いすゞ、主力小型トラック「エルフ」で初のBEVを今夏発売へ

いすゞ、主力小型トラック「エルフ」で初のBEVを今夏発売へ

脱炭素の潮流に対応、サポートメニューも準備

いすゞ自動車は3月7日、主力の小型トラック「エルフ」シリーズ、中型トラック「フォワード」シリーズをともにフルモデルチェンジすると発表した。

このうち、エルフは同社として初めて、量産バッテリーEV(電気自動車、BEV)「ELF EV」を開発した。物流領域の脱炭素の潮流に対応する。発売は今年夏ごろの予定。

また、商用BEVの導入検討サポート、導入課題の解決、導入効果の定量化と拡大化提案によるカーボンニュートラルの実現に向けたトータルソリューションプログラム「EVision」の提供を同日開始することも発表した。導入を検討している物流事業者らに最適な運用をシミュレーションするほか、充電器の選定や施工業者の手配・設置、補助金申請などを支援。CO2排出量の削減効果をフィードバックし、効果をさらに高めるための改善策提案も担う。

包括的に顧客をサポートし、EV商用車の普及に貢献していきたい考え。

横浜市内で同日、新型モデルの発表会を開催した同社の片山正則社長は「(温室効果ガス排出を実質ゼロにする)カーボンニュートラルは社会の変化を加速できる大きなチャンス」と指摘。BEVトラックに関しては「最もコアになるお客様にどう満足していただけるソリューションを提供していけるかが重要。売り切りではなく(トラックを売った)そこから始まりというような気持ちでやっていきたい」と強調した。

同社は2024年度中に、特装架装向けシャシ(塵芥車・高所作業車)と荷室への移動が可能なウォークスルーバン「ELF EV Urban Transporter」を展開する予定。


新型エルフ。左がディーゼル車、右が「ELF EV」(いすゞ自動車提供)

BEVは標準キャブのGVW3.5t未満車からワイドキャブのGVW7.5t車まで幅広いラインナップをそろえている。車両の操作系やレイアウトをディーゼル車と可能な限り共通化し、普段ディーゼル車に慣れているドライバーが使っていた様々な架装にも対応を可能にしている。

コンパクトなバッテリーパック(20kWh/個)を開発し、車格や使われ方に応じて高電圧バッテリーを2パック(40kWh)から最大5パック(100kWh)まで増やせるモジュール方式を採用。多様なシーンで採用できるよう配慮している。

普通充電と急速充電の両方に対応しているほか、専用の機器を通して外部へ電力供給を行うことが可能。災害発生時に電力源として地域住民らへ提供するといった用途が想定される。

また、高電圧バッテリーの温度を常にモニターし、低温下では車両停車時でも自動で温度管理を行うため、寒冷地でも運行が可能。キャブ内空調による消費電力を抑え航続距離を延ばすため、ヒートポンプ式空調システムの採用に加え、シートヒーターを標準設定した。

意図しない不要な暖房使用の抑制に向け、ヒーターのON/OFFを行う専用スイッチを設置している。

トラック大手では日野自動車が2022年6月、小型EVトラック「日野デュトロZ EV」を発売。三菱ふそうバス・トラックも今春、「eキャンター」の新たなモデルを市場に投入する。いすゞも参入することで、開発・販売競争が激化しそうだ。

(藤原秀行)

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