日野自動車・小木曽社長、排ガス不正問題車種の出荷再開時期「まだ明確ではない」

日野自動車・小木曽社長、排ガス不正問題車種の出荷再開時期「まだ明確ではない」

オンライン決算説明会で説明、今夏の小型EVトラック発売は慎重に作業進める方針表明

日野自動車は4月27日、2022年3月期の連結決算説明会をオンラインで開催した。

小木曽聡社長は冒頭、トラック・バス用エンジンの排ガスや燃費に関するデータを不正に改ざん、国に報告していた問題について「お客様、ステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑をお掛けしたことをあらためて深くおわび申し上げる」と謝罪。

その上で、生産に必要な国の認証試験・申請を担う機能を開発部門から独立させることや、コンプライアンス(法令順守)専任取締役と技術面のコンプライアンス責任者を任命して厳重に管理することなどを進めていく方針を表明。「(国から不正を受け、大量生産に必要な)型式認証の取り消しという過去に例のない行政処分を受けたことを重く受け止め、再発防止策の徹底に努めていきたい」と強調した。

同時に、燃費を改ざんしていたことに伴い、環境負荷が小さい車両を対象とした税制優遇を取り消される分の補填を同社が全額負担するなど、トラック・バスユーザーへの影響を最小限にとどめるよう取り組む姿勢を示した。

一方、不正問題の発覚に伴う社会の混乱に伴い、今年夏に発売を予定している、物流のラストワンマイル配送向けの小型EV(電気自動車)トラック「日野デュトロ Z(ズィー)EV」の市場投入が遅れる可能性について「大きな変更がないよう、お客様にご迷惑をお掛けしないよう進めていく計画だが、慎重に認可に向けて進めていこうとしている」と発言。

不正問題で環境負荷低減への取り組みに関する信用が大きく低下している現状に対しては「販売店の協力をいただきながら、1人1人のお客様により丁寧に向き合っていく」と話した。


オンライン説明会の冒頭に謝罪する小木曽社長(中央)ら幹部(説明会画面をキャプチャー)

特別調査委員会の全容解明、完了時期「分からない」

22年3月期の連結業績は、不正行為発覚に伴う関連損失が400億円に上ったことなどから当期純損益が847億円の赤字に陥った。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた前期(21年3月期)の75億円から赤字幅が大きく拡大、同社としては過去最大の赤字幅を記録した。北米向けの商用車に用いるエンジンが米国の排ガス試験の認証を受けられなかったのを受けた損失が膨らんだことも収益の足を引っ張った。

小木曽社長は、23年3月期の業績予想に関しては、不正行為を受けて国が当該エンジンの型式指定と燃費評価を取り消したことに伴い、トラックやバスの一部車種の生産・出荷ストップに追い込まれていることを受け、開示を見送ると説明。「出荷再開の時期はまだ明確になっていない」と語った。

外部の有識者による特別調査委員会が進めている、不正行為をめぐる全容解明の調査がいつごろ終わるかと尋ねられたのに対し、小木曽社長は「弊社とは独立した外部有識者の方々が客観的に調査されているのでわれわれが(期限などスケジュールを)指定できるものではないし、日程をシェアできるわけでもないので分からない」と解説。6月の定時株主総会までに結論が出るかどうかに関しても言及を避けた。

また、6月に退任する予定の下義生会長について、今回の不正問題の引責との見方を明確に否定した。しかし、同時に、下会長から自身の再任議案を定時株主総会に提出することは株主の理解が得られないとして退任の申し出を受けていたと説明しており、不正問題が会長人事に影響したことについては認めた格好だ。

下会長が退任した後、不正問題の責任を問われることはないのかとの質問に対しては「現役の取締役を外れたからといって(責任追及の)対象から外れるということではない」との見解を表明した。

(藤原秀行)

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