都心部で老朽化倉庫の再開発進み、ラストワンマイル支える最先端物流施設建設へ

都心部で老朽化倉庫の再開発進み、ラストワンマイル支える最先端物流施設建設へ

グローバル都市不動産研究所が調査結果公表

投資用不動産を扱うグローバル・リンク・マネジメントは8月23日、2019年に設立した「グローバル都市不動産研究所」(所長・市川宏雄明治大学名誉教授)による調査・研究の第17弾として、物流施設の市場規模、中でもとりわけ投資対象としての注目すべき賃貸型物流施設の機能・エリアの可能性に関する調査・研究結果を公表した。

この中で、今後の展望の部分のみを抽出して紹介する(過去の市場動向推移の部分は割愛)。

2022年第1四半期の最新データ(CBRE調査)によると、首都圏のLMT(大規模なマルチテナント型物流施設)の空室率は前期から2.1ポイント上昇して4.4%となった。新規需要は15万坪と安定しているものの、新規に26万坪の大量供給があったことが影響したとみられる。首都圏全体では23年にかけて大量供給が続くため、需給緩和の基調に変わりはないと見込まれている。

ただしエリア別に見ると、新規供給の増加が進む国道16号エリアや圏央道エリアでは23年にかけて空室率が上がるものの、引き続き高い需要が見込まれる外環道エリアでは低水準の空室率で維持するものと予測されている。

注目を集めている物流施設として、冷蔵・冷凍倉庫に言及。特に「食品・飲料等」のEC化率は20年でも3.31%とまだ低い水準のため、今後の成長余地は非常に大きいと期待されていると指摘している。

今後の食品類の配送需要の高まりの中で、配送品目は生鮮食品や冷凍食品のほか、時短ニーズに対応した半調理品、ミールキットなどの中食向け商品が伸びていくと考えられる。こうした品目を配送するため、冷蔵・冷凍設備を備えた倉庫需要が拡大するほか、食品加工や厨房設備を備えた施設立地の可能性も指摘されている。

また、生鮮品などの配送を前提とした場合、消費する居住地との近接性がますます重要になる。大消費地である東京都心エリアには食品類を配送するためのラストワンマイルの配送網の構築が必要となることが想定される。東京23区内や外環道の内側エリアは、配送の倉庫適地として価値が高まる可能性があるとみている。

一方、東京都心部には築40~50年の古い倉庫が多く(東京都内で見ても現時点で築40年超が3割弱、10年後には5割を超える見通し)、災害への安全性(耐震性など)、最新設備の欠如、環境性能といった問題を抱えるものも多数あることが懸念されている。

東京都心部の老朽化倉庫の再開発や、都心外周部のマルチテナント型物流施設のタイアップなどにより、今後、東京のラストワンマイルを支える最先端の物流施設が建設されていくことが予測される。

(藤原秀行)※いずれもグローバル・リンク・マネジメント提供

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