長距離自律飛行、位置情報サービス使い想定場所へ正確な着陸も
ドローン開発などを手掛けるスタートアップの空解とNTTドコモは6月29日、沖縄で約40キロメートル離れた離島へのドローンによる救援物資などの運搬実証実験に成功したと発表した。
ドコモの「docomo IoT 高精度GNSS位置情報サービス」を活用し、あらかじめ設定した着陸地点に対して正確に着陸できた。
実験は6月22日に実施。沖縄県豊見城市のオリオンECO美らSUNビーチ普通から、沖合の座間味村古座間味ビーチまで約40.81キロメートルを33分47秒かけて飛行し、医薬品や食品、飲料などを届けた。
投入した機体は空解が手掛ける電動VTOL(垂直離着陸機)固定翼ドローン「QUKAI FUSION 2.0」で、全長1.475メートル、全幅2.1メートル、機体重量は2.5キログラム。ペイロード(貨物最大積載重量)も2.5キログラムで、最大航続距離120キロメートル、最高速度は時速120キロメートルの性能を有している。
飛行中の「QUKAI FUSION 2.0」
ドローンの自律飛行は、長距離をいかに高精度で飛行できるかが重要なポイントとなる。自律飛行の際は、あらかじめGPSなどの衛星測位を利用してドローンの位置と目的地の座標、高度などの情報を取得し、位置情報と地図を組み合わせて飛行ルートをプログラミングする。
しかし、従来のGPSの単独測位では位置の誤差が数メートル程度発生することがあり、周りとの十分な距離と着陸スペースの確保が必要だった。また、海上や着陸時の気流の変化が激しい場所では高度の誤差が数十メートルに達することもあり、自律飛行による正確な着陸は状況にとっては非常に困難。さらに、マルチコプター型のドローンは最長30分程度しか飛行できないため長距離飛行は難しく、海上飛行が必須となる離島への物資配送はハードルが高いとされてきた。
座間味村は沖縄本島から北西に約40キロメートル離れた離島で、交通手段は1日3便の航路のみ。村内に病院はなく診療所しかない。実験は災害や病気などの緊急時における座間味村の住民の不安解消を目的とした緊急必需品の配送や将来的な飲料・食料などの生活物資配送を想定。約40キロメートルの距離は離島への電動ドローン物資輸送としては国内最長距離という。
「QUKAI FUSION®︎ 2.0」は固定翼で飛行機のような形をしているものの、離着陸は垂直上昇、垂直下降が行える電動VTOLドローン。回転翼機のマルチコプター型ドローンのように滑走路なしでどこでも離着陸できる上に、マルチコプター型ドローンの課題であった飛行距離(通常4~10キロメートル程度)を大幅に改善しており、特殊FRP構造で高剛性も確保。飛行の安定性を向上させることに成功している。
実験では「QUKAI FUSION 2.0」に搭載したGNSS受信機へ高精度GNSSの位置補正情報をリアルタイム配信することで、1秒ごとに数センチメートルの誤差内の高精度測位が可能となり、あらかじめ設定した着陸ポイントに対し、海風の影響の中、自動で正確に着陸することができた。
高精度な着陸が可能なため、離着陸の際に長い滑走路や広いスペースなどを確保する必要がなく、物資などを安全に運べることも実証できた。
座間味村 古座間味ビーチに正確に着陸した様子
空解とドコモは離島の物流確保へドローンを活用できる余地が大きいと期待。さらに、政府が今年12月に都市部上空で補助者を置かず目視外飛行できる「レベル4」を解禁する準備を進めており、ドローン物流のニーズが高まるとみられることからも、正確に着陸できるドローン物流を早期に実用化したい考えだ。
(藤原秀行)※写真は空解提供