型式ラインアップ拡充とバッテリーのモジュール化で最適な航続距離選択可能、多様なニーズに対応
三菱ふそうトラック・バスは9月7日、横浜市内で、EV(電気自動車)小型トラック「eCanter(キャンター)」の次世代モデルをメディアに公開した。
型式のラインアップを拡充し、バッテリーは3タイプのモジュール式を採用。ユーザーがルート配送など用途に応じて最適な航続距離を選択できるようにしたほか、災害時に備えた外部給電機能を新設した。EVトラックを通じてユーザーのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を後押しする包括的なソリューションとともに展開する予定。日本向けは2023年春に発売する。
「eCanter」の次世代モデル(三菱ふそう提供)
5年間の市場フィードバックを反映
同社は2017年、日本初の量産型EVトラックとしてeCanterを市場投入。日本や欧米、オーストラリア、ニュージーランドで約450台を販売し、累計走行距離は世界全体で600万キロメートル以上に達している。
物流領域の脱炭素化が社会的に強く求められるようになったのを踏まえ、5年間で利用者から得られたフィードバックを反映させ、より使いやすい次世代モデルの開発にこぎ着けた。
モーターを後軸に統合したeアクスルを採用することでドライブトレインをコンパクト化し、シャーシのラインアップを日本国内向けでは28型式、海外向けには約80型式に拡充した。車両総重量も現行の7.5トンクラスに加え、国内では5〜8トン、海外では4〜8トンまで展開する。キャビン幅も標準の1700ミリメートルに加え、より多くの荷箱容積が確保できる2130ミリメートルを追加。軸距(前輪軸と後輪軸の最大距離)も2500〜4700ミリメートルまで展開する。
バッテリーは中国の車載電池大手CATL(寧徳時代新能源科技)製を利用。軸距に応じて1〜3個まで搭載できる仕様にした。定格容量41キロワット時のバッテリーの航続距離は、1個なら約80キロメートル、2個は約140キロメートル、3個は約200キロメートル。普通充電と急速充電の両方が可能で、専用機器を介することで最大10キロワットの外部への給電もできる。
回生ブレーキは現行モデルではオン・オフの切り替えのみとなっているが、4段階までコントロール可能にした。停車・発車頻度の高い市街地などでは、エネルギーを効率良く回収して航続距離を延長させやすくなると見込む。
安全面では三菱ふそうの小型トラックで初めてとなる巻き込み防止機能を搭載。運転時の死角になりやすい車両左側を監視し、被害軽減ブレーキ機能と併せて、左折巻き込み事故のリスクや衝突時の被害軽減を図る。
先進的なデザインのインテリア(三菱ふそう提供)
昼間点灯用のデイタイムランニングライト付きLEDヘッドライト(三菱ふそう提供)
LEDリヤコンビネーションランプ(三菱ふそう提供)
フロントガラスに搭載されたカメラが前方の交通状況や周囲の明るさを検知、ビームの高さを自動的に変える「インテリジェント・ヘッドライト・コントロール」(三菱ふそう提供)
包括的ソリューションでカーボンニュートラル支える
現行モデルの導入企業からのフィードバックでは、車両をEVにしたものの、どのようにしてカーボンニュートラルを達成していくのか具体的な運用面で迷っている声が多かったことから、CO2排出量の可視化、効率的なルート提案や電力状況の最適化といったコンサルティング、バッテリーのライフサイクル全体のサポート、リース契約メニューの充実化など、EV運用を支える「FUSO eモビリティソリューションズ」の提供に注力していく方針だ。
当初は日本で生産し輸出する。欧州市場向けは、欧州現地での生産開始も視野に入れている。
同社のカール・デッペンCEO(最高経営責任者)は発表会で「需要予測は開示していないが、既存の多くのお客様から興味を持たれているので、マーケットのプレゼンスは高く発揮できると見込んでいる。川崎市内のプラントで生産するので、さまざまな利用者のニーズに対応できる」と利用拡大に自信を見せた。
横浜市内のコンベンションホールでメディアに新モデルを公開した(左から)三菱ふそうのデッペンCEO、林春樹副社長国内販売・カスタマーサービス本部長、安藤寛信副社長開発本部長、アレクサンダー・ルーシングCTO(最高技術責任者)
多様な物流用途に対応できるよう型式を大幅に拡充
航続距離に応じてバッテリーを選択可能
充電スペースの柔軟性を高めるため、普通充電機のケーブルは最長10メートル、急速充電機のケーブルは最長8.5メートルまで設定できるようにした
(石原達也)