不動産投資「景気下落への耐性備えたポートフォリオ構築を」

不動産投資「景気下落への耐性備えたポートフォリオ構築を」

ラサールが2019年の展望リポートで指摘、物流施設は引き続き推奨

 米不動産運用大手ラサール インベストメント マネージメント(LIM)は2月20日、2019年の主要30カ国における不動産投資市場の展望と推奨する投資対象を盛り込んだリポート「グローバル不動産投資戦略」を公表した。

 投資市場の先行きに関し、米中両国の経済摩擦などを踏まえ「遅くとも21年までには多くの不動産市場で(好調だった)サイクルの反転が起こる」と予測。19~21年の投資戦略として「ゴルディロックス(適温)経済と低金利環境が継続するという楽観的な見方が実現しなかった場合も考慮に入れる必要がある」と指摘した。

 その上で、投資家に対し「長期的な視点を持ち、市場サイクルにおける景気下落局面への耐性を備えながら、景気上昇局面において良好なパフォーマンスを発揮できるポートフォリオを構築する必要がある」と強調。よりリスクの低い優良な物件への投資に重点を置くようアドバイスした。

 投資を薦めるアセットとして欧米やアジアなどで引き続き先進的物流施設を挙げた。全般的に昨年より慎重な見方が目立つ内容となった。

低リスクと、リターン期待できる案件のバランスが重要

 リポートは19~21年の経済シナリオとして、

①世界の成長率が3~4%の間にとどまるが、米中の持続不可能な成長が沈静化に向かうにつれ、年を追って緩やかに減速する。景気後退に陥る主要経済国は皆無。成長自体は数年間にわたって継続する

②インフレ率や金利の上昇、債券価格の下落、株式市場のボラティリティー上昇が起こり、世界の成長率は2・5~3%に低下。少数の主要経済国で景気が失速

③貿易戦争や資本市場の混乱などが発生、世界の成長率は2・5%を切る水準に低下。ほとんどの国で景気後退リスクが高まり、システミックなリスクとして全ての国々が一定の影響を受ける

――の3パターンを列挙。19年中に①となる確率は50%を上回るが、3年間を通じて50%まで下がるとみている。

 こうした状況を踏まえ、推奨する投資戦略として、ポートフォリオをリスクがそれほど高くない「低ベータ型」と、よりリスクが高いがリターンも期待できる「アルファ追求型」をバランス良く組み合わせることを提案した。

 アジア太平洋地域では、韓国・ソウルの首都圏や中国の大都市およびその周辺都市での物流施設などを薦めた。

リーシング不調の物流施設購入も視野に

 LIMの日本法人、ラサール不動産投資顧問は同日、東京都内でリポートに関するメディア向け説明会を開いた。LIMのグローバル投資戦略・リサーチ責任者を務めるジャック・ゴードン氏は、基本的なスタンスとして、安定したキャピタルゲインが見込まれる「コア物件」への投資をアドバイス。「世界のどの地域でも物流施設への投資は推奨できる」と指摘した。

 特に米国の状況に関し「想像以上に経済が強い。物流施設は非常に魅力的な市場だ。稼働率はとても高く、運用利回りも好調なリターンを上げている。大変有望なアセットクラス」との見方を示した。欧州についても、物流施設の新規供給が限定的なため、今後も空室率は低下傾向が続くと予想した。同時に、マーケットの透明性が低い国への投資は回避することも求めるなど、慎重さを持って投資に臨むべきだとの意向をにじませた。

 LIMのアジア太平洋地域の投資戦略・リサーチ責任者、エリーシャ・セ氏はアジア太平洋地域について、経済成長は減速が見込まれるものの、各国で雇用状況が総じて良好な点などを踏まえ、オフィスビルや物流施設、商業施設などへの投資に前向きな姿勢を見せた。

 ラサール不動産投資顧問で日本・韓国の投資戦略・リサーチ責任者を担っている髙野靖央氏は、国内の物流施設投資について「最も安定的なインカムを生む、リスクの低いアセット」との見方を堅持。今後も続くとみられる新規の大量供給への対応が最も大きなテーマになると強調した。ラサール自身も積極的に物流施設へ投資していることに触れ、「エリアによっては(大量供給の影響で)リーシングができなくて他の買い手に物流施設が売られていくこともあると思う。当社はリーシングに自信があるので、そうした施設を購入して高いリターンを目指す投資も視野に入れていく」との方針を明らかにした。


ラサール不動産投資顧問が2018年に取得した兵庫県尼崎市の物流施設「ロジポート尼崎」(同社提供)

(藤原秀行)

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