経営層と管理者層、作業者層の安全意識ギャップをWebアンケートで浮き彫りに

経営層と管理者層、作業者層の安全意識ギャップをWebアンケートで浮き彫りに

東京海上日動が新サービス、各現場に合った改善策提案も

東京海上日動火災保険は、経営層と管理者層、作業者層の各層で安全意識に着目したアンケートを実施、企業の組織風土を分析するサービスを開発した。

同社は顧客企業で保険金支払いが発生した事故のデータを収集・分析し、実際に作業現場を調査することでそれぞれの企業の実態に合った最善な事故防止策を提案している。事故防止策の立案には作業環境を人間が動きやすいよう設計・調整する「人間工学」を活用、人間の身体特徴・行動特性を踏まえて周りの環境を改善する支援を手掛けている。

しかし、現場責任者らから「作業ルールの順守・作業環境の改善に取り組んでいるものの、作業ミスやヒヤリハット・事故が減らずに困っている」との声が出ており、同社は会社・上司と現場作業者の間に、安全に対する意識のギャップが潜んでいる可能性があると推察。Web を通じた安全意識アンケートの結果を生かし、より精緻な環境改善を実現することを目指すことにした。

これまでは専門家が長時間をかけて分析していたが、定型化・自動化することで、業界初の取り組みとして、アンケート実施から分析・報告書作成までを無償提供できるようになった。物流や製造業などの現場で活用してもらうことを想定している。


調査のイメージ

どの項目から改善すれば効果的か、具体的に提示も可能

新サービスは同社が長年行っていたアンケート分析手法を駆使し、個人・職場・会社全体という分類を設定。安全意識に特化した設問を考案することで、拠点・各層ごとの認識のギャップを浮き彫りにするのが狙いだ。

Web アンケート結果は管理者層・現場リーダー層・作業者層といったように、異なる立場の視点から安全に対する意識を多角的に確認した上で、同社の独自視点で報告書を作成。同一企業の拠点間で安全意識にどの程度差があるのか比較したり、同一内容のアンケートを定期的に実施して意識の変化を数値で見極めたりすることも可能。

従業員が気軽に回答できるよう、アンケートは無記名式とし、設問数を極力絞り込み、回答所要時間は約 5 分と短時間で終えられるようにしている。回答者の負担を軽減し、回答率向上を図っている。

データの因果関係を分析する手法の一つで、因果関係の強さをネットワーク図と確率の形で可視化する「ベイジアンネットワーク」の構造学習を採用。各項目に対する介入効果を推計し、顧客がどの項目から改善すれば取り組み全体に対してより効果的に改善できるかを具体的に示せるようにしている。

サービス品質向上のため、様々な選択肢の中から最適な組み合わせを導き出す「組み合わせ最適化問題」を高速に解く富士通の新技術「デジタルアニーラ」を利用して構造学習問題の求解精度を高めるという東京海上日動独自の手法を開発した。

東京海上日動は1980 年代以降、顧客の事故防止に関わる活動を展開。2018 年 4 月からは、企業の事故対応や保険金支払いの経験に基づき、企業向けにロスプリベンション(事前の事故防止)を行う専門家集団「LTS(ロスプリ&テクノロジー戦略チーム)」を立ち上げ、多岐にわたる業種の顧客に対応できる体制を確立した。

運送、製造、小売、外食、介護業から航空・船舶業界などにも進出している上、企業規模も大企業に限らず中小企業も含めて年間 400 件以上の現場を訪問。国内外でチーム創設以降、累計で 3000 件以上のサービス提供(調査・報告・データ分析・セミナーなど)を実施、提案してきた。

LTS チームは現在約 40 名で構成、東京・名古屋・大阪・福岡に配置し、出張も含めて全国で活動を展開している。新サービスの提供にも注力していく構えだ。


調査活動のイメージ(いずれも東京海上日動火災提供)

(藤原秀行)

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