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【独自取材・特別連載】始動!「商社物流4・0」 三菱商事が挑む大変革④(完)

【独自取材・特別連載】始動!「商社物流4・0」 三菱商事が挑む大変革④(完)

常に最適な運び方を選ぶ「輸配送MaaS」の担い手になる

日本を代表する総合商社の一角を占める三菱商事は、社会のインフラと認識されながら人手不足などの課題が山積し、事業継続にも黄信号が灯っている物流業界を変革するため、倉庫から輸配送に至る全過程をデジタル化・機械化するDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に動き出した。

目指すべき未来として掲げているのが、総合商社が多角的に物流基盤を再構築していくことで物を運ぶ側も受け取る消費者も笑顔になれる次世代の姿「商社物流4・0」だ。新型コロナウイルスの感染拡大で物流の重要性がますます増している中、同社の大胆な構想からは目が離せそうにない。ロジビズ・オンラインは同社の取り組みを全4回にわたって報告している。

最終回となる第4回は、輸配送でDXを果たすことで三菱商事自体が業界を下支えするプラットフォーム的存在となり、その時々で最適な輸配送手段を荷主企業や物流事業者に提供する「輸配送MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」構想の姿を紹介する。

過去の連載記事:
第1回 倉庫から輸配送でDX、全体最適を実現
第2回 必要な時に必要なだけロボット、「RaaS」が人手不足の救世主に
第3回 ローソンの配送網で「静脈物流」を効率化する

混載便の荷物組み合わせを自動で完了

輸配送の分野はトラックドライバーの不足や積載効率の悪化など、かねて問題が多く存在している。現場では輸配送のオーダーがいまだに電話やファクスで広くやり取りされるなど、デジタル化が大きく遅れていることも頻繁に指摘されている深刻な課題だ。

そうした山積する問題の解として、三菱商事はリアルアセット・ネットワークと先進技術を駆使し、多種多様な荷主企業や物流事業者らと結び付き、時々刻々と変わるニーズに合わせて配送車両などを最適なものへ柔軟に修正、紹介する「フレキシブルなデジタル輸配送事業」実現との将来像を描いている。

まさに三菱商事が荷主からの依頼を受けて実運送事業者に貨物の輸送をオーダーする「利用貨物運送事業者」のポジションに就き、多くのステークホルダーの希望をマッチングし、オープンなシェアリングを実現する「プラットフォーム」を運用するイメージだ。

同社食品流通・物流本部の野田眞紀子物流開発部輸配送DXプロジェクトマネージャーは、壮大な構想に至った背景として「BtoBかラストワンマイルか、バルクか小ロットか、長距離かエリア配送か、ドライかチルドかフローズンか、といったさまざまな要素ごとに特定の内容にとらわれず、ニーズに応じてその都度最適な輸送モードを提供することが輸配送DXを進める上で非常に重要と思い至った。さまざまな分野の方々と普段からお付き合いがある総合商社の強みを生かすことができる」と解説する。

例えば運ぶ貨物の物量などを踏まえ、三菱商事が調整役的な存在となって2トントラックや4トントラック、軽貨物、バイクといった輸送モードの中から最適なものを選択し、車組みや配車までサポートすることを想定。トラックが複数の荷主を回る場合は自動的に最適な貨物を組み合わせ、混載便に仕立てることまでを視野に入れている。

現状では、まず個々の荷主企業などの案件ごとに輸配送のデジタル化をサポートして実績を積み重ねることを志向。いずれは同社とNTTが出資しているオランダのデジタル地図大手HERE Technologies(ヒアテクノロジーズ) のような有力技術を持つ企業とのシナジーも追及し、多くの荷主企業や輸送事業者らが参加する一大プラットフォームの運営を三菱商事が受託していくとの道筋を念頭に置いているようだ。

スタートアップの技術やノウハウに熱視線

輸配送MaaSの実現に向けた環境整備で大きな役割を担うと三菱商事が熱い視線を送るのが、求貨求車・配車管理サービス「ハコベル」を展開するラクスルだ。既に基本協定書を締結し、共同事業のサービス開始を目指している。ラクスルは単なる貨物とトラックのマッチングにとどまらず、物流事業者や荷主企業の輸配送業務のデジタル化にまで踏み込んでサポートし、成果も挙げている。三菱商事としてはそうしたノウハウを生かしたいとの思いが強くありそうだ。

加えて、10年に発足した、食品スーパー支援事業を手掛けるベクトルワン(大阪市)も輸配送MaaSを機能させる上で貴重なプレーヤーと見込んでいる。同社は食品といった商品を各家庭に届ける際の最適経路計算システムの構築も担うなど、物流面で独自性を発揮しており、三菱商事が出資している。ベクトルワンとタッグを組むことで、ネットスーパー向けの輸配送を提供する際に最適の経路を組んで複数箇所へ効率的に配送できるようになると期待している。

今後は前述のスタートアップ企業2社以外にも適宜、連携する相手を募っていく見通しだ。野田氏は「現状ではまだ、輸配送DXはだいぶ先の未来予想図という感じで、具体化はこれから。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大でECの利用が急増するなど、物流に求められるものも変わってきているだけに、ポストコロナ、ウイズコロナを見据え、どんな変化にも対応できるプラットフォームを構築することには大きな意義がある」と力を込める。

20年度は将来のプラットフォーム構築のための足腰を鍛える意味で、全国の荷主企業や物流事業者と対話を重ねてデジタル化実現のプロジェクトを展開していくことを目指している。


ベクトルワンはライフコーポレーションと提携し宅配業務を支援(セイノーホールディングスプレスリリースより引用)

(藤原秀行)

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