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【現地取材・動画】カラスよ倉庫からサヨウナラ、AIと音で追い払う新兵器登場

【現地取材・動画】カラスよ倉庫からサヨウナラ、AIと音で追い払う新兵器登場

JA全農が「音撃スナイパー」のテスト販売開始、1/10~1/20程度に減少効果も

JA全農は10月27日、AIと音を駆使してカラスを追い払う装置「音撃カラススナイパー」を開発したと発表した。同日、食品の製造・物流業者を主な対象にテスト販売を開始した。

画像認識技術を使ってカラスを検知し、カラスの嫌がる周波数を組み合わせた音で撃退する仕組み。食品工場などでの現場テストでは、カラス検知数が設置前に比べ1/10~1/20程度に減少したという。

画像認識と音でカラスを撃退する場合、“前線”となる装置には、“武器”となる「機械学習のためのデータ」と「効果的な周波数の音」を適切かつ切れ目なく供給する「ロジスティクス」を重視する必要がある。JA全農が同日、東京都内で開いた報道陣向け発表会で、この観点から取材した。


AIがカラスを検知する様子。緑の枠がカラスにフォーカスしている(JA全農提供)

対策は「慣れさせない」ことが肝心

農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和2年度)」によると、全国では鳥類によって農作物に年間約30億円の被害が生じており、その4割強に当たる約14億円がカラスによるものという。雑食のカラスはほとんどの食品残渣に集まってくるため、食品の工場や倉庫ではごみ置き場が荒らされるなどの問題も生じている。

カラス対策としては、ネットやテグスなどの障害物や忌避音が用いられてきたが、JA全農畜産生産部推進・商品開発課の嶋亮一課長は「人の作業の妨げになったり、わずかな隙間からカラスに侵入されたりすることがある。忌避音による対策装置の多くは、赤外線センサーやタイマーで制御されており、カラス以外の物体にもセンサーが反応することで、カラスが自身への脅威ではないと学習してしまったり、タイマー設定時間外には防げなかったりする弱点がある」と解説する。

そこで、AIによってカラスだけに反応し、忌避効果の高い音を発する対策装置を、あるAIを専門とするスタートアップ(社名は非公表)、害虫害獣対策を手掛ける防除研究所の両社と共同開発した。防除研究所の梅木厚生代表取締役は「AIを使ったカラス対策装置は、日本では他に見かけたことがない」と語る。

装置は、AIを内蔵したボックスに、カメラとスピーカーを接続。カメラの映像を基にAIがカラスを認識し、スピーカーを動作させる。1台のAIにカメラとスピーカーを最大5台まで接続することが可能で、目安として20m離れたカラスを認識できる。


「音撃カラススナイパー」。左からAIを内蔵したボックス、スピーカー、カメラ

嶋課長代理は「カラスだけに反応して忌避音を発するので、カラスに自身が狙われていると思わせやすい。カラスの飛来数を記録し、飛来動画を自動的に取得するので、設置後の効果をデータ検証しやすい」と特徴を挙げる。カラスの撃退でPDCAサイクルを回せる点が画期的だ。

2年ほど前に開発を始め、プロトタイプの開発に1年かけた。1年前から食品工場での現場テストを始めている。2021年末からは飼料倉庫、半年ほど前からは市役所の屋上にも設置してそれぞれ効果検証を続けてきた。

カラスの検知数は設置前に比べ、食品工場では1/22に、飼料倉庫では1/12に、市役所屋上では1/17にそれぞれ減少した。最も効果の高かった設置場所では、設置後2年間カラスの飛来が検知されなかったというから、抜群の追い払い効果だ。


装置の実演※大きな音がしますので、再生の際は音量にご注意ください

テスト販売では、自治体、食品の製造・物流業者などに照準を合わせており、30セットの販売を予定している。価格はカメラやスピーカーの台数により変動するが、設置作業費別で1セット150万円前後。設置は専門のノウハウが必要なため、防除研究所が行う。

食品工場などはゴミにカラスが集まりやすいので、1台の装置で対処しやすい。その一方、広い農場ではカラスがカメラの死角を学習しやすく、多数の設置が必要となるためコストが膨らむ。設置には電源も必要だ。農場への提供にはまだ越えるべきハードルがあるという。

報道陣向けの実演では、スクリーン上に投影したカラスの動画(動画投稿サイトにある一般の動画)をカメラに映し、AIに検知させた。

開発裏話:
“カラス撃退音”は40種類準備
〜ロジビズ・オンラインとのQ&A〜
Q:カラスの検知精度は?
A:JA全農の嶋課長代理によると、研究室レベルでは97%、現場テストでは60〜70%の精度でカラスを検知できる。積雪時に黒い服装の人間に反応することがあったりと、カラス以外の「黒色の物体」に反応する場合がある。カラスの見落とし防止を優先するため、検知基準を若干緩めに設定したためという。また、カラスを検知してすぐに反応していると、逆に脅威視されにくくなるので、最適な反応のタイミングなどもAIに学習させてある。

Q:カラスを画像認識させるためのデータを、開発現場およびAIに、どのように供給したか。
A:まずはJA全農スタッフが、自前の食品工場など5〜6カ所でカラスの動画を撮影し、AIスタートアップに供給した。スタートアップからは「なるべくたくさんの画像パターンが必要」とのオーダーがあったという。動画は合計3時間ほど撮影した。

AIスタートアップは動画を基に大量の静止画を切り出して、AIに学習させた。1.5カ月ほどで認識精度は70%ほどに達した。その後、プロトタイプを使った現場テストを繰り返すことで、1年後には研究室レベルでの認識精度が97%に向上した。継続的に機械学習させようとすると装置のランニングコストが掛かるので、ひとまず現時点での検知精度で様子を見る方針にしている。

Q:忌避音はどのように開発・供給しているか。
A:防除研究所の梅木代表取締役によると、忌避音は防除研究所が開発した。忌避音のパターンが少なく、時間経過と共にカラスが慣れてしまうことが、既存の市販品の課題だという。そこで防除研究所はカラスを追い払いやすく、かつ慣れさせにくい周波数を調べ、それらを組み合わせて忌避音のパターンを増やしていった。周波数の組み合わせが技術の要となる。

現在では40種類の音を開発済み。それらをランダムで発生させることで、カラスの音慣れ防止を図っている。今後も音の種類を拡充していく方針だ。

(石原達也)

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