製造費用の25%削減見込む、実際の設計に移行へ
日本郵船は11月28日、グループのMTI、フィンランドの船舶技術コンサルタントElomatic Oy(エロマティック・オーイー)と連携し、アンモニア燃料船へ効率的に改造・転換することが可能なLNG(液化天然ガス)燃料船の建造を目指すプロジェクトで、新たにケープサイズバルカーと大型原油タンカー(VLCC)のコンセプト設計のフェーズを完了したと発表した。
コンセプト設計は船を建造する際の土台となるもので、船の全長や船幅などの寸法、積荷量、航続距離、船速といった仕様を考慮し、最適な設計を行う。
3社は「アンモニアReady LNG燃料船」を将来のゼロエミッション(温室効果ガス排出実質ゼロ)船実現への「ネクストブリッジソリューション(橋渡し的技術)」と位置付けており、今後は造船所や船舶用機器メーカーと実際の設計を進める。
日本郵船はグループの外航海運事業における温室効果ガス排出量削減の長期目標を「2050年までのネット・ゼロエミッション達成」と定め、将来はアンモニアや水素など、より環境負荷の低い船舶用燃料を使用するゼロエミッション船の投入を目指している。まずは低炭素燃料のであるLNG燃料をゼロエミッション船が実現するまでのブリッジソリューションの一つと位置付け、LNG燃料船の船隊整備を進めている。
さらに日本郵船、MTI、エロマティックの3社は「ネクストブリッジソリューション」としてアンモニアReady LNG燃料船の建造を目指すプロジェクトを2021年9月に開始。従来は造船会社がコンセプト設計を行う形が一般的だったのに対し、将来のゼロエミッション船開発を目指し、3社が共同で設計している。今年3月にはプロジェクトのフェーズ1として、自動車専用船とポストパナマックスバルカーのコンセプト設計を完了している。
今回はフェーズ1.5としてケープサイズバルカーとVLCCのコンセプト設計に移行した。
アンモニアReady LNG燃料船の設計開発の課題として、主に以下の点が挙げられる。
1.アンモニアはLNGに比べて熱量当たりの燃料の体積が大きいため、同じ航続距離を走る船を建造するには、より容量の大きな燃料タンクや追加の燃料タンクが必要になる。
2.1により貨物の積載スペースが縮小し、積載できる重量が減少する。
3.タンクの大型化や追加タンクの設置により、船舶が転覆しないかを示す復元性や船体強度が影響を受ける。
4.アンモニアは毒性が高いため、アンモニア燃料タンクは国際条約や国内法に則った排気設計とする必要がある。またアンモニア燃料の補給の際には漏洩しない設計とする必要がある。
5.LNG燃料からアンモニア燃料への改造に追加の工期やコストが発生する。
今回のコンセプト設計では課題の解決案を模索し、燃料タンクの配置などの仕様を研究・検討。その結果、今回コンセプト設計を行ったアンモニアReady LNG燃料船では、従来のLNG燃料船と比べ、新造してからアンモニア燃料船に改造するまでの全体の費用をケープサイズバルカーでは12%、VLCCでは25%抑えることができると見込まれている。
今後3社はプロジェクトのフェーズ2として、コンセプト設計を基に造船所や船舶用機器メーカーと実際のアンモニアReady LNG燃料船の設計を進める。
アンモニアReady LNG燃料ケープサイズバルカーのイメージ画像
アンモニアReady LNG燃料VLCCのイメージ画像
アンモニアReady LNG燃料ケープサイズバルカーの紹介映像
アンモニアReady LNG燃料VLCCの紹介映像
(藤原秀行)※写真はプレスリリースより引用