拡張や新規開設で、1棟借りも複数あった」(CBRE)。向こう2四半期に新規供給される予定の物件では6割近くの面積で入居テナントが内定しているという。
賃料については、開発計画で再評価された地域や相対的に割安感のある物件では上昇傾向が持続していると指摘。半面、この1~2年間の賃料上昇にブレーキが掛かった物件もあった。CBREは「豊富な新規供給により物件の選択肢が増加している中で、立地やスペックに見合わない賃料設定の物件はリーシングが長期化する可能性がある」と予想している。
調査対象は首都圏1都3県を中心とする地域で延べ床面積が1万坪以上の195棟。
首都圏の需給バランス(CBRE資料より引用)
圏央道、相対的な賃料の低さで物流企業が好感
首都圏の主要な4エリア別の概要は以下の通り。
▼東京ベイエリア
空室率は0・9%で前期から横ばい。新規供給はなく、全体的にテナントの動きは少なかった。需給バランスが逼迫している状況自体に変化はなく、実質賃料は0・4%上昇の7470円となった。
▼外環道エリア
空室率は0・3ポイント下がって1・3%。今期竣工した物件はなかったが、既存物件の空室解消が進んだ。実質賃料は0・4%上昇の5200円。「賃料水準に割安感があった埼玉県内のエリアで開発計画が出てきたことにより、立地の再評価が進み、周辺相場に近づく形で上昇しつつある」(CBRE)。
▼国道16号エリア
空室率は前期まで2四半期続けて0・0%だったが、今期は1・8%に上がった。新規供給は四半期ベースで調査を始めて以降最大の6棟、約15万坪だったのに対し、新規需要も歴代2位の10万坪超。今期に完成した物件のうち、空室が残ったのは4棟。「テナントの動きはコロナ前のペースに戻りつつあり、立地やスペックで劣る物件は引き合いが若干鈍っている」(CBRE)。実質賃料は0・7%アップの4460円。埼玉、神奈川の両県は複数の地域で賃料上昇が見られた一方、千葉県はほぼ横ばい。
▼圏央道エリア
空室率は2・4ポイント下がって0・7%。今期竣工した2棟はいずれも満床で、前期の空室を残して竣工した物件もテナントが決まったことが主因。実質賃料は0・3%上昇し3590円。「他の3エリアで供給される物件の募集賃料がますます上昇する中、賃料水準が相対的に低いこのエリアはテナントにとって魅力であり、特に物流企業に好感されている」(CBRE)。
(藤原秀行)