【独自】ドローンなど活用した地方の物流網、22年度中に全国展開加速目指す

【独自】ドローンなど活用した地方の物流網、22年度中に全国展開加速目指す

セイノーHDとエアロネクスト幹部、「デジタル田園都市国家構想」が追い風と期待

ドローンなどの技術を既存の物流網と組み合わせて地方の物流基盤維持を図る「SkyHub(スカイハブ)」の実用化に取り組んでいるセイノーホールディングス(HD)の河合秀治執行役員事業推進部ラストワンマイル推進チーム担当とエアロネクストの田路圭輔代表取締役CEO(最高経営責任者)は2月11日、千葉県勝浦市で実施したドローン物流の実証実験後、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。

両氏はSkyHubによるドローン物流について、2022年度中に全国の複数箇所で本格的に運用できるよう取り組みを加速していく方針を表明。3年程度で全国展開の目鼻を付けたいとしてきた従来の目標を前倒しすることに強い意欲を見せた。

また、岸田文雄首相が公約に掲げている、デジタル技術を活用して地域活性化を図る「デジタル田園都市国家構想」がSkyHubを進める上で強い追い風になると歓迎した。

併せて、新たに実証実験へ参加した住友商事の多々良一郎航空事業開発部長は、長年蓄積してきた航空事業の知見や経験を生かし、ドローン物流の実現に貢献したいとの考えを示した。


勝浦市でのドローン配送の様子


実験に際し、勝浦市役所でエアロネクスト製の物流専用ドローンを前に、撮影に応じる(左から)セイノーHD・河合秀治執行役員、勝浦市・土屋元市長、勝浦商工会・小髙伸太会長、エアロネクスト・田路圭輔CEO、住友商事・多々良一郎 航空事業開発部長

医薬品配送なども視野

セイノーHDとエアロネクストは21年1月、ドローンを活用した物流の事業化へ業務提携。これまでに山梨県小菅村でSkyHubの仕組みを使ったドローンの定期配送などを進めているほか、北海道上士幌町や福井県敦賀市でもドローン配送の実証実験を行っている。

河合氏は「もともと(SkyHubを)進めていく方向だったが、政府も方針としてデジタル田園都市国家構想を打ち出され、実現へスピードを上げられるということなので、われわれとしてもスピードを上げていきたい」と説明。

22年度が現行の中期経営計画の最終年度となることも踏まえ「来期(22年度)である程度(SkyHubのドローン物流に)形を付けたい。そのためにも各地域でたくさん(実証実験を)やっていきたい。(全国展開の目鼻を付けるのは)3年と言わず、もう少し早いタイミングに軸足を置きたい」と語った。

勝浦市でのSkuHub展開に関しては、地元自治体など関係者と今後、実用化に向けて取り組みを継続するかどうか検討を本格化するとの見通しを示した上で「もし前向きに進めるということになれば、医薬品の配送なども対象に加えていく方向になるのではないか」と展望した。

田路氏は勝浦市について「ある程度の人口があって経済基盤も整っており、別荘地があって観光客も来られる一方、過疎や高齢化の問題を抱えている。東京から近く、海や山の自然環境が備わっているのも魅力的。ドローン物流に関しても多様なニーズを掘り起こせると思う」と分析。小菅村などと異なる新たなドローン物流の適用例として、お寺や民泊施設への配送にも使える可能性があると持論を語った。

今後のSkyHubに関しては「全国の自治体の方々からお話がたくさん来ている。実証はある程度できてきたので、今後は形を作って横展開していくことが大事。この1年で(全国展開に向けた)環境を整備できるのではないか」と自信をのぞかせた。

多々良氏は勝浦市の実証実験を踏まえ「当然まだまだなところもあるが、可能性は感じられる。勝浦という場所はいろんな需要がありそうなので今後検討していきたい」と強調。将来の「空飛ぶクルマ」実用化にもつなげていきたいとの意気込みを述べた。


物流専用ドローンは機体が傾いて飛行するが搭載した荷物は平行を保てると実演してみせる田路氏と河合氏

(藤原秀行)

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