楽天JPロジ・向井氏、まず地方エリアで実現後に都市部で展開と予測
楽天グループと日本郵便の合弁会社、JP楽天ロジスティクスの向井秀明ドローン・UGV事業部ジェネラルマネージャーは1月11日、千葉県で実施したドローン配送実証実験に関するオンラインのメディア向け説明会で、都市部のドローン配送について、まず離島や中山間地など人口が少ないエリアでサービスを確立した上で実現していくと展望した。
また、「配送中は完全に無人で、勝手に飛んで荷物を運んでくれる。少子高齢化やトラックドライバー不足といった社会課題を解決できるような、本当に必要な社会インフラになる」と指摘。災害時の救援物資をドローンで被災地へ運ぶことに関しても実現に強い意欲を見せた。
実験の様子(プレスリリースより引用)
実験は昨年12月に実施。千葉県市川市の物流施設から、千葉市内の超高層マンション屋上へ片道約12キロメートルを17分で飛行し、救急箱や医薬品などを無事届けた。
向井氏は、実験が災害時を想定して行ったものと説明。「特に災害時は地上の物流網、道路が混雑すると思うが、高層マンションへ空から救援物資をしっかり届けられる新たな物流手段の確保を実証できた」と意義を強調した。
政府は2022年度中をめどに人口が多い都市部上空でドローンが目視外の自律飛行をする「レベル4」を解禁する準備を進めていることに言及。「都市部におけるドローン配送も近い将来実現できるのではないか。レベル4を実現する上で必要なピースが全てそろった暁には、間違いなく地上を(トラックが)走るよりも空を飛ばした方がメリットのあるシーンは多々あると思っている」と語り、同社としても着実に対応を進めていく姿勢を強調した。
同社として、都市部でドローン配送サービスを開始するめどについては「ユースケースを慎重に選んで、事業性が出るものから順番に社会実装していきたい。まずは過疎地でのドローン配送を実用化し、当たり前のものになって実績もたまり、安全性も十分になったなということが証明できて、その次のタイミングで都市部、と考えている」と説明。
「技術の進歩や社会受容性の向上がどれぐらいのスピードで進むかはちょっと読めないところがある。(取り組みは)より加速していきたい」と述べ、具体的な実現目標の時期への言及は避けた。
災害時の活用に関しては、ドローンを物資輸送などに投入することを平常時に自治体が決定できるよう議論を深めていきたいとの考えを示した。
今回の実証実験のような屋上への配送から、より踏み込んで高層マンションの各住戸のベランダに直接荷物を届ける可能性について質問が出たのに対し、向井氏は「現時点ではドローンがベランダに荷物を直接置いていくための術はなく、まずは屋上に荷物を置くところを成功させたというのが今の時点。今後もベランダに届けるのがよいのか、屋上に荷物を置いてから屋内を走るロボットなどに積み替えて運ぶのがいいのかといった点は、この次のフェーズの議論になってくると考えている」と解説した。
向井氏(2019年撮影)
(藤原秀行)