製・配・販・輸送間で納品伝票の統一など実現
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は8月1日、ロジスティクス推進に向けて優れた実績を挙げた企業を表彰する「ロジスティクス大賞」に関し、2022年度はコープさっぽろの物流を担っている北海道ロジサービスと日本パレットレンタル(JPR)グループで伝票電子化などのサービスを手掛けているTSUNAGUTE(ツナグテ)の2社に授与すると発表した。
コープさっぽろに加工食品などを納入しているメーカー約400社、卸商8社、道内輸送事業者約20社を対象に、各社の物流情報をクラウド型共通システムで共有。納品伝票の統一、電子受領と製・配・販・輸送の関係者への情報連携・可視化を達成した点を高く評価した。
各賞の受賞者と受賞理由の概要は以下の通り。表彰式と各賞受賞記念講演は9月22日開催の「ロジスティクス全国大会2022」で実施する。
(※同一賞複数受賞の場合は、受賞者名五十音順で掲載)
【ロジスティクス大賞】
会社名:北海道ロジサービス株式会社/株式会社TSUNAGUTE
テーマ:製・配・販・輸送をコネクティッド、日本初の滑らかな物流DXを実現
~コープさっぽろ納品関係者全ての連携~
受賞事由:
深刻な労働力不足に見舞われている物流業界にあって、DX化が促進されているものの、依然として数多くの非効率が存在している。とりわけ納品伝票に関してはほぼ手つかずの状態で、多くの現場は依然として紙であふれかえり、各社独自の様式で運用されていることも少なくない。このような問題意識の下、本取り組みではコープさっぽろに納品している加工食品、飲料、菓子メーカー約400社、卸商8社、道内輸送事業者約20社を対象に、物流情報連携の必要性と意義、達成手段などを1社1社丁寧に説明することから始め、これまで寸断されていた各社の物流情報をクラウド型共通システムを活用することで納品伝票の統一、電子受領と製・配・販・輸送の関係者への情報連携、可視化を非常に大きな規模で実現している。
400社超を巻き込んだ取り組み内容の規模やその成果に加え、問題解決に向けた努力面、また得られた成果がもたらす経営面、社会面の革新度、波及効果などが高く評価された。
【ロジスティクス準大賞】
会社名:株式会社日立物流
テーマ:メディカル物流におけるオートメーションの新たな形
~7社協創で挑んだ、日本初完全無人ケース仕分けシステムの開発~
受賞事由:
医薬品を取り扱う物流センターでは、コロナ過においても現場を止めることはできず、労働集約型で人に依存する従来の物流業務では感染症リスクを低減するにも限界がある。また、近年の就労人口減少により現場での人員確保は年々困難を増している。
このような背景の下、本取り組みでは7社共同で①無人化②作業柔軟性③設備柔軟性④シェアリング――といった4つのコンセプトを柱とし、ロボットとAGVを中心とした省人化システム設計を実施している。また、複数のメーカー・設備を組み合わせた最適運用を実現するための管理システムを新規に開発することで、ケース出荷作業におけるトータルピック以降の作業の完全無人化および自動化率80%を達成している。7社共同での取り組みといった規模を含めた経営面での革新度、ならびに完全無人化の実現などの技術面での革新度がともに高く評価された。
【ロジスティクス大賞 特別賞】
会社名:株式会社エーディエフ/株式会社合通ロジ
テーマ:組み立てが簡単な物流ボックスで積載率向上
~荷役作業とCO₂削減で人にも環境にも優しい物流を実現~
受賞事由:
消費行動の変化やEC市場の急成長など、物流の重要性が増す一方、労働力人口の減少による人手不足が深刻化している。その背景にはドライバーや作業者の高齢化や肉体労働などの作業負担の大きさを理由とする離職率の高さなどが挙げられる。また、事業を通して環境への配慮、社会課題の解決への対応が求められる中、CO2排出量の削減は長年の課題である。そのような背景の下、本取り組みでは物流業界を担う作業者の肉体的な負担や作業時間の軽減、トラック内スペースの有効活用による積載率の向上に伴うCO2排出量の削減を狙いとしている。ダンカーゴなる物流・保管ボックスを導入することで積載効率と作業効率の向上を同時に実現している。また、作業者の負荷も大幅に軽減されているなど、環境面のみならず物流業界の持続可能な成長に寄与する成果が、その具体性と将来の拡張可能性といった点から評価された。
(受賞企業HPリンク先)
株式会社エーディエフ
https://adf-al.com/
株式会社合通ロジ
https://www.gotsu.co.jp/
【ロジスティクス大賞 特別賞】
会社名:ハコベル株式会社/株式会社TBM
テーマ:CO₂の間接排出量(Scope3)のリアルタイム可視化システムの実現
~業務負荷をかけずにCO₂排出量を可視化するための取り組み~
受賞事由:
ESG経営やSDGsなど、環境や社会、サステイナビリティに配慮した事業活動への要求はますます高まり、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減の実現に向けた個別具体的な対応が求められている。一方で、CO2排出量削減の実現に際しては、排出量そのものの把握、可視化すらままならない状態であることも少なくない。このような背景の下、本取り組みでは自社のみならずパートナー企業の間接排出量を含めたサプライチェーン全体でのCO2排出量削減を促進すべく、各社の配車管理システム上のデータを活用し、ダッシュボード形式で可視化を実現している。リアルタイムに状況が把握できるだけでなく、従来やりとりされるデータの活用により、追加業務なしに実現している点、さらには状況の可視化、共有化に伴い、さらなる排出量削減が促進されるなど、成果の波及、拡大可能性が評価された。
(藤原秀行)