フェリーや車利用時の半分程度に時間短縮、検査迅速化を期待
TerraDrone(テラドローン)は6月29日、ベルギーに本拠を置きドローンの運航管理技術開発を手掛けるグループ会社のユニフライが参加している、ドローンを活用したデンマークの医療品輸送プロジェクト「HealthDrone(ヘルスドローン)」で、約50キロメートルの長距離医療品輸送に成功したと発表した。
プロジェクトが成功すれば、従来の輸送時間を75分(フェリーや車による輸送時間)から40分へ大幅に短縮、患者に対する迅速な治療が可能になると見込んでいる。
実験は5月30日、デンマーク・スベンボーのオーデンセ大学病院からÆrø(エーロ)島間で行った。飛行高度は約80キロメートルで、血液や衣料品を搭載し、デンマーク初の医療用ドローン無線接続飛行の形態を取った。
プロジェクトのように、空域を制限せずにドローンを飛行させる事例は欧州では珍しいという。ユニフライはデンマーク運輸省傘下の国有企業Naviairやデンマーク交通局とともに、南デンマーク大学(SDU)で開発した、ヘリコプターや航空機を安全に回避する運航管理システムの技術を活用、プロジェクトに活用した。
Naviairの航空管制官はドローンの飛行が計画通りに行われているかはシステムの画面上で確認できるため、救助用ヘリコプターの飛行など万が一に備えてその場で航路の調整が可能。
従来、離島に住む住人が血液検査を実施する場合、病院で血液サンプルを分析するために住人自らが血液サンプルをフェリーと自動車を使って持参する必要があった。今後は医療用ドローンを使うことで住人が病院に出向かなくても血液サンプルを届けられるようになるため、住民の負荷軽減と検査の迅速化が実現すると見込む。
SDU(南デンマーク大学)社製ドローン(以下、いずれもTerraDrone提供)
今後は病院、研究所、医療センター、老人ホーム、在宅介護の間で、医薬品や機器の輸送を実施する予定。デンマーク政府の新しい医療制度改革に伴い、プロジェクトを離島や病院から遠方の地域にも拡充し、より多くの患者へ本サービスを届けることを目指す。
HealthDroneのフライトで使用したUniflyの運航管理(UTM)システム
プロジェクトでユニフライは米国で特許取得済みのドローンを安全に飛行するために必要不可欠となる運航管理を提供。この技術は欧米8カ国で導入実績がある。
(藤原秀行)