円安でコスト増、「運輸・倉庫」などで8割超

円安でコスト増、「運輸・倉庫」などで8割超

帝国データ調査、卸売業や製造業も

帝国データバンク(TDB)は8月17日、円安に関する企業へのアンケート調査結果を公表した。

円安傾向で「コストの増加」の影響を受けている企業は全体の8割弱に到達。業界別では、卸売業、製造業、運輸・倉庫業などが際立っている。コスト以外の影響としては、国内の買い控えを挙げる向きが多く、幅広い領域にネガティブな影響が及んでいることが浮き彫りとなった。

TDBは「業界間で影響の濃淡が見られており、仕入れ先の値上げの影響を大きく受ける卸売や燃料費高騰が響く運輸・倉庫などでは特に悪影響となっていた。他方で、プラスの影響としては、大企業中心ではあるが為替差益の発生を挙げる向きもあった」と指摘している。

調査は8月上旬に実施、1763社が有効回答を寄せた。

現在の円安傾向が自社の企業活動にどのような影響を与えているかを尋ねたところ、仕入れ価格上昇、燃料費や光熱費上昇など「コストの増加」が77.7%に達した。業界別に見ると、「卸売」が85.1%で最も高く、「製造」(83.7%)、「運輸・倉庫」(83.2%)、「小売」(81.2%)も8割を超えた。

とりわけ、「卸売」の中でアパレル製品を取り扱う「繊維・繊維製品・服飾品卸売」は93.8%に達し、大多数の企業がコスト増の負担を実感していることが分かった。具体的には「急激な円安進行のため、販売先への価格転嫁が難しく仕入れ先とのコスト調整が可能かどうか交渉中」(男子服卸売)、「大手通販に衣料を卸しているが、価格転嫁が全く進まない」(婦人・子供服卸売)といった厳しい声が聞かれた。

具体的な声
・仕入ロットを増やすことで、原材料費の仕入単価の上がり幅を抑えるようにした(下着類卸売)
・輸入材についての国内調達の可否および海外複数購買の検討(家具・建具卸売)
・仕入価格の上昇分を価格転嫁したいが、既存取引先の維持を考えると100%の転嫁は難しく、その分、粗利益が圧迫されている(自動車部品付属品卸売)
・原材料の調達先の変更などを検討しているが、ドルベースでのコストも上昇しており厳しい状態。販売価格への転嫁も進めているが、転嫁後に原材料が再び上昇するなど営業活動も厳しい状態である(石油化学系製品製造)
・全社での聖域なき経費削減の実施(無線通信機器製造)
・お客様から価格の上昇について理解を得ることが難しい(機械同部品製造修理)
・燃料サーチャージの導入を荷主にお願いしている(一般貨物自動車運送)
・燃油代・電気代高騰には、不在時・不使用時のスイッチ・オフを徹底する。また、タイヤなど製品価格高騰には値上げ前の購入を心掛ける(一般貨物自動車運送)
・物流関係は受け身の対応となるため大変なことになっている。これだけ物価が上昇して経営困難になっているなか大手ほど非常識な値下げを言ってきている(一般貨物自動車運送)


(いずれもTDB提供)

「コスト増加」の影響以外では、消費者による「国内における買い控え」と「販売価格への転嫁が進んだ」がともに12.0%となった。一方、プラスの影響として、大企業を中心に「為替差益が発生」(5.7%)が見られた。

また、「円安により、今後国内での販売量が大幅に減少することから、今秋をもって会社を解散する」(建築材料卸)といったように、0.6%が「事業の整理、撤退」を選択していた。

TDBは「『販売価格への転嫁が進んだ』と回答する企業も一定数存在したが、企業からのコメントにもあるように取引先からの理解を得ることが難しい点や仕入れ価格の上昇分全てを販売価格へ転嫁できていない点など課題が多い」と分析。「顕在化する企業収益圧迫による影響は注視していく必要がある」と警戒感を示している。

(藤原秀行)

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