JR貨物の運転再開で沈静化も“強い鉄道”求める声
物流業界筋の情報を総合すると、今夏の豪雨や相次ぐ大型台風の上陸によって逼迫していた西日本地区のトラック需給バランスは11月いっぱいで収束したもようだ。
土砂崩れなどから不通となっていたJR貨物山陽線が10月13日付で運転を再開。これに伴い代替輸送に仕向けられていたトラックの多くが通常運行に戻り、現在は年末の繁忙期に備えているとみられる。
JR貨物の公表では自然災害の多発により7月5日~10月12日までの100日間、延べ4421本(コンテナ 4359 本、車扱 62 本)の貨物列車が運休を余儀なくされた。九州地区から首都圏への農畜産物、大阪以西の工業製品など幅広い分野・地域で輸送が滞留。緊急措置としてトラックやフェリーによる代替輸送、迂回ルートの運行が取られたものの現場は混乱した。
物流業界からは“九州向けのトラックが手配できない”“西日本向けの路線便で残貨発生”などの声が聞かれたほか、あるメーカー関係者は「リードタイムが5日ほど延びたこともあった。今回は自然災害なので致し方ないことだが、通常時も含めて鉄道の納期面に関する脆弱性は否めない」と指摘する。国土交通省「国土交通月例経済」でもこの間の鉄道輸送量は前年同月比で2桁減と大きく落ち込み、JR貨物の2018年9月中間期決算にも影響を与えた。
大手物流企業の関係者は避けることができない自然災害に対して理解を示す一方、「鉄道インフラの強化は物理的・技術的な面から限界があると思うが、大量輸送やモーダルシフトの担い手ともいえる鉄道にはもう少し強くなってもらいたい」と切望。
また別の物流業界関係者は「例えば専用列車以外は目的地の貨物ターミナル駅まで載せ替えができない運行システムを弾力化して、自然災害などの状況に応じて途中でトラック輸送に切り替えられるような機動的なオペレーションができないだろうか」と提起する。
自然災害はやむを得ない事情でJR貨物に否があるわけではない。また年末の荷量増加とトラックドライバー不足を踏まえ、12月に延べ60本の貨物列車を追加運行するなど輸送力の維持・確保に積極的な姿勢を見せている。
物流企業、メーカーなどがトラックドライバー不足対策や働き方改革推進で鉄道輸送に期待するところは大きいだけに、今後も“災害に強い鉄道”の構築に向けた議論・取り組みが継続していくことが求められよう。
(鳥羽俊一)