【現地取材・動画】ドローン宅配で地元商店街の商品販売後押し、地域活性化図る

【現地取材・動画】ドローン宅配で地元商店街の商品販売後押し、地域活性化図る

セイノーHDやエアロネクストなどが千葉・勝浦で「新スマート物流」開始、EVバンも投入

セイノーホールディングス(HD)とエアロネクスト、同社子会社でドローン物流を手掛けるNEXT DELIVERY、KDDI傘下でドローン関連事業を展開しているKDDIスマートドローン、住友商事は1月18日、千葉県勝浦市で、ドローンなどの先進技術を組み合わせて地域の物流ネットワークを維持する新スマート物流「SkyHub(スカイハブ)」の提供を同日開始するのに併せて、ドローン物流のデモをメディアや地元関係者に公開した。

地元の商店街が扱っている料理などをドローンに搭載し、住民らの近くに設けた専用の着陸スポット「ドローンスタンド」まで無事届けた。

セイノーHDとエアロネクスト、NEXT DELIVERYの3社は既に山梨県小菅村や北海道上士幌町、福井県敦賀市でスカイハブを展開しており、勝浦市が4カ所目。地元関係者で構成する「勝浦市商店街活性化推進協議会」の事業として受託、勝浦市や地元商工会などと連携し、NEXT DELIVERYを中心に各社が運営する形となる。

勝浦市は専用のドローンとEV(電気自動車)バンを活用。同市の住民が商品を注文する際、その時の状況に応じていずれかを選択できるようにする。勝浦市のスカイハブはドローンとEVバンを生かし、住民が地元の商店街の商品をより購入しやすくすることを目指している。

ドローン物流が配送現場の人手不足や住民の利便性向上に加え、地域の活性化にも貢献できるかどうかが勝浦市のスカイハブの大きなポイントとなる。勝浦市で成果を挙げることができれば、人口減少や高齢化に悩む他の地方自治体へのスカイハブ拡大に弾みが付きそうだ。


荷物を搭載しドローンスタンドに着陸する物流専用ドローン

3.5kmを10分余りで飛行、運んだお寿司や日本酒に全く問題なし

勝浦市のスカイハブは、ドローンは注文を受けてから短時間で配達。EVは午前中に注文を受ければその日の午後に、設定している2つの時間帯のどちらかを選んでもらい届ける。住民はドローンスタンドまで受け取りに赴く必要があるものの短時間で届けてもらえるドローンと、自宅まで荷物が届くものの時間帯が決まっているEVバンを、自らの希望や状況に応じて自由に選択できる。

当初はEVバンの配達のみでスタートし、2月にも並行してドローンの配達を始める見通し。まず地元のコンビニエンスストアや飲食店、文具店など7店舗がスカイハブに参加し、約500品目を取り扱う。注文は専用のECサイトやLINEのほか、PCやスマートフォンに不慣れなお年寄りらのために紙の商品カタログを配布し、電話でも行えるようにしている。ECサイトは立ち上げの準備中で、近く運営を正式に始める見通し。

商品の集荷・配送はNEXT DELIVERYのスタッフを中心に運営する専用拠点「ドローンデポ勝浦市興津」が担う。JR上総興津駅前の観光案内所の建物内に間借りしており、ドローンデポのスタッフがまず対象の店舗を回って注文のあった商品を集荷、いったんドローンデポにまとめた上で配送先別に仕分けし、ドローンスタンドまで空輸したり、EVバンで各住宅に届けたりする。ドローンの配送がスタートした後は、ドローンデポの裏手がドローンの離発着場となる予定。


ドローンデポ。観光案内所の建物を間借りしている

ドローンスタンドはスタート時点で、市内の大沢地区1カ所に設置。今後は地元住民らの理解を得ながら順次増やしていく予定。配送料金はまず、1回当たり300円で始める。

ドローンはエアロネクストがACSLと共同で開発した物流専用機「AirTruck(エアトラック)」を使用。搭載した荷物は機体が傾いても常に水平をキープできる構造を採用し、積んだ料理が容器からこぼれたり、容器自体が壊れたりするのを防げるのがメリットだ。


配達に用いるEVバン


専用ECサイトのイメージと紙のカタログ


ドローンデポ前で物流専用ドローンとともに記念撮影に応じる(左から)住友商事・多々良一郎航空事業開発部長、セイノーHD・河合秀治執行役員、勝浦市商店街活性化推進協議会・小髙伸太会長(勝浦商工会会長)、勝浦市・照川由美子市長、エアロネクスト・伊東奈津子執行役員、KDDIスマートドローン・博野雅文社長

この日のデモは、ドローンデポでお寿司と地元の日本酒の「晩酌セット」を搭載し、大沢区内のドローンスタンドまで約3.5kmを10分余りで飛行、無事に着陸した。容器に入ったお寿司は横に倒れたり容器の中で一方に集まったりせず、積んだ時と同じ状態を保っており、瓶入りの日本酒にも全く問題はなかった。

晩酌セットを受け取った大沢区長の鈴木恒夫さん(78)は「高齢で運転免許を返上すると移動が難しくなり、買い物も大変になる。ドローンが家の近くまで届けてくれるようになれば非常にありがたい」と笑顔で語った。ドローンの着陸を見守った近隣のお年寄りらからは「素晴らしい取り組み。ぜひ利用したい」「音が思ったほどうるさくなかった」などと前向きな声が聞かれた。

各社は今後、ドローンをオンライン診療と組み合わせた医薬品の配送、高齢者の見守り、海水浴場のライフセービング、防災といった多様な用途でも使うことを検討する。


届いた「晩酌セット」。全く問題はなかった


撮影に応じる鈴木区長とエアロネクスト・伊東執行役員

(藤原秀行)

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