インテージ調査、他の商品へシフトも
インテージホールディングス傘下で市場調査を手掛けるインテージは6月27日、全国約6000店舗から収集している小売店販売データ「SRI+」(全国小売店パネル調査)を基に、店頭販売価格の値上げ状況に関する調査結果を取りまとめた。
2021年の中頃から見えてきた値上げは、今年5月に入って拡大の様相を見せており、一部の高騰商品は消費者が購入を回避する動きも出ていることが判明。値上げの動きが出始める前の2020年平均に比べ、5月はキャノーラ油(150%)、サラダ油(128%)、マヨネーズ(120%)、醤油(111%)、砂糖(110%)など調味料にも値上げが広がっていることが明らかになった。
また、レギュラーコーヒー(116%)、スナック菓子(106%)と嗜好品も値上がりしているほか、日用雑貨にも値上げの予兆が見られることが分かった。
図表1
(データは2021年5月から2022年5月にかけて収集。平均価格は2020年水準と比較した。食パンは1斤当たりの個数単価、その他は容量単価を採用した。20年比105%以上を赤字で表示した)
値上げしているキャノーラ油は、今年5月には前年同月と比べて、販売容量が74%と4分の3ほどに減少(図表2)。やや値上がりが緩やかなサラダ油は145%と大きく数字を伸ばし、価格が高いものの体に良い機能を前面に押し出しているこめ油も、昨年5月から130%以上と好調を維持している。
インテージは「比較的安価で価格の優位性があったキャノーラ油が値上がりした際、どうせお金を多く払うなら、と一部の人たちは健康訴求しているものなどにシフトしている姿が見て取れる」と分析している。
過去にはアルコールでも酒税の変更でビールが値下がり、発泡酒が値上がりした時に価格が少し高くてもビールにシフトした人たちが見られたという。インテージは価格の変化は売り上げに影響を与えることは多いとみている。
図表2
(データは2021年5月~2022年5月に集計。指標は1キログラム当たりの税別平均価格、前年比・販売容量。前年比105%以上を赤字で表示した)
調味料の他にも輸入小麦の値上がりなどが響き、小麦粉(109%)、食パン(107%)、スパゲッティ(108%)の値上がりが継続。レギュラーコーヒー(116%)、スナック菓子(106%)と嗜好品も店頭価格は上昇。畜肉ソーセージ(103%)や豆乳(104%)も値上げの動きが見え始めたという。インテージは「主食からおやつまで広範囲で食卓は圧迫されてきているようだ」との見方を示した。
生活雑貨ではシャンプー、ヘアーリンス、歯磨き粉なども店頭価格は上昇しており(図表3)、新型コロナウイルス感染症拡大による在宅時間の充実やセルフケア需要の高まりなどで、高価格帯のものが売れていることが主因という。トイレットペーパーは通常タイプより1巻が長い長尺タイプが売れたことによる値上げが背景にあるが、「同じ製品内でも一部で価格が上がり始めるなど、価格上昇の足音が聞こえ始めている」(インテージ)。
生活雑貨は4月にメーカーの値上げ表明が相次いでおり、インテージは今後も原材料高と世界的なサプライチェーンの混乱などが続く可能性が高いことを考慮すると、さらなる値上げの広がりも予想されるとみている。
図表3
2021年5月~2022年5月、指標:平均価格・2020年比較。歯磨き粉・歯ブラシ・子供用紙おむつ・ティッシュペーパー・トイレットペーパーは個数単価、そのほかは容量単価で2020年の平均価格と比較した。ティッシュペーパーはボックスタイプで保湿除く、20年比105%以上を赤字で表示した)
「SRI+」はスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6000店舗から継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データ。統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開していない。
(藤原秀行)